第5話 スフィアとマナと魔物
洞窟に近づくにつれルイン以外の二人も周囲の異様なマナの量をはっきりとではないが感じるようになっていた。
「マナが見えない俺でさえここが異常なのは分かるぞ……」
「二人共、これを身に着けておいて」
アーニャはルインとレイヴに丸い宝石を手渡した。
「これはスフィア、マナを吸収しエネルギーとして利用出来るようにする物よ。高濃度のマナは人体にも影響を及ぼしかねないわ。けど、これを身につけることでマナの影響をある程度抑えることも出来るの」
「こんな物があるのか」
「さあレイヴ、あなたも付けて」
「ありがとうアーニャ。君には助けられてばかりだな」
「気にしなくて良いわ。さ、行くわよ」
ルインを先頭に三人は洞窟の奥へと進む。
洞窟とは言っても村人達により祠へと至る道は整備されており、ルインとレイヴは何度も通った道である。
しかしいつもと違う異様な雰囲気が、見知らぬ土地へ足を踏み入れた時のような不安を二人の胸に抱かせていた。
「なんだか嫌な感じだな……」
「ああ、信じられない程の量のマナが漂ってる」
「そういえばアーニャ、なぜマナが多いと生物は魔物になるんだ?」
「まだ全てが解明されたわけではないけど、もともとマナは生命の源とも言われててこの世界に生きとし生ける物全てがマナを宿してると言われているわ」
「生きとし生ける物全て……」
「そう、私達人間も例外なくね。ただそれ以外にも大気中や大地にもマナは存在しているの。そして生物はそのマナを無意識に体内に取り込んでいるのよ」
「取り込んで、どうなるんだ?」
「生物は生きているだけでマナを消費するの。そして取り込むマナの量を消費するマナの量が上回れば、まあ簡単に言えばとても疲れるわ。もっと酷ければ気絶くらいはするかもね?」
「じゃあ逆に取り込むマナの量が多ければどうなるんだ?」
「問題はそこよ。大気中のマナの濃度が通常程度なら過度に取り込むなんてことは起きないわ。けれどもしマナの濃度が濃過ぎればマナはどんどん体内に取り込まれてしまう。ただ生物が取り込めるマナの許容量にも限度があるわ。それを越えると……」
「それを越えると?」
「肉体が変異する。一説によれば許容量を越えるマナの過剰供給に耐える為に肉体がより強固な物になろうとするのではと言われているわ」
「信じられないな……」
「だがあの魔物を見ればあながち嘘とも思えない。レイヴも見たろ。あいつの肉体、信じられない程頑丈だった」
「ただ問題なのは肉体は耐えられても精神は耐えられないということよ。変異した生物のほとんどは理性を失い凶暴になってしまうわ」
「それが魔物、生命の源であるはずのマナも過度に摂れば毒にもなるか……」
「話しているうちに、見ろ。祠はもうすぐそこだ」
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