第11話

 恭子は文太郎に言われた通り、切戸を締めに向かった。恭子は道場の扉を開けるとゾンビがウロついていないか辺りを見回した。


「大丈夫ね」


 ゾンビがいないことを確認した恭子は足早に切戸に向かっていく。

 

 切戸に着くと恭子は扉を閉め鍵を掛けようとした。だがその時、切戸の扉が開いた。恭子は悲鳴をあげた。

 ゾンビが入ってきたと思ったからだ。

 しかし、入ってきたのはゾンビではなく全身黒ずくめの迷彩服を着た男だった。


 黒ずくめの迷彩服を着た男は二人いた。二人とも迷彩服の上からでもわかるほど体はガッチリして筋肉質だったが身長はお互いかなり差があった。

 一人は190センチはあろうというほどの大男で、もう一人は恭子と同じぐらいの身長だった。そのうちの小さい方の男が恭子に銃を向けた。

 恭子は最初、この男たちは自衛隊で自分達を助けに来たのだと思った。だが、銃を向けられてすぐに違うとわかった。

 男は恭子に片言の日本語で質問した。


「"だてぶんたろう"どこだ?」


 恭子は何も言わず立ちすくんでいる。男は再度、恭子に質問をした。


「お前、"だてぶんたろう" どこいるか知っているか?」


 恭子はなぜこの男は文太郎を知っているのか疑問に思った。恭子はこの男に文太郎の居場所を教えてはいけないと直感で感じた。

 

「し、知らないわ」


 恭子は首を横に振る。すると男は、恭子に銃を突き付け睨みつけながら片言の日本語で脅しをかけた。


「嘘つくな。もう一度質問する。次、嘘をついたらお前の眉間、風穴開く、"だてぶんたろう" どこにいる?」


 恭子の額から汗が滲み出る。嘘を言えば殺される、だが、それでも恭子は文太郎の居場所を言わなかった。


「ほう、女のくせにいい度胸だ」


 男はニヤッと笑うと突然、銃を下ろした。どうやら、恭子を殺す気はないらしい。男は恭子に質問した。


「お前、須藤の女だったやつか?」


 恭子は驚きの表情を見せた。恭子の驚いた顔を見て男は確信したようだ。


「お前と"だて"、須藤をおびき出す餌。だから、殺しはしない、だが、抵抗すれば痛い目合う」


 恭子は不思議に思い、男に質問をした。

「どうして……圭一をおびき出すって」


 男はその質問には答えずもう一人の長身の男に目配せした。すると、長身の男はアサルトライフル を構えながら歩き始めた。そして、男は今度、恭子に命令した。

「前を向いて歩け」


 恭子はしかたなく男のいう通りにした。恭子と二人組の男が文太郎の家の玄関につき、恭子に玄関を開けるよう命令する、恭子は言われた通り玄関を開けようとした。

 その時、道場の方でドンという何かを叩きつける音がした。

 二人組の男が顔を見合わせると、恭子に銃を突き付けていた男が長身の男に命令した。

 

「おい! あそこだ。行け!」

 

 命令された長身の男は道場へと銃を構えながら進んでいく。

 

「あそこに"だて"いるな……お前も行くんだ」


 男は恭子にも道場の方へ行くよう命令した。道場の扉の前に着くと恭子と二人の男は扉を開けて中に入った。

 すると、道場の中で驚く事が起きていた。文太郎が家政婦の今井静枝に首を締められていたのだ。静枝は化け物になっていた。

 文太郎は静枝に首を締められたまま無抵抗の状態で意識を失いそうだった。

 恭子は驚き、文太郎を助けに行こうとした。がその瞬間、長身の男が静枝に銃を向け発砲した。

 銃弾は静枝のこめかみに当ると静枝はその場に倒れた。

 恭子は急いで文太郎に駆け寄る。


「文太郎くん! 大丈夫!」


 文太郎の意識は朦朧としていた。恭子はどうしたらいいかわからずに戸惑っていると背の高い男が恭子を文太郎から引き離した。

 そして、それとは別のもう一人の男が文太郎に銃を突きつけ質問をした。


「お前 "だてぶんたろう"か?」


 文太郎は何も答えず気を失ってしまった。

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