クーちゃんと一緒
白鳥一二五
第1話
悪い夢を見ていた……
とてつもない幸せの中で生きる僕の姿が……
暗闇の中にあった……
【???】
「ほら、早く早く!!」
平日昼間のテーマパークで手を引く少女は明るく――だけど、悲哀を堪えて笑う。
彼女の事が大好きだった。
とても言葉では表せないほどに好きで……もし、僕のすべてを捧げて彼女が幸せになれるなら、自分の命なんてどうでもいいと思った。
足早にはしゃぐ彼女の豊満な谷間で、可愛らしいペンダントが揺れ、反射する光の眩しさに僕は瞼を閉じた。
だけど……朦朧とした景色の中に、涙する彼女の姿がそこにあった。
視界が失われた時、僕はまた彼女と過ごしていた。
街中のレストランで君はレモンティーを、僕はちょっと格好つけてコーヒーを。
【???】
「コーヒー飲めるの?」
どうしてそんな苦い物が飲めるのかと尋ねる。
だけど、やっぱり飲めない事を知ると、神妙さを漂わせていた顔つきが綻びた。
クスリクスリと笑いながら、胸部にぶら下がるペンダントが揺れる。
小さな瓶に詰められた星の砂と、海外の和やかな田舎を思い起こさせる、小さな風車(ふうしゃ)のモチーフが材質のままに金色の光を放つ。
ふとスマートフォンがポケットの中で揺れ、友人からのメッセージが届く。
教師からも電話が来る。
さっきまで学校にいたはずなのに、抜け出してきたのだから当然だ。
【???】
「こういうのって、いいね」
授業態度もこれといって真面目ではなく、成績もそこまでよくはない僕たち。
しかし、二人だけでサボって、喫茶店で他愛もないお喋りをしている。
どことなく好奇心がくすぐられるフレーズだったから、してみたかっただけ。
【???】
「私ね――」
突然の轟音とともに、目の前にいた彼女の姿が瓦礫の山と化す。
反射的に瞼を閉じようと刹那の間だけ見ていたけど、事態を理解するのは早かった。
大通りに面したこの喫茶店に、トレーラーが突っ込んできたんだと……
だけど、受け入れられなかった……
彼女を失ったんだと……
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