猫の抜け道(ハヤト×タカシ)


 ――猫の抜け道?


『そう、ミケさんが教えてくれた。ここから商店街へ抜けられる』


 ――隼人も使うの?


『まあ。急いでる時とかに…、 おいで』



 あの夜。



 観月家から出て、秘密の道を案内された。

 いたずらっぽく笑う隼人は新鮮だけど、こっちは浴衣のせいで狭い路地を通るのが大変だった。最後にドジって転んでしまい、慌てた隼人の腕に引き上げられ、


 見つめあって……


 ほんの一瞬、想いは溢れてたけど

 先に目線を外したのは隼人だった。


 そして商店街へ抜けて……ふたり夜祭りへと繰り出した。

 かがり町にはまだまだ知らない場所があるんだと、それで昂揚したのだと、

 じぶんへ言い聞かせながら。



 賑わう通り、たくさんの人

 あまりに早くすぎていく。

 楽しかった、本当に楽しかった

 月は昇って、星が輝いて、

 いつしかふたり……手が繋がれてた。



 もう いいんじゃないか、

 ずっと悩んだ。今夜だけは、

 今夜だけは


 しがらみなんて、忘れてしまえ。




 *




『猫の抜け道?』


 ――そう、ミケさんが教えてくれた。ここから商店街へ抜けられる。


『隼人も使うの?』


 ――まあ。急いでる時とかに…、 おいで。



 夜見る鷹史は、別人みたいだった。

 笑って、喋って、そんなの初めてだった。

 期待する目で見つめてしまった、

 焦った。



 鷹史、

 きっとこれから、

 これからきっと、

 すてきな事がたくさん起きる。


 夏が終わってもきっと会おう。

 互いのもとを行き来しよう。

 今まで離れてたぶんを、だんだんと縮めてこう。

 きっと歩み寄れる。



 このを境にして。






 ★…本編からこぼれました。笑

 ハヤタカ過去の、ある夏の夜のおはなし。

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