2,橋の女

「何だったんだ……?」

俺はビラを自転車のカゴに突っ込むと、ペダルをこぎ出した。

じき夏休みともあり、夕方だというのにまだ日は高く、降り注ぐ日差しはジリジリと肌を刺してくる。

しかし、近くを流れる川のせせらぎや雑草が風で揺れる音は涼やかで、気持ちだけでも心地良かった。

「坊や」

その時、声が聞こえた。女の人の声だ。

「こっちへおいで」

再び声が聞こえた。

どうやら近くの小川に架かっている、古い石橋の方にいるらしい。

「誰?」

俺はハンドルを切り、橋へ向かった。

だが橋の中腹まで来ても、周囲に人の姿は見当たらない。

「何処にいんの?」

「ここ」

その瞬間、下から足をつかまれ、引っ張られた。

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