第8話 悲しけりゃ、ここでお泣きよ。

 私は、お姉ちゃんと同じで帰宅部です。

 でも私は、中学の時バスケ部でした。

 2年生の時、怪我をしてやめました。


 中2の私は、眼鏡もかけてませんでした。

 ショートカットのスポーツ少女でした。

 お姉ちゃんみたいに、生まれついての体育会系な性格ではないので、なかなか部のみんなとはなじめませんでしたが、それでもバスケットボールは楽しかったです。

 

 2年生の時、怪我をしてやめました。


 お姉ちゃんが私の部屋をノックします。

「おーい、小雪ぃ、入るよー」 

「うん……」

 お姉ちゃんが中学の制服のまま入って来ました。

「ほらノート、あとプリン買ってきた」

「プリン……」

 学校の帰りに買って来てくれたみたいです。

「病院どうだった?」

「うん……もうギプス取って1週間だし、大丈夫だって……」

「そっか、よかったよかった」

「でも……もう激しい運動はダメだって……」

「そっか……」

 お姉ちゃんはベッドの隣に座って、私の頭をポフポフしてくれます。

「なんて言ったらいいかわかんないからさぁ」

「お姉ちゃんは優しいね……余計な事も言わないし……」

「あはは……」


 その時、私はお姉ちゃんをベッドに押し倒してしまいました。

「お?どしたどした?」

「……」

「なんだ?私小雪に凌辱されるの?「らめええっ!」とか言うの?」

「……悔しいよ」

 涙が出てきました……

「悔しいよ……悔しい……悔しい……悔しい!」

 お姉ちゃんの顔に涙が落ちていきます。


「悔しい!悔しいよ!悔しい!私が……私が悪いわけじゃないのに!」

 怪我の原因は、相手の危険行為に巻き込まれたからです。

 自分に非があったら、あきらめられたかもしれません。

 でも……

「悔しい……なんで……悔しいよ……悔しい」

「そっか、悔しいんだ。そうなんだ……」

 お姉ちゃんがほっペタを撫でてくれます。

 その時、私はその優しさに腹が立ちました。

「軽く言わないでよ!お姉ちゃんに私の気持ちはわかんないよっ!」


 私は、お姉ちゃんに八つ当たりをしたんです。

 最低です。

「お姉ちゃんは明るくて!みんなに人気があって!男子にも注目されて!」

「いやぁ……逆に警戒されてるってか……告られた事ないし……」

「そうやって飄々としてるトコも大っ嫌いっ!」

「……」

「私、部活でもなんとなく浮いてるし!解ってるよ!バスケが大好きじゃなかったら部活なんてとっくに辞めてるよ!」

「……」

「お姉ちゃんは明るくて……みんなに人気があって……私、お姉ちゃんに勝てるのってバスケしかないのに!」

「そんなことないけど……なんか……ゴメン……」

「謝らないでよっ!こんな理不尽なことで軽く謝るお姉ちゃん大っ嫌い!」

「どうしろと……」

「やっぱり私の事解ってない!お姉ちゃん大っ嫌い!」

「……」

「大っ嫌い!嫌い!嫌い……う……うわああああんっ!」

「『悔しい』んだよね?『腹が立つ』じゃなくて……私、小雪のそういう所好きだよ?」

「うえっ……うっ……私は……お姉ちゃん嫌い……ぐすっ……」

「たまには他人のせいにしなよ、ね?」

「ぐすっ……10ヶ月しか……うっ……違わないのに……ぐすっ……上から目線……嫌い……うっ……」

 その間、お姉ちゃんは……

 八つ当たりしてるだけの最低な私のほっぺたをずっと撫でてくれてました。


 そして今


 体育館からバスケットボールのドリブルがダンダンと聞こえてきます。

 バスケはできなくなったけど、それはそれで仕方なかったかなって……

 でも今は問題ありません。

 お姉ちゃんとつるんでると、毎日が楽しいです。

 友達もできました。

 なんて事ないけど、私は毎日が楽しいです。


「えへへ……」

「何々?またくっ付いてきて……」

「いや、毎日楽しいなって。」

「乳揉まれるのが?」

「最後に台無しにしてくれたね⁉」

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