ふぁんたずぃー
むんはく
~プロローグ~
国をひとつ潰すのは容易くないことで弱い者ほど群れをなせば面倒なことになるものだ。
たくさんの種族が集まるこの世界。
暗い海の中で棲んでいたモノは光を見たいと陸を。
森の中で生きるモノは自分たちを守るための砦を。
狩り合うのをやめたモノたちは互いの手を取り合い。
創造した物が動くようになったモノはその力を使わせまいと。
血を求めるモノと影から生まれたモノは闇へと身を隠した。
なんの能力のない民ですら音楽と財と科学により国を作った。
そうして我々、空の国に住むものたちは崇められなくなった。
くだらない世の中だ。
国の者達には何度も何度も我々の強さを唱えた。
我々には翼があると。
地上にいる下等な生物とは格が違うと。
神に選ばれた唯一の種族だと。
地上はとても醜く汚いと何度も何度も唱えた。
そんな我々に向かって種の中でも優れた1人がこう言った。
吐き気がするね……と。
そうして逃げられた。
国の端から地上へと堕ちた。
優れた力を地上の奴らに渡せない。
大切に育てた駒を取られるわけにはいかない。
珍しい種族をすぐに捕まえる奴らよりも先に見つけねば。
「主、お呼びでしょうか……」
なにやら察したらしく白いスーツに身を包み大きな翼を持った小さき者がそばに寄りこちらに頭を下げる。
「あぁ、アイツが地上に堕ちてからどれくらい経つ」
「3日と5時間15分程です」
「監視はしているのか」
「こちらが見えているかのように出てきたり消えたりと……」
「流石だな」
関心と苛立ち。
雲の動きによって地上のどの位置が空の国からみえるのかなど逃げた後のことも考えていたのだろう。
彼女を自由にさせすぎては真似をする者達もきっと現れる。
「100日後」
「どうなさいますか」
「ぴったり100日後に行動を起こす」
紙にペンを走らせる音を聞きながら地上に目を向ける。
彼女が落ちたであろうとされる地点には大木が見える。
目を凝らしてみると葉の隙間から桃色の何かが風に揺れている。
横には翼を持って生まれただけの我々には到底及ばない鳥という種族がいる。
「住民にはいつ知らせますか?」
「始まりの時、知らせることにしよう」
空の国に来れぬ役に立たない翼を持って生まれただけの者たち全てを我が手中に。
彼女の類まれなる飛行能力を我がものに。
地上への宣戦布告。
それが100日後に行われようとしていた。
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