第14話 知ってるの自分だけっていう名作

「この小説を知っているのは自分だけっていう名作」

「そういうの待ってた」

「これは絶対に探しても見つからない」

「きみのすすめる小説は有名すぎて格好悪いんだよ」

「それ、厳しすぎだろ。要求高すぎ」

「どれくらい無名なの?」

「誰も知らないと思う。本当に」

「きみが知ってるじゃないか」

「もちろん。もう一回読みたいけど入手困難」

「「正忍伝」や「パルメニデス」より?」

「うん。その辺よりマイナー。お金をいくら積んでも見つからないと思う」

「本当に名作なのか? せっかく見つけてもがっかりな出来だといけないぞ」

「大丈夫。人を選ぶけど、たぶん、というか、こんな極端な小説があったのかと、その奇書ぶりに驚くことはまちがいない」

「いい。かまわない。マイナーならいいんだ。マイナーなものを読みたいんだ」

「ぼくは、そういうの嫌い。流行に流されるのが格好悪いとかいって、奇抜なものばかりすすめるのはちがうと思う。ベタとマイナーの両方に価値はある」

「絶対に読むから教えてくれ」

「いや、絶対に見つからない」

「なんでだ。」

「すでに削除されたネット小説だから。特殊なプログラマーになって、消えた小説データを復元でもしないかぎり見つからない。」

「それは本当に見つからないな」

「これ知ってるの自分だけっていう名作は、『ロックンロール大将(十八禁)』『続ロックンロール大将(ノクタヴァージョン)』、ごはんライス先生(ホラーロリマックス)著だあ」

「気になるな」

「絶対に見つからない。誰も知らないだろう」

「ああ、本当に知らないわ」

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