猫と野槌の夢 / 猫の子の旅
七戸寧子 / 栗饅頭
猫と野槌の夢
プロローグ
ここはジャパリパーク、しんりんちほー。
木の生い茂る地域だが、一部はその木もなくなり、代わりに美しい花がちらほらと・・・と、いう中にそびえ立つのがジャパリ図書館である。
「フェネック!うどんの茹で上がりはどうなのだ!?」
「バッチリなのさー、アライさんこそ具の方は出来てるのー?よそ見なんかして〜・・・」
その図書館では、愉快な二人組によるお料理が行われていた。
アライグマのフレンズと、フェネックのフレンズ。凸凹コンビだが、長年二人で旅をしてきた相棒同士である。
そのコンビの片割れ、フェネックの問いにアライグマは元気に答えるのだった。
「シロさんの弟子であるアライさんだぞぉ!?よそ見ぐらいでサギョーコーリツは落とさないのだ!」
・・・突然だが、皆さんは、白い猫の話をご存知だろうか?
ある日パークを訪れた白髪の青年が、様々な出会いの中で成長し、色々な意味で強くなり、家族を作り幸せになる物語。読む者の心を魅了する、素敵な物語。
ある日、その物語の中からいくつかのページが失われてしまった。
今から展開されるのは、その失われたページを埋めるべく書かれた物語である。
消えてしまったものの代わりを、完璧に果たすというのはどんなものであっても不可能である。この、本の間に付け足されるページも同様。
その事を理解し、納得した上でこの物語を読み進めてほしい・・・
「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」
場にいる全員で、パンっと手を叩く。
「アライさん特製うどんなのだ!じゃんじゃん食べるのだ!」
食卓に並べられたうどん。火の恐怖を克服したアライグマとフェネックのお手製である。
「ぐす・・・アライさん立派になったなぁ・・・」
デジャブを感じるセリフをいい、涙目でうどんを啜るのはホワイトライオンのフレンズ・・・というのは正確には違い、ホワイトライオンとヒトのハーフ、世にも珍しいオスのフレンズであるシロ。白い猫の話の主人公である。
「もう、シロさんったらいつもそう言って・・・」
と、隣で笑うのは彼の妻であるかばん。かばんと言いつつ、鞄を背負うことは減ったのだが変わらぬかばんちゃんである。
他には、図書館の主でありこの島の長を務めるコノハ博士とミミちゃん助手。と、その助手の夫であり、シロかば夫妻の息子である・・・
「クロもそう思うだろ?」
クロこと、クロユキである。
「いや、僕が生まれた頃にはアライちゃんも料理出来てたし・・・」
「そっかあ・・・」
そんな会話をしながら、皆でうどんを啜るのであった。
「そういえばさ、父さん」
「どうした?」
「この間話した、夢のことなんだけど・・・」
食事の最中、クロが父であるシロに訊ねた。
夢というのは、クロが小さな頃に見た不思議な夢・・・昔のジャパリパークにタイムスリップし、素敵な百合ップルに挟まれたり、美人飼育員さんにおねショタされ(殴
間違ったことは言ってない・・・
とにかく、そんな夢を最近になって不意に思い出したという話なのだ。そのことについて、特になんでもないが話題として出したのだ。
「なになに〜?」
「アライさんも気になるのだ!」
クロは、全員にこの話が通じるテイでこの話を始めたのだが、初耳のフレンズが二人。アライグマとフェネックである。
「ああ、二人は知らないっけ・・・あのね?」
クロはその話をざっくりと二人に聞かせる。聞かれると若干都合の悪い部分は掻い摘んだ。
「へーえ、不思議な夢だねー・・・」
「羨ましいのだ!アライさんもみたいのだ〜ぁ!」
「狙ってみれるものじゃないと思うけど・・・」
頬を掻きながら会話するクロは、そのアライグマの言葉にふと引っかかる部分を感じた。
「そうだ、二人ともなにか心当たりない?不思議な夢を見た・・・みたいな」
そう、同じような夢をどちらかが見たことあるのではないか?と考えたのだ。アライグマは直ぐに首を左右に降ったが、フェネックは少し考え込んで、答えを出した。
「・・・あるねー、でもそれは私じゃなくて・・・」
「本当!?聞かせて!?」
「・・・その前に、シロさん?聞いてもいいかなー?」
息子とアライグマ達のやり取りを眺めていたシロは、急に呼ばれたので肩をビクッとさせた。
「なんだい?」
「ツチノコってさー、もしかして今・・・
フードを下ろして、髪を結んでてー・・・あと、毛皮の袖も無かったりする?」
フェネックがニヤリとしながら問う。
ツチノコというのは、今は別のエリアで旅をするフレンズ。もう長らく会っていないフェネックからその話が出るのは意外だった。その格好は会わなくなってから変化し、本来フェネックが知りえない情報だった。
「・・・その通り、どうしてそれを?」
「・・・もう一ついいかなー?クロくんは、昔のパークに行った、ってことでいいんだよねー?」
「そうだけど・・・」
二つの質問の後、フェネックは大きな耳をぴこぴこ動かして言葉を続けた。
「あれはねー、私たちがかばんさんを追いかけていたころだねー・・・私が昔に行ったんじゃなくて、昔に来たフレンズの話になると思うんだけどー?」
舞台は二十年近く前、まだシロがパークにいない頃の話だった・・・
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