第146話 つくづく「熟み」

つくづく「では何故生まれてきたのか」と、問うと

装束を纏った、しろい老婆がひゅるりと反した聲は

「其の姿を屹度御見せしたかったのでしょう」と、ゆぅるり

狭間に足を浸したのである。

満ちては曳く人生でした ―― と和らかな風は程に美風で言い、

無くなった灰に実を添わせ、共に涙を流し

沖に向かう鄙びた足跡は 紙の渕で永遠に揺蕩う亡霊の様で

ユラユラと蜃気楼 確かに。

ココこころに魅せ たしかに底に有るのでしょうよ

遺り焔のこりびうに哭く

イキモノなど所詮みな同じ、其の低度。わらっていく、

その音色は鈴の様に幽かに ……

波の刃は光から逃げるように 海へと堕ち 手元に還る定め。

熟みうみ

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