第五十八話 帝国歴二六一年の決算報告書
帝国歴二六二年、柘榴石月(一月)
年明けた。新年だ。俺もパパになったからね。今まで見たいにガキっぽく新年の挨拶などしないのだよ。
あばば、アレウス。パパだよ。パパ。うーん、かわいいでちゅねー。
ほっぺにチューしていいかい? あー、かわいいなぁ。食べちゃいたいくらいだ。
おや、これは……大きい方の予感。アレウス、しばし待て!
あ、ちょ、ちょっと取り込むんで、その間は去年の決算書でも目を通しておいてくれ。
アレウスー! まだ、早いぞー! 待つんだー!
エルウィン家 帝国歴二六一年決算書
人口:アシュレイ城(本領)20513名(1439名増) スラト城(アルコー家保護領)3554名(248名増) アルカナ城(新領地)2499名 合計26566名
租税収入(帝国金貨換算)
・入市税……帝国金貨4289枚
・施設使用税……帝国金貨1268枚
・相続税……帝国金貨54枚
・土地売買税……帝国金貨73枚
・賦役免除税……帝国金貨541枚
・売り上げ税……帝国金貨2362枚
・生活必需品税……帝国金貨1988枚
租税収入総計(金納分):帝国金貨10595枚(+1706枚)
租税外収入(帝国金貨換算)
・放出品売却益……帝国金貨18689枚
・香油専売利益……帝国金貨6455枚
租税外収入総計:帝国金貨25144枚
収入総計:帝国金貨35739枚(-8401枚)
人件費(帝国金貨換算)
・小者……帝国金貨1枚×12ヵ月×150名=帝国金貨1800枚
・小者頭……帝国金貨3枚×12ヵ月×30名=帝国金貨1080枚
・従士……帝国金貨3枚×12ヵ月×100名=帝国金貨3600枚
・戦士……帝国金貨4枚×12ヵ月×220名=帝国金貨10560枚
・戦士長……帝国金貨10枚×12ヵ月×12名=帝国金貨1440枚
・家老……帝国金貨15枚×12ヵ月×1名=帝国金貨180枚
家臣総数:513名(101名増)
人件費総計:帝国金貨枚18660枚(+2760枚)
諸雑費(帝国金貨換算)
・当主生活費……帝国金貨500枚
・飼料代……帝国金貨90枚
・城修繕費……帝国金貨1560枚
・装備修繕費……帝国金貨2628枚
・アルカナ城攻略戦及びアレクサ王国撃退戦費用……帝国金貨16329枚
・地底人契約料……帝国金貨32000枚
・鉱山設備投資……帝国金貨16400枚
諸雑費総計:帝国金貨69507枚
支出総計:帝国金貨88167枚(+70521枚)
収支差し引き:帝国金貨52428枚減
繰り越し金:帝国金貨29048枚(本年度52428枚減)
本年度地代+人頭税として(食糧物納分):520万食
備蓄食料:320万食(+40万食積み増し)
全人口籠城時:60日分(一日二食配給)
ふぅ、ダメだった。間に合わなかったよ。
キッチリとおむつを交換し、乳母のフリンにアレウスを任せてきた。
さぁ、仕事だ。仕事。パパはお金を稼がねばならない。
マリーダは出産終えてすぐであるが、魔王陛下の新年会にブレストと共に呼ばれて不在。
久しぶりに静かなんで、仕事が捗る。
そうだ。やることリストも更新しておけないとな。
去年はバタバタしてリスト更新忘れてたし。きちんと書いとかないと。
やることリスト二六二年。
・領内の度量衡の統一(アルコー家完了→アルカナ領開始)
・領内の農村の正確な納税基礎台帳の作成(アルコー家完了→アルカナ領開始)
・領内の税制改革(一部完了)
・領内の産業振興(一部完了)
・領内の堤防水利開発(着工中本年度五割到達予定)
・情報収集組織の拡充(追加人員補充予定)
・アルカナ領の銀鉱山開発促進(試掘完了本年度半ばより本格稼働予定)
・人口増加策促進(一部完了)
・周辺情報の収集(収集中)
・俺の新たな嫁候補捜索(頑張る)
・今年も子作り(チョー頑張る)
周辺情報の件でいくつか面白い話が、ワリドを通じて入ってきていた。
アレクサ王国に属していた国境領主たちが数名、エランシア帝国に領地ごと投降してきたことが一点。
アシュレイ城の西側に流れるヴェーザー河流域に点在するヴェーザー自由都市同盟が内紛で揉めてるってことが一点。
アレクサ王国内で重税に対抗して農民一揆が頻発しているってのが一点。
義兄ステファンが対アレクサ王国の方面軍総司令官に任じられ、投降した元アレクサ側の領主たちが寄騎として配属されたってのが一点。
んで、うちも寄騎としてお手伝いを任されそうってのが一点。
この五点の情報が特に気になった情報だ。
多くは対アレクサ王国の情報だが、西側のヴェーザー自由都市同盟の動きも気になるところだ。
このヴェーザー自由都市同盟ってのは、元はヴェーザー川の水運を利用して栄えた四つの都市が緩やかな連帯で自治を行っているのだ。
昔から水運を利用して色々な物が集まる定期市に集まる商人たちの休憩地であり、都市化すると規模が増した大市が開かれるようになり、地元の商人や遠くの商人が多数往来し一年中賑わっている。
一月にモラニー、三月にシュルオーブ、五月にヴァンドラ、七月にメトロワ、九月にシュルオーブ、一一月にメトロワと年六回、それぞれの都市で六週間ずつヴェーザー大市が開催されているのだ。
各都市で六週間開催されるヴェーザー大市では、取引される品物の市の建つ順番が決められている。
まず、『織物の市』、絹や綿、麻や羊毛などが取引される市。
続いて『皮の市』、鹿、牛、馬、虎、豹、熊などの毛皮が取引される市。
そして最後は『秤の市』であった。
『秤の市』とは目方や量で売り買いされる商品の市で、香料、染料、塩、砂糖、果物、油脂類、金属、木材など多種多様な商品が扱われた。
また、大市で使用される各国の貨幣を両替するために銀行業務も行っている。
そんな商業都市であるヴェーザー自由都市同盟。
金で傭兵を雇って自衛してるんだけども、どこかの都市が傭兵料をケチったら、ブチ切れられた傭兵団に街ごと乗っ取られたって話が伝わってる。
そのお馬鹿な都市が、なんとうちに一番近い、ヴァンドラって都市で、川を下れば一日で着く場所にあるわけさ。
そして、うちには血の気が溢れる戦闘職人どもが余ってる。
ってことで、乗っ取った傭兵団を都市から追い出して、『助けてあげたよね? ちょっとポケットの中のお金貸してくれない? ちゃんと返すって。マジで、俺とお前の仲じゃん。今後も困ったことあったら、力貸してやっからさ。ね。年利ゼロ、返済期限は俺の気分次第でいいよね?』って感じの融資を引き出そうかなとも考えてしまう。
要はいじめっ子から助けてのカツアゲなんだが、銀山開発とかで金が必要になってくるんで、新年会に行ってるマリーダが魔王陛下からの許可をもらったらやってみてもいいかなと思う。
こんな感じでエルウィン家の領内は落ち着いているが、周りは何かと騒がしいのである。
息子が大きくなるまでには周囲が落ち着いて欲しいものだ。
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