桜の樹の下には

桜の樹の下には死体が埋まっている。

だって、この世界は全て、死体で出来ている。


君だって僕だって、死体で出来ている。

一度、遠い昔に死んだことを忘れて、恋をする。


恋を甘酸っぱいと言ったのは誰だっただろうか。

血の赤で塗りつぶされた心臓に唆され、

甘酸っぱいだけの香りを探していたら、

いつの間にか薄桃色が散っていた。


青春を追いかけていた日々が、

老いを恥じるようになって、

僕たち、

時間の狭間に取り残されるね。


過去を生きる僕たちはいつでも前を向いていて、

未来を生きる僕は、後ろを向くしかない。

だからこそ、生きていられるのだろう。

みんな、ただのたんぱく質なのに、

そうやって生きていくのだろう。


だから僕が、

君をずっと見つめているなんて、

そんなこと、

もう、

どうしようもないんだ。

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