Fate maker

月浦賞人

プロローグ

「うわー。ゴミ箱にパンツ捨てられてるよー!」


 教室のゴミ箱の前で、女子がわざとらしく大声を上げた。

 その言葉に色めき立って、女子数人がゴミ箱に駆け寄る。


「うわ! マジじゃん。きったなーい!」

「誰のパンツかな?」


 その言葉の後、最初に声を上げた少女が教室の後ろの方へ視線を向けた。変に興奮した顔で、笑う。


「ねぇ、愛花まなかってパンツ履いてるー?」


 びくりと、名を呼ばれた吉田よしだ愛花という少女は体を震わせた。

 青ざめる愛花を見る少女は、何か堪えきれない熱に浮かされた様子で言う。


「ちょっと見せてよー」


「や、やだっ!」

 拒絶の言葉を皮切りに、近くの女子二人が近づく。酷薄な笑顔でその意図に気付き、愛花はスカートを押さえて拒否した。


 クラス中の女子が嗜虐心に満ちた顔で、男子が複数の気持ちが入り混じった顔で、愛花に視線を注いでいた。愛花がその視線に震える中、近づいた二人の女子は愛花の両腕を掴んでバンザイさせた。


「いや、やだ。止めて……!」


 愛花の名を呼んだ女子が愛花の背後に回った。震える首筋を見て、顔を紅潮させながらスカートに手を掛けた。


「愛花ちゃんはちゃんとパンツ履けてるかなー? そーれっ!」


「いやあああぁぁぁ!」


 愛花の悲鳴と周囲の嘲笑に、望月もちづき乃ノののは耳を塞いだ。

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