第3話
学校が終わるなり、僕はこの市の地図を持って、少年探偵団の拠点へと向かった。
学校からは遠いけど、それは仕方がない事だった。
そして、秘密基地へと行き、ドアを開ける。
ここの臭いは好きじゃないし、虫が発生しているのもなんだか嫌だ。
廃屋になってから年月が経ちすぎたせいで、もうその辺りはどうしようもない事になっているのかもしれない。
僕は中へと入り、土間のところで立ち止まり、名無しくんがいるかどうか確かめるように家の奥を見た。
名無しくんは僕の事をずっと待っていたとばかりにタンスの上に座っている。
やはりそこが名無しくんの特等席なんだろう。
「事件だよ! 名無しくん!」
少年探偵団の出番が来たとばかりにそう叫ぶも、名無しくんはなんら反応しなかった。
もしかしたら、僕が来る前にこの行方不明事件の真相を解いてしまっているから、僕に乗ってこないのかもしれない。
「君には真相が分かっているというの?」
僕がそう問いただしても、名無しくんは沈黙を貫いていた。
それが答えだと言いたげに。
「ならば、僕が解くしかないって事か」
僕は土間にこの市の地図を広げる。
そして、僕の住む△○町と、三好あきらくんがいた■■町とを円で囲んだ。
円はあまり大きくはなくて、二つの町をしらみつぶしに探す事もできそうだ。
だが、そんな事をやっていては、警察などが先に見つけてしまうかもしれない。
「二つの町の距離はそれほどない。場合によっては、この町に迷い込んでいる可能性とかあるかな?」
答え合わせをするように名無しくんを見やると、首を縦に振ったような見えた。
「これが正解と。じゃあ、次はどこに行ったかの答え合わせか」
さすがにこれは僕にも分からない。
腕を組んで、うんうん唸ってみても、答えは出なかった。
「ヒントとかないの? ヒントとかは」
名無しくんを見つめてみても、答えは返ってこなかった。
どうやら自分で探さないといけないらしい。
「分からないよ、こんなの!」
じっくりと考えてみたり、ちょっとした妄想をしてみたりしたけど、答えがどうしても出てこない。
「小さい子は先にしか進めない」
僕は顔を上げて、名無しくんを見やった。
「小さい子は進む事しかできないの?」
名無しくんは返答をくれはしなかった。
「つまりはいなくなった場所から先にしか進んでいないって事か」
タンス椅子探偵と化している名無しくん、君はなんて聡明なんだ。
「その通りだ」
僕は食い入るように地図を見つめる。
「よし!」
広げていた地図を畳むなり、僕はぎゅっと握った。
地図とにらめっこしていても、子供を見つけることは決してできない。
たどり着いていそうな場所をしらみつぶしに当たってみるのが一番なのかもしれない。
「じゃ、探しに行ってくる。捜査は足が基本だよね!」
僕は秘密基地を出て、駆け足で山を下りて家を目指した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます