笑わないアリスと銀眼鏡の魔法使い

ことは りこ

めがね係



 お仕えしている旦那さまが、最近眼鏡をかけはじめた。



 視力が悪いという話は聞いていない。



 旦那さまの瞳がレンズ越しになってしまうと、その美しい黄緑色の瞳が、なんだか霞んでしまうような気がして少し残念だけれど。


 銀縁の細い眼鏡もよくお似合いだ。



 私はお屋敷の使用人メイドなので、旦那さまが急に眼鏡をかけようと、どんな眼鏡をかけようと。似合っていようが似合っていなくても。


 詮索はできないし関係はないのだけれど。



 (───けれど!)



 旦那さまが眼鏡をかけはじめた途端、なぜか自分に奇妙な仕事が増えた。



 それは旦那さまの一日の始まりに眼鏡を掛けてあげて、一日の終わりにその眼鏡を外してあげる。───『朝晩のメガネ係』という仕事だった。



 (めがね係………なにそれ)



 旦那さまはなぜ私にそんな仕事を命じたのか、さっぱりわからない。



 そんな今日この頃───。




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