023 春に眠る命のかたまりⅦ
俺は後ろを振り返ると、男子高校生にしてみれば都会人並みのファッションセンスのある男と、少し地味目の大人のワンピースに白い上着を着ていた女がいた。
「げっ、なんで颯太がここにいるんだよ」
そこには同級生で親友の
「げっ、じゃないだろ? デートの帰りだよ。デートの……」
「違うでしょ。菅谷君、デートじゃないわよ。偶々、近くの通りで居合わせただけだから!」
「にしては、その買い物袋が妙に同じなのはどうしてなんだ?」
二人が持っている買い物袋を見ると、近くの大手大型ショッピングモールのロゴが入った袋を持っている。
さすがにそんな言い訳が無理だと思うんだが……。
などと考えていたら、左腕の裾を桜がぐいぐいと引っぱってくる。
手が震えており、少し表情が暗く、体を近づけてくる。
「あれ? 翔、お前の隣にいる女の子、誰かに似ていないか? どこかで見た面影はあるんだが……。ふーん……」
「ねぇ、その子ってもしかして桜ちゃんじゃないわよね?」
小泉が顔を覗き込んでじっくりと桜を見つめると、ようやく気付く。
「はぁ? 何言ってるんだ? 桜ちゃんは未だ病室で眠っているだろ?」
「でも、顔もその少しやせた体型は彼女そっくりなんだけど……。それに菅谷君が、彼女以外に女を作るとでも思っているの?」
「確かにそう言われてみれば……。ん? 待てよ……だとすると、お前……まさか!」
と、颯太は声を上げる。
「しぃいいいいいいいいいいい! 馬鹿っ! こんな所で大声を出すな。周りの人に迷惑だろ? 話すから俺達が座っているあそこの席で待っててくれ」
俺は颯太の耳元で囁きながら言う。
颯太は頷いて、小泉と一緒に俺達の席に先に行ってもらった。
ちょうど、スープが出来上がった頃が同じで、桜に渡すと、戸惑っている彼女に言う。
「まあ、あいつらは別に悪い奴らじゃないから心配しなくてもお前が思っていることにはならないよ。大丈夫、話せば分かってくれる奴らだから……」
そう言って、二人の元へと戻る。
颯太と小泉は二人並んで座っており、奥の席に俺が座り、その隣に桜が座る。周りからしてみればダブルデートに見えると思うが、そんな事を考えている暇なんてない。
持ってきたスープを一口飲みながら一息入れ、この気まずい空気の中、いつ口を開くかを考えていた。桜が目覚めたことをこの二人にどうやって伝えればいいのか。そして、そんな彼女を受け入れてもらえるのかも心配である。
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