伝説の殺し屋
時は遡って、とある ヤクザの事務所。
ヤクザの組長さんは、怒りの形相で椅子に座っていた。
正面に座っていたのは、組長さんの愛人。
役者さんの事務所に来た、チャラい女の人だ。
そう、彼女は ヤクザの組長の愛人だったのだ。
組長さんは愛人さんに質問する。
「浮気したのは 誰とだ?」
愛人さんはとぼける。
「知らない男」
「そんなことで ごまかせると思っているのか。浮気相手の見当はついている。対抗組織のギャングのボスだな」
「違うわよ」
「とぼけても わしの目はごまかせん。必ず あの男を殺してやる」
「あっそ。がんばってね」
愛人さんは興味なさそうに、タバコを吹かしている。
組長さんは静かに怒りながら、
「もういい。行け。おまえの処遇は あいつを殺してから決める」
「あっそ。じゃあね」
愛人さんは外に行った。
そして脇に控えていた下っ端ヤクザに命令する。
「この連絡先に電話しろ。伝説の殺し屋 キラーゲージを雇うことにする」
その名前に事務所がざわついた。
伝説の殺し屋 キラーゲージ。
正体不明の殺し屋で、依頼された仕事を全て完遂するという 。
下っ端ヤクザは青ざめながら、
「わ、わかりました。足が付かないよう、公衆電話でかけてきますね」
「今日は頭が回るな。そうしろ」
「はい、ではー」
下っ端ヤクザは事務所を後にした。
そして街に出た下っ端ヤクザさんは、愛人さんと合流して話をした。
愛人さんは興味なさそうに聞く。
「で、どうすんの?」
「……どうしよう?」
下っ端ヤクザさんは殺し屋に連絡する気など無かった。
なぜなら、依頼すれば 殺されるのは自分だから。
「あんた ホント なっさけないわねー。そんなんだから いつまでたっても下っ端なのよ」
「じゃあ なんで そんな男と浮気したの?」
「遊びで」
「ハッキリ言わないでよー、もー」
頭を抱えてうずくまる下っ端ヤクザさん。
まあ、ようするに、愛人さんと浮気していたのは、下っ端さんだったのだ。
当然、殺し屋に依頼すれば、自分が狙われることになる。
しかし、連絡しなかったら それはそれで不審がられる。
しかも、組長さんは対抗組織のギャングのボスを疑っている。
一度、街のギャングやヤクザやマフィアの、ボスや組長の会合のさい、そのボスは愛人に色目を使った。
それで 疑っているのだが、このままでは全面抗争と言うことになる。
そうなると鉄砲玉になるのは自分。
連絡しても、連絡しなくても、なにかしても、なにもしなくても、めちゃくちゃヤバい。
下っ端ヤクザさんは完全に行き詰まっていた。
悩みながら街を歩いていると、映画の撮影をしているのが見えた。
愛人さんは好奇心で
「なんの映画だろー? ちょっと聞いてくる」
と行ってしまうのだが、下っ端ヤクザさんは閃いた。
「そうだ。役者を雇って、伝説の殺し屋を演じさせて 時間稼ぎしよう」
わたしは編集者さんに、
「で、この下っ端ヤクザさんが、役者さんに依頼してきた人だったってわけ」
「いや それ、バレたら一巻の終わりじゃないですか」
「わたしもそう思う」
「よくバレなかったですね」
「バレたわよ」
「え? それで どうやって助かったんですか?」
「順を追って話すから落ち着いて」
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