未設定のゼムクリップ

アトリビュート

ゼムクリップ


どうしたものか。

どうやら俺はゼムクリップになったようだ。

これは困った、仕事が残っているのだが。

まあ、この際、上司に説明すればこの状態を理解してくれるだろう。


さて、俺はどうやら数枚のプリントを束ねているようだ。

何かを束ねてリーダーシップをとるのは楽しい。小さい頃からだ。

学級委員になってた中学生時代を思い出す。

威張り散らしておけばいいのだから、楽しい仕事と言える。

今はどうだ。

上司に説教されてばかりだ。

つまらない書面を何回も見せられ、金を貰っても達成感など微塵もない。

そんな仕事だ。

これではビルから飛び降りて見ようという気になりそうだ。


「おい、おまえ、新入りか」


誰かが話しかけてきた。

どうやら仲間達が俺には居るようだ。


「おうい、どこにいるんだい」


「ここだ、おまえの後ろのプリントだ」


振り返ってみると、クリップが一個止まっていた。


「やあ、そこにいたのか、気づかなかった」


「おまえも、この生活に飽きたんだろ」


「そうだよ、もうまっぴらさあんな生活」

「上司もいかれているのさ、ずっと説教ばかり。かと思いきや仕事もろくにしていないのに」


「だよな、そりゃビルから飛び降りようと思うよな」


「ああ、この生活がずっと続いていくのかい」


「まあ、そうだろうな」


彼らの天国には、パトカーのサイレンが遠くから鳴り響く音と、社員の喧しい野次馬声だけが残った。







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