指輪受け取りました
「出来ておるぞ。ほら、これだ」
そう言って
まるで小さな布団の上に仲良く並んでいるかのように、寄り添って並んでいる。
「凄い……素敵です」
「これは、凄いな。流石……としか言いようのない」
指輪を取り出してみると、緩やかにカーブして、着けていても気にならないように、引っ掛かりがないようになっている。
また、細かく繊細な蔦が一周しており、その途中鉱石の華が一輪咲き誇っている。
華の中央には、黒色と紅葉色の石が鎮座している。互いに一つずつ。色違いで。
しかもその鉱石の華だけは薄らと黄色を帯びている。
指輪自体は銀色だ。
上品で繊細で……且つ豪華な仕上がり。
一生に一度のものに相応しい指輪である。
大きい指輪には微かに緑の混じった黒色の小さめの石。
小さい指輪には紅葉色の同じく小さめの石。
--そう。互いの瞳の色と同じ色の石が嵌っているのだ。
かなり手の込んだ演出と造りになっている。
お互いの瞳の色を身に付けるとはなんとも粋だ。
「この石、山吹さんと私の瞳の色……?ふふ、凄く……綺麗」
「いいだろう?その石はな、貴継が見つけてきてくれたのだ。その石をその華の中央に填める案も貴継のものだ。ちなみに石留の部分は引っ掛かりをなくしている。……妾はそれで服を一着駄目にした。もちろん造り直したがな」
「ああ。確かに引っ掛からない。指を石の上に滑らせても滑らかだ。……貴継にも礼を言いたいんだが、いるか?」
「残念ながら出かけておる。……最近あちこちに出かけているようでな。あまり構って貰えんのだ。……妾は寂しい」
かなり頻繁に出かけているようだ。
今度見かけたら用事終わったあとでもいいから、もっと構ってあげてと伝えておこう。
流石に可哀想だ。
それにこれなら
あとはこんなに素敵なものを造って貰ったのだ。
労わってあげたい……が鈴音達よりも貴継が労わった方が効果は抜群だろう。
「ありがとな、
「ああ、待て。郁麻が数日前に来てな。注文した日からきっかり一月後に、
【また琴音が来ている】
……しかも、騒ぎを起こしているんだとか。なんと厄介な。
「なるほど。
「そう、ですね。面倒になる事は避けられないですし。……正直言うと、どうでもいいんですけれど、ね」
「あとは帰りを気をつけないといけないな。……気を抜いて油断した時こそ遭遇する気がするんでな」
「……解りました。とりあえず今はここで郁麻さんが衣装持ってくるのを待てばいいんですよね?」
「ああ。
それでいいよな?
と山吹さんが
「ここで待つのは構わぬが……お前達だけで話を進めるでない。妾にも解るように説明せい。無関係ではないのだぞ」
始終蚊帳の外だった、
部屋にビリビリとした空気が漂う。
……鳥肌がたった。
「すみません。そういえば、話してませんでしたね」
簡単にだが
鈴音が双子であること。忌み子で身代わりの生贄だったこと。
最近、双子の姉妹である琴音がこの街に出没すること。
……そして郁麻と琴音がちょっと揉めたこと。
「なるほどなあ……。そうか、お主双子だったのか。……それで、出歩くなという伝言なのか」
「そうだ。二人は鉢合わせない方がいいだろう。……双子だけあって、そっくりなんだそうだ。つまり、あちこちで騒ぎを起こしているのであれば鈴音が間違われる。……もっとも俺はまだ、見てないからそこまで似ているのかはなんとも言えないがな」
琴音には今のところ不幸中の幸いか遭遇してない。
だが、あちこちで何をやらかしているかはわかったものでは無い。
なにせ、初対面の郁麻を罵倒するのだ。また、琴音に間違えられて喧嘩を売られても困る。
「どちらにせよ、どうにかせんと鈴音が街に来れなくなるではないか。うむ、どうしたものよのう。……………………ならばいっその事、その女に消えてもらうか?それなら、直ぐに済むぞ」
解決策がないか考えていてくれたのだろうが、【消えてもらう】という恐ろしさを感じさせる単語が聞こえた。
「やめろやめろ。殺すのは駄目だ。お前は昔から過激すぎる。何でもかんでも力で潰して、無理矢理解決してきたのは知ってる。……今回ばかりはダメだ」
あ、やっぱり【殺す】って意味だったみたい。
「
「むう……駄目か。駄目なのか」
残念そうですが、それは許可できない。
友人に人殺しはさせたくない。
「そういえば……鈴音は隔離されておったのだろう?の、割には良い子に育ったのう……妾は嬉しい」
「あ、一応幼い頃に一人だけ世話役として女性が傍に居ました。その人が色々教えてくれたんです。ある程度の知識と言葉使いだけは。……まあ、生贄になった時の身代わりに死なれたら困るのと、身代わりの別人だと解らないようにっていう理由でしょうけど、ね」
どうせその程度の理由で女性も教えてくれたのだろう。
今にしてみると、名前を一度も呼ばれることがなかったのだから、鈴音などどうでもよかったのだろうと思う。
「ほんに、良い子に育ってくれた……。心も純粋で、妾は誇らしいぞ」
「お前が育てた訳では無いだろうに」
「うるさい。感動的な場面だぞ。水を差すな」
「はいはい」
母が子の成長に感動しているようである。
……嬉しい限りだが、母親ではない。
その横で山吹は呆れてため息をついている。
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