第22話 後輩ちゃん

 最近、すごい視線を感じます。

 始めは「自意識過剰かな?」と思ってたのですが……


 お昼休み


「小雪、また来てるよ。あの後輩ちゃん」

 1年生の子が、じーっとこっちを見ています。

「ってか、あの子目つきが怖いんだけど……」

 ツインテの小っちゃくて可愛い子ですが、私を睨んでくるんです。

「がるがる……」


「何したの小雪?」

「私が悪いの⁉何もしてないし!」

「だってあの子、猛獣の目してるよ?」

「それは同感」

「何したの小雪?」

「私が罪を認めないと終わらないかな⁉この話⁉」


「とんだヤンデレに好かれてしまった可能性とかは?」

「んなわけないし。仮にそうだとしたらお姉ちゃんの身が危ないでしょ」

「ん?」

 ちょっと周りを確認しましょう。

 今日は淳子ちゃん風邪ひいてお休みです。

 友香と多香子は向かい側にいます。

 私の隣はお姉ちゃん(割とゼロ距離)です。

 後輩ちゃんがヤンデレなら、お姉ちゃんは確実に排除の対象です。


「なんと!命の危機!」

「ヤンデレだったらって場合でしょ?そもそも前提条件おかしいし。」

られる前にる!」

「いのちだいじに!」

「止めないで小雪!そのオンナれない!」

「ウチの姉がヤンデレ!」


「まあ、そーゆー訳にもいかんし、ちょっと話を聞いてみよう」

 お姉ちゃんが卵焼きを箸に挟んで、後輩ちゃんの方に……

「とーとととー、ほらほら、卵焼き美味しいよー?」

 後輩ちゃんは、意味不明でフリーズしてます。

「ネコじゃないから!」

「からのー……」

 パクっと卵焼きを食べて……

 お姉ちゃん一気に後輩ちゃんにとびかかりました!


 ぎゃーぎゃーぎゃー!

 後輩ちゃんはじたばた逃げようとしています。

 お姉ちゃんは必死で逃げないように後輩ちゃんをホールドしています。

 うん

 こんな野良猫のケンカ見たことあるなぁ……

 バケツで水でもかけた方がいいのかなぁ?


「獲ったどー!」

「ふーっ!ふーっ!」

 まだ暴れたりなさそうな後輩ちゃんを、お姉ちゃんがガッチリ捕まえてます。

 メンドくさい事になりましたが、こうなっちゃたので仕方なく話しかけてみます。

「えーと……なんかゴメンね?」

「ふーっ!ふーっ!」

 怖いです。


「あはは……怒ってるね?えーと……なんでずーっと私の事見てたの?」

「…………」

 いきなり真っ赤な顔して黙り込みました。

「え……えーと、なんか悪い事したかな?私……」

「……してません……」

「え?」

「橋本先輩は何も悪い事してません!」

 更に真っ赤になりました。泣く寸前の顔です。

 どうしよう……

「入学式……」

「へ?」

「入学式……自販……」


 あ……

 そういえば、この子……


 今年の入学式の日

 終わった私は、ちょっと購買に用事がありました。

 お姉ちゃんと校門で待ち合わせていたので急いでいたら……

 自販の前で背伸びしてる子がいました。

 あ……ボタン届かないんだ……

「何飲むの?」

 その子はビックリして、ずさああああっと後ずさりしました。

「あ、ゴメンね?驚かせるつもりなかったんだけど。何飲むの?」

 その子は真っ赤な顔で言いました。

「イチゴ牛乳……」

「あー……なんで男子が飲まなそうなのボタン上にするかなぁ?」

 ボタンを押してあげました。

 出てきたイチゴ牛乳を嬉しそうに取り出しました。

「私は2年の橋本小雪、なんかの縁だし、よろしくね?」


「あー……あの時のイチゴ牛乳の……」

「あの時は……ありがとうございました……」

「へー……この子と小雪、接点あったんだ……」

「もう放してあげてもいいんじゃないかな?小脇に抱えてる後輩ちゃん……」

「後輩ちゃんじゃないです……」

「へ?」

「1年の……倉島くらしま……美鈴みすず……です……」


「ふーん」

 お姉ちゃんが新しいオモチャを見つけたような目をしています。

 イヤな予感しかしません。

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