さよなら幻風景

「分かる人にだけ分かればいい」と

君は寂しそうに笑っていた

背伸びして取った 洋書を読んでいた

意味も分からないまま



他人の言葉の引用も

虎の威を借る評論も

恥ずかしがらなくていい

そのどこかに君の匂いがしたんだ



ねえ 聞こえている?

小さな町から飛び出そう

うずくまっても 塞ぎ込んでも

君が起きるまでそばにいたい



「ほんの少しなら信じていい」と

君の震えた声を覚えている

殴り書き拾った あの日の傲慢が

今も蝕んだまま



独り善がりの行間も

偉人気取りの文芸も

そんなものどうでもいい

それでもただ君を愛していたんだ



さあ 手を繋ごう

遠くの町まで共にいこう

黒い過去も 暗い未来も

二人で眩しく照らし出そう

十字架担いで生きていこう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩集1 anyone say No to mass 七井湊 @nanaiminato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ