雨鎮師:Rain-breakers ―警視庁特殊犯捜査室「雨係」事件ファイル―
鍋島小骨
01: spiritualization -世界精霊化傾向-
八十年前から始まり七十四年前までに段階的に起きたとされる
御大層な命名だが、それによってこの世が剣と魔法のファンタジー世界になったわけでもなければ呪術ドリヴンの魔界になったわけでもない。科学の法則は以前と変わらずほぼ保たれているし、人間の生活やそのスタイルも根本的なところでは変化していない。大多数の人々にとってそれは危機ではなく、それまでの歴史と同じように何かが発見され、新しいモノが登場して、たちまち日常生活に溶け込んだに過ぎない。
例えば、重力に逆らい鉛直上向きに浮く性質を持つ
かつての時代にはそれなりの正確さを持っていたはずの気圧予想図や天気図は、
因子は、おおむね十二歳までの子供。条件は遺棄された屍体であること。有り体に言うと、殺されてまだ発見されていない子供が、その屍体周辺で雨を降らせる場合がある。これを
事例数が蓄積するに従って分かってきたのは、屍体となった子供が泣き出すのは遺棄の直後とは限らないということだ。
世界には、殺されたまま発見されていない子供の屍体がまだまだ眠っているはずだった。ならば、それら遺体はいつ空を借りて泣き出すか分からない。
長雨化を待たず、天泣が始まった時点で雨の性質に気付ける者だけが、その地域を水害に遭わせる前に屍体に辿り着くことができる。公的機関は当然、雨を読む能力を持って生まれた彼らを犯罪摘発や防災等に活用し始めた。
気象捜査官――俗に
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