エルフに恋をするのはおかしいだろうか?

光矢野 大神

第1話 高校生活なんて糞だらけ

「エルフそれは、ゲルマン神話に起源を持つ、北ヨーロッパの民間伝承に登場する種族である。日本語では妖精あるいは小妖精と訳されることも多い。北欧神話における彼らは本来、自然と豊かさを司る小神族であった。エルフの見た目は、とても美しく若々しい見た目をしていて、見たものを虜にしてしまう事も珍しくない。また彼らは不死あるいは長命であり、魔法の力を持っていると言われている。以上がエルフの良さと特徴だ。良さが分かったろ!?」

自信げな顔で、俺は目の前にいる菊池に真剣な眼差しをしながら喋った。

「いや、さぁ、エルフが何なのかてことは、よく分かった。だけど・・・・・・」

「だけど?何?」

菊池は少し苦笑いをしながら喋った。

「エルフて実際には、居ないからそんなに興奮しないなー。あと、エルフて少し怖くない?」

「怖い?どこが怖いんだよ?」

「いや、だってさぁ、お前のエルフの説明でエルフは、不死で魔法のが使えるて事になるじゃん」

「それがどうしたんだ?」

「だからな、それがもし本当だったらエルフは、俺らをいつでも傷付ける力を持っていて、場合によっては殺す事だって出来るんだろ。そう考えたら怖いんだよ」

菊池は、机越しの俺にもうこの話は、やめにしようと言っているような目を向けて喋った。

「でもエルフが・・・・・・」

俺が続きをしゃべろうとした時、もうこの話をするなと言っているようにチャイムがなり始めた。

「次の授業て移動教室だったよな?急がないとやべえぞ!」

そう言って菊池は急いで次の時間の準備をし始めた。もうこの話には、興味が無いみたいだ。俺は、教科書をいつもは揃えて持っていくのに今回は、不揃いのまま持っていった。

「エルフが怖いか・・・・・・・・・」

「ん、なんか言ったか?」

「何でも無いよ」

次の時間の授業中俺は、ずっと窓を眺めていた。空を見たり、体育を頑張ってしている生徒を見たりと以外にも飽きなかった。

ただ胸の中に肌触りの悪い何かが生まれていてどことなく気分が落ち込んでいた。



次の授業中――



「どうしたんだよ眞(まこと)?浮かない顔なんかして?」

はっと!気がつき目の前には、菊池がいた。どうやらボーとしてるうちにいつの間にか授業が終わっていたようだ。俺は手を上に伸ばして思いっきり体を伸ばした。

「うーーん、いやさぁ、実は昨日少し徹夜しちゃっててさぁ、眠たかったんだよね。4時間睡眠は短かったかな」

少し嘘をついてしまったけど、これぐらいの嘘だと罪悪感は無いに等しいな。

「ふーん、そうなのか今日は早く寝ろよ」

「あぁー、そうするよ」

菊池は、良い奴だ。紛れもなく良い奴だ。こんな変わり者の俺を、普通に友達として見てくれる。それに、心配だってしてくれる。俺は、こんな友達に高校時代に出会えていて幸せ者なんだろうな。俺は、そう思いながら廊下を歩いて行く菊池の後ろ頭を見ていた。

「それよりもさぁ!!!お前知ってるか?!」

「うわ!突然大きい声出すなよ!うるさいなぁ・・・」

「ははは、ごめんごめん」

「で、なんだよ菊池?」

「今度この学校にな、転校生が来るかもしれないていう噂があるんだよなー」

菊池は、嬉しそうな顔で言ってきた。無意識に歩くリズムを刻んでいる。

「嬉しそうだなー」

「もちろんだよ!」

「なんでそんなに、嬉しいんだ?」

「だってさぁ、これでまた退屈が無くなるだろ」

「意味がわからん」

「ははは、俺は、エルフが好きなお前がわからんな」

「うるさいな、もうそこは、触れんなよっ」

「ははは、了解です」

「でもさぁ、眞も全く楽しみじゃ無いて言ったら嘘だろ。この人生の中でわずか3年間しかない、この高校生活で転校生が来る可能性を考えただけでワクワクするね」

「まぁ、そう言われたら面白そうだとは思うな」

「だろ」

菊池は、嬉しそうな顔をして話を続けた。

「それにな分かるだろ?」

「分かるて何がだよ」

「もうー、これだから眞(まこと)君は駄目なんだよなー」

「何がだっ!」

「いいかい、転校生と言うのはね、美人て相場が決まってるんだよ!」

「そうなのか?俺には分からん」

「決まってるものなんだよ。古今東西のマンガやアニメ、ドラマを見てみろ。ブサイクなパターンなんてないんだよ」

それは、世の中の転校を経験したブサイクに失礼ではないのかと心で思いながら階段を上り出した。

「そんなもんかな?」

そう言ってようやく教室に着いた。

「ははは、あくまでも噂だからね。ほんとに来てくれたら万々歳だよね」

菊池は、そお言うと、自分の席に戻り部活のユニフォームに着替え出した。もう、放課後に入るらしいな。菊池は、野球部に所属していて着替えるのに時間がかかっている。その間に、荷物をまとめておこう。

「菊池早く座れ!!!」

担任の金本先生が菊池に向かっていつもより大きな声で言った。本来、部活動の服装は、部室で着替えると決まっているけど金本先生は、そのへんは緩くいつも許してくれる。しかし、それで皆に迷惑がかかる場合は別だ。

「全くお前は、着替えるんだったらもっと早く帰ってきて着替えておけばいいだろ!!!」

「はーい、すいません」

ようやく着替え終わったらしく、菊池は席に着席した。

それからはいつものように連絡事項が伝えられて学校が終わった。

「じゃあな眞!また明日!」

そう言って、菊池は部活動に行った。今年の夏こそ甲子園に行くと意気込んでるらしいが、まぁ、応援してやろうと思っている。

菊池は、野球がそうとう上手いらしい。中学の時から周りから一目置かれていたらしく、この高校もスポーツ推薦で入学している。ポジションは、二塁手で守備範囲が、とにかく広く、いつもアクロバットな動きでボールを取って相手のバッターから疎(うと)まれてる。だけど味方からしたら、菊池がいるだけで、安心感があるらしく、チームにとってかけがえのない存在なんだろうな。

別に羨ましくなんかないけど、なんで自分には菊池みたいな一芸がないのかとふと考えてしまった。

そんな自分が嫌いだから、極力考えないようにしている。だけど心がモヤモヤしている時は、どうしても考えてしまう。

心の中で「もっと自分に力や影響力があれば・・・・・・」と黒い自分が言っているようで、とても気分が悪くなってしまう。

これは、きっと寝てないからだ。そうに違いない。

俺は、無理矢理自分にそう理由を付けて、今日はもう部活に出ずに、帰る事にした。どうせ、顧問は、スランプ中の俺になんか興味なんかないだろうし。このモヤモヤも寝たら治ると、そう考えていた。

「ああ、また明日。野球頑張れよ」

「おうよ!」

俺は、菊池と別れ下駄箱に向かった。途中で部長の中林さんにあった。

「眞、今日部活来ないの?」

「すいません。今日は、ちょっと頭痛がするので休みます」

俺は、また嘘を付いた。さっきと違って付いたら気分が悪くなった。

「そうか、ゆっくり休みなよ。顧問には言ったのか?」

「いえ、まだ言ってません」

「じゃあ、俺が言っといてやるよ」

「ああ、ありがとうございます」

「じゃあな。明日は来いよ!」

部長は、そう言って練習場所に駆け足で向かった。

今日は、確か外周だったな。水泳部なのになんで走らないと行けないのかよく分からないが、顧問命令には、勝てない。皆黙って走るのだろうな・・・・・・笑顔なんて浮かべずに。



何も無い道を自転車で帰っていく。

寄り道などせずに真っ直ぐ家に帰る。

大人達から見たら非行に走らずに普通の男子高校生に見えるのだろうけど、同級生達から見たら、何もする事の無いつまらない奴なんだろうな。

ネガティブな思考が止まらないな。早く帰ってベットにダイブしよう。

俺は、自転車のギアを2から4にして立ち漕ぎで急いで帰った。こんな所を見られてると思うとダメになりそうだ。

そう思いながら、田んぼだらけの道を走っていく、どんどんスピードが出て気持ちいい風が顔に当たる。ワイシャツの余分な部分がたなびいているのが分かる。

ずっとこうしていられたら、さぞかし幸せなのだろうな。

そうこうしているうちに、家に着いた。


「ただいまー」

返事が無い。どうやら誰も居ないようだ。リビングのテーブルには、丁寧に置き手紙がおかれており、「眞へ、お父さんを空港まで送ってくるから、晩ご飯は一人で食べてください。母より」と書かれてあった。

俺は、その手紙には、触れずにすぐに2階にある自分の部屋に入った。

制服は、脱がずにすぐにベットに死んだように倒れ込んだ。

「なんかもう嫌だな・・・」

そう小さく呟いた。特に理由は無い。だけど口癖のように、いつも言っているように、口から出てくる。

俺は、虚(うつ)ろになる目をベットの横にある本棚に向けた。

ほとんどが漫画かライトノベルで占めている本棚で俺は、ほとんど力の入らない、いや力を入れようとしていない手を伸ばして1冊の本を取ろうとした。そして俺は、適当に選んだ本を見てみた。

『明日から実践して使えるマル秘習慣!!』何だこれ?多分本屋で見た時は、何も考えずに感動して、明日から本気出して頑張ろうと思っていたんだろうけど、今となれば、そんな自分が本当に気だるくてしょうがない。

だいたいこんな本を書く奴についてなんだが、こんな自己啓発本を書く奴は、他人を指摘出来るほど完璧な生活をしてるのか?!と問い詰めたくなる。

多分してないだろうな。そんなに完璧な人間が何人も居てもらっては困る。

俺は本をおもて表紙を裏向きにして本を置いた。

そしてとうとう、睡眠欲が限界に達したらしく。俺を寝させようとしてくる。

もう寝よう。

今頃、菊池は部活動でクタクタになっていい汗をかいているのだろうな。菊池だけじゃなくて中林さん達も部活に頑張って取り組んでいるんだろうな。

俺は重たいまぶたをゆっくりと閉じ、毛布を被り込んだ。

案の定すぐに眠れた。けど、いい夢は、見れないだろうけどな・・・・・・。




やっと起きた。目がしばしばする中で、スマホのホームボタンを押して時間を見てみる。

「八時十五分』

まだそんなものか、五時から寝て約三時間の睡眠をしたら今日の寝不足は、解決されたらしく、頭がスッキリしてる。

「ふぁぁーあーーーー」

俺は、誰も居ないことを、いいことに普段なら誰にも見せられないような、大きなあくびをした。

「風呂に入るか」

部屋を出て、階段を降りたらそのまま風呂に直行して、お湯炊きをした。

今日の晩飯は、なんなのか気になり冷蔵庫を開けて見てみると、綺麗にラップがしてあるお皿があった。どうやら、オム焼きそばを作ってくれていたらしく、これをチンしたら美味しく食べれるようにしてあった。

食事の時ぐらいは、明るく食べたい。俺は、そう思い少しでも賑やかに食べたいとサラダを作ろうと思った。

それが失敗だった。

大根おろしが乗ったサラダが好きで今回もそれを作ろうと思ってた。そして大根をおろし金でおろしている最中にやりすぎてしまい、人差し指を少し『ガリッ』としてしまった。

痛い。

地味に痛い。

耐えられ無いわけではないけど、痛いのは無くならない。

俺は、早く作ってしまおうとキャベツをちぎり、そこに大根おろしをかけて急いで完成させた。

そして、レンジでチンと温めたオム焼きそばをテーブルに出し、今夜の食事が並んだ。

母特製オム焼きそばに、俺特製チョー簡単大根おろしサラダだ。

味は美味い。自分の母親なだけあって自分の好みをよく知っている。大根おろしサラダも捨てたものではない。これは、ポン酢でさっぱりといただける美味しいサラダなのだ。

指は未だに痛むが・・・・・・

食べ終えたら、風呂に入ろうと俺は、食器を片付けた。

脱衣所で服を脱いでふと、鏡を見てみた。

「最近太ったかな・・・」

まぁ、仕方ないだろうな・・・部活動には、参加してもいつも途中で手を抜いていて、自分の限界まで追い込んで練習に励んでいた1年生の頃に比べたら体は、丸みを帯びてしまっている。

水泳部は、元々キツい練習をしていて、泳ぐ行為じたいも相当なカロリーを使い。多く食べなきゃ体が作れないと言われていて、それでドカ食いを良くしていた。

よく菊池と一緒にコンビニで買い食いもした。コンビニで唐揚げを五個ぐらいぺろりと食べた後に、家に帰ってどんぶり3杯の飯を食べたなんて事は珍しくなかった。

1回、回転寿司で菊池とどっちが多く食べれるかと勝負をしたことがある。結果、俺が四十皿、菊池が三十五皿で俺の勝ちだった。

後でお支払いで二人で後悔したことは言うまでもないが・・・・・・

部活で死にそうになるまで動いて、胃袋が破裂しそうになるまで食べて、死んだようにぐっすり眠る。それのくり返しだった。

そんな時は、今とは違いモヤモヤなんて生まれなかった。きっと目の前の事を最優先に考えて行動していて、そんな事を考えてなどいなかったんだろうな。

簡単に言うと馬鹿だったんだろうな。

菊池は今もそうだけど、それが無性に羨ましいと思ってしまう時がある。

菊池は未だに死にそうになるまで体を動かして、破裂するぐらいまで胃袋に食べ物を突っ込んで、死んだように寝るような生活をしているのだろうか?あいつの事だから、多分しているだろうな。

明日はちゃんと部活に行こう。

そう思いながら風呂に入っていて、少し楽になった気がする。

今日は、もう寝よう。

夜の十一時、最近の寝る時間より二時間早く寝た。

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