第25話 Re:高坂クン

 6月某日

 珍しくワタクシ橋本小春は、1人で駅前を歩いてました。


「あぢー……梅雨が明けたらもう真夏とはこれいかに……」

 日射病防止のキャップにキャミにホットパンツにサンダル

 ワタクシ7月以降はこれ以上脱ぐものねーぞ!

 早く秋来いよ!


「溶ける……」

 やっと駅ナカに避難できました。

 ショッピングモール涼しい!


「ふいー……生き返るぅ……」

 ようやく生気を吹き返した私は……

 そのまま死ぬかなって……

「おー、橋本姉じゃん」

 目の前に現れたのは、2年C組の高坂こうさか孝俊たかとしクン


 忘れてる人がほとんどなので説明したくないけど説明します。

 ワタクシ、ちょっと前に(6話で)高坂クンにラブなレターで告られました。

 そしてフッちゃいました。

 以上説明終わり。

 ……………………

 気まずいわ!


「妹と一緒じゃないの?」

「あー、今日小雪は別の用事」

「ふーん?」

 気まずいなあ……

「橋本ヒマ?」

「ヒマっちゃヒマ」

「ドーナツでも食わね?おごるし」


 座右の銘「タダより安いものはない」なワタクシですが、さすがにこれは気まずいと思いました。

 でもなぁ……

 結局あれから話も出来てないし……

 遠慮なくごちそうになることにしました。


 ドーナツ買って、席について……

「ねえ、橋本」

「ん?」

「俺の事、ダメだった?」

 結構ストレートに来るな!

「んじゃないよ、高坂クンっていいなと思った事があるしぃ」

「別に気使ってくれなくてもいいって」

「いや、それはマジ。たださあ……まだそういうのはいいかなって感じだったから」

「そっか」

「逆に聞きたいけどさぁ、なんで高坂クン、私だったの?」

「なんで?」

「だって高坂クン、結構イケメンで真面目な感じだし、バスケ部でレギュラーで女子の話でもよく話題になってるじゃん。女の子にもてるでしょ?」

「橋本の印象ってそうなんだ」

「女子の印象はそうだと思うよ」

「そっかあ……」


 ん?

 そうじゃないの?


「橋本って、なんか自然だよな?」

「天然って言いたいんかい!」

「違うって、どこまでも自分を偽らないなっ。」

「まあ、小雪には天上天下唯我独尊傍若無人と言われておりますが」

「妹正解だな!」

 楽しそうに笑います。

「おい!否定しろや!」


 高坂クン笑いが止まらないみたいです。

 殴りてぇこの笑顔……


「くっくっ……いやマジごめん。そういうトコがいいなって思ったんだよ」

「どゆこと?」

「俺ってぶっちゃけるとモテモテです。男女ともに」

「言い切ったよこの男!」

「だから無理ゲーなんだよ。恋愛って」

「ごめんなさい言ってることがさっぱりわかりません」

「俺の周りってみーんななれ合いなんだよ、俺自身もひっくるめてね」

「ん?」

「空気壊したくない仲良しごっこ的な?」

「あー……なんとなく……」


 つまるとこ、高坂クンは「みんなが大好きな高坂クン」的な共有財産なんだろう。

 みんなが高坂クン好き過ぎでけん制しあって「抜け駆け禁止」的な……

 高坂クンも人がいいから、この関係を壊しちゃうのが怖いんだろう。

 嗚呼、人気者はつらいね。


「だから素直な橋本って、すっげーいいなぁって思ったんだよ」

「私そんな素直じゃないし」

「なのかなぁ?でも少なくとも橋本の周りってみんな楽しそうじゃん」

「アホみたいな話しかしてないし。ってかナズェミテルンディス!」

「目立つし。くくっ……」

 高坂クン、また笑いが止まらないみたいです。

 ホント殴りてぇわ、この笑顔……


 ドーナツショップを出ます。

「ごちそうさまでした」

「いえいえどういたしまして」

 すっと手を差し出した。

「高坂クン、友達になろうよ」

「へ?」

「今更カレカノって訳にはいかないけどさ」


 高坂クンが「まいったなあ」っぽい表情で私を見ます。

 そして、握手してきました。


「それでよろしく、橋本」

「小春でいいし」

「んじゃ、これからもよろしくですよ小春」

「よろしく」

「お前の百合コロニーには入れねーけど」

「百合コロニー違うし!」

「あははは」


「ありがとね」

「何が?」

「高坂クンをフッちゃった時から、胸になんかつっかえてた気がしてたからさぁ」

「小春って変なトコ気にするよな?」

「普通そうじゃん」


 高坂クンがニカっと笑いました。

「やっぱ小春ってすっげーいいわ」

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