だん恋・番外編!/だん恋②

北極ポッケ

中学生編

第1話 篠塚家のクリスマス

その① 【誠に勝手ながら12/24休業致します。by店主】



鷹史「……って、貼り紙しといたから大丈夫だろ!」


忍「本当ですか。たかしののお客さんら、そんなで通用するの?」

鷹史「Σナンデ⁉ 店主が休むつってんだから、OKなの!」


忍「でも……」

鷹史「でもとかないの!」


忍「いや、でも……」

鷹史「ね~、ツナ♡」


ツナ「……」


▼ ツナは黙ってふたりを見上げているだけ


鷹史「ハイ。飼い猫、安定のシカト!」

忍「いつものことだと思います」


鷹史「月並みだが、高級猫缶……用意してたのにな~」

ツナ「!」


忍「(あ……尻尾うごいた;)」


移動する鷹史「してたのに、な~」

追ってくツナ「!」


▼ 猫は、高級猫缶に逆らえない


忍「おじさん、ツナで遊ぶのやめてよ、」

忍「……やめてよ、」

忍「……いつまでやってんですか」


戻った鷹史「たまにはいいじゃん!」

恥らうツナ「……にゃ////」


鷹史「それで、ディナーはどこがいい? どこ食べに行こっか?」


忍「ええと、べつにいいです。ヨソより、うちのご飯が一番だと思うので」

鷹史「あああああ泣いちゃうっ、タカシ幸せすぎてコワい♡」


忍「あ。やっぱりウソ、間違えました(クリスマスだし一緒に出かけたい)」

鷹史「Σえ……違うの?」


鼻で嗤うツナ「にゃw」


忍「あ、でも、おじさん。外食なら、変な服はやめてね」

鷹史「……ハイ?」


忍「妙に気合いを入れてる日って、服のセンスが壊滅的にやばいから」

鷹史「え……ヒド。お外歩くの難しくなったわ、やっぱ家にしよっかな」


忍「え?」

鷹史「もうデパートで食材買ってくっから!! 忍にぎゃふんと言わせたる!」


▼ どた ばた どすん(※たかしの身支度)


忍「……」

忍「……え、」

忍「……家着にコートだけを羽織っていったよ、あの人」


▼ 鷹史のルームウェア『グレーのスウェット上下』


鷹史「んでは~、いってきま~!」




その② 【鷹史がなにかしゃれたもの作ります】


鷹史「たでーま☆」

忍「おかえり」


▼ 食材どっさり


鷹史「ハイ注目~! タカシ、ひさびさの洋食に挑戦」

忍「わぁ……ハイソな食材が、たくさん」


鷹史「ちょっと奮発しちゃった……ごめん、まじで財布ゲッソリです」

忍「お正月まで、もやし生活かな。昔やったよね」


鷹史「大丈夫! 俺、タカシだぜ。たとえもやし一本でも、腕に全力かけて、忍にひもじい想いさせねぇから」

忍「そうですか」


鷹史「ねぇ。俺いま、すげぇカッコいいこと言ったっしょ★」

忍「そうですね」


▼ しばしの沈黙


鷹史「忍、ハートはあるの? 顔も……もっと、表情筋つかってあげて」

忍「そうだ、豆苗とか育ててみようよ。すぐ育って、すぐ食べられるよ」


鷹史「え、なにそれ楽しそう~!」

忍「……なんだけど。おじさんはすぐ枯らすから、ムリだろうね」


鷹史「うん」

忍「うん」


鼻で嗤うツナ「フン……ニャ!」


鷹史「Σていうか。うちそんなに、困窮してねぇから!」




その③ 【レッツ・クッキング withツナ】


忍「あれ? ねぇ肉は……?」

鷹史「ん? ほら鶏さんだぜ~!」


忍「え……う、うん……」

鷹史「なんだ、その残念そうな顔は」


忍「いえ、べつに(……ビーフ)」


忍を哀れむツナ「にゃ;」


鷹史「ケーキも焼くぜぇ!」

忍「ねぇ、時間押してきてるから早くしようよ」


鷹史「え、もうそんな時間?」

忍「うん、日が暮れてきたよ」


鷹史「ほら、ツナ。イチゴだぜぇ、くんくんしな♡」


ツナ「……」


▼ どうやらツナは、庭を眺めている


鷹史「ツナぁ~……!」

忍「そういうの、ムダだから」


鷹史「つーか忍さ。イチゴって、アガんない?」

忍「?」


鷹史「こどもって、イチゴにテンション上がるっしょ!」

忍「いえ、べつにとくに」


鷹史「あーもう忍、冷たい子。じゃあもう、ねこりんごでいいかな?」

忍「えっ……いいですけど、……でも、……ケーキ」


鷹史「冗談冗談。タカシがんばる☆」




その④ 【その頃、店先の貼り紙をみましたby藤田】


藤田「あれ。たかしのお休みだ」

藤田父「ふにゃ?」


藤田「父さん起きてー ここは公共の道端だよ」

藤田父「おっとっと。たかしのは、お休みなんだねぇ。でも自宅に明かりがついているじゃないの。と、いうことはだよ」


藤田「ピンポンしてくるー」

藤田父「いいと思うよぉ」


藤田「おーい しのちゃーん!」




その⑤ 【藤田です。】


♪ ピンポン


鷹史「あ、誰か来た?」

忍「出てくるよ――」


♪ ピンポンピンポンピンポンピンポーン (連打)


鷹史「Σえヤダ……絶対、藤田じゃん」

忍「うるさいよ藤田」


ツナ「Σギニャ!!」


鷹史「ああっ、ツナ……! 変な鳴き方したぜ、可哀想に」

忍「どうする。藤田のピンポンしつこいよ?」


鷹史「ダメッ・居留守・ゼッタイッ!」

忍「それより、ちょっと行って対処してく――」


鷹史「Σダメヤメロー! 出たら終わり、出たら終わりだから!!」


忍「だ、大丈夫だよそんな…… Σわ、ツナまで!?」


ツナ「Σニャア……!! ニャア……!!」


▼ ふたりに引っ付かれて懇願される、忍


鷹史「ほら見ろ、ツナまでこんな必死にお願いしてるじゃん!」

忍「わかりました……藤田は放置で;」


♪ ピンポーン ……ガララ


藤田「あ、開いてたー」

藤田父「本当だねぇ~」

藤田「では。お邪魔しまーす!」


▼ 篠塚家、玄関の鍵はかけない派


鷹史「あ~しくった、まじ痛恨すぎるミス」

忍「まあ、田舎だから……無用心だけどね」


藤田「わーい。しのちゃんちクリスマスだー」

藤田父「やぁこんばんわ。お招きどうもありがとうねぇ」


▼ どたどたどた by藤田家


鷹史「Σちょ、勝手にあがり込むなーッ! つかお前ら藤田ども、ツケを払うまで出禁だつったろッ!」


忍「まあまあ」

鷹史「とくに藤田父、しれっと入ってくんな、招いてねぇぇぇえええッ!」


▼ 荒ぶる鷹史


藤田「しのちゃん、鷹史くん、クリスマスおめでとお!」

藤田父「篠塚く~ん、お腹ぺこぺこなの。休業は、やめよう」


鷹史「ねぇ貼り紙読んだ? ……日本語わかる? ……なんなのこの、藤田ども」

忍「そうだ藤田、イチゴがあるよ」


藤田「わーい、イチゴだー。ありがとお!」

藤田父「イチゴいいと思うよぉ~パパにもちょうだいね」

藤田「いいよー」


鷹史「Σダメだーッ! それ忍のだから、返せちょ、返してください……しかもお高いんだからソレ!」

忍「わぁこどもが喜んでる……本当だったんだ、イチゴ・アガる説」


藤田「イチゴ? イチゴは嬉しいよ?」

藤田父「イチゴはそうだよねぇ~うちでも滅多にお目にかかれないよねぇ」


藤田「あ。ツナだー」


逃げ足のツナ「Σ!!!!」


▼ ふじた、ツナ発見


藤田家の襲来に、こっそりと逃げ出そうとしていたツナは固まった。

からの、ふじたダッシュ(走行)・スプリング(跳躍)・ローリング(前転)・ホールド(ツナ抱っこ)!



ツナ「 」



藤田「ツナー大好きだよ。僕にしときなよー……(すりすり)」

忍「……ツナが窒息するからやめてあげて、ふじた」


藤田「僕はきみを、あきらめないよ」

忍「……ツナの方がこの状況を諦めたみたい」


鷹史「ちょ、ツナぁ! そんな簡単に抱かせてんじゃねぇよ、俺だってナイのにズルイ」


藤田父「相変わらず大きなタヌキだぁ……、だっけね?」

鷹史「Σツナはタヌキじゃありません、メークインだから!!」


忍「違う。メークインは、芋だよ」

鷹史「あれ?」


忍「メインクーンだから」

藤田「すごいよーあったかい、やわらか、ほかほかー」


忍「ちょっと……芋みたいだけど」


鷹史「芋……あ。手っ取り早く、フライドポテトでも作ろっか」


藤田親子「やったー! わーい!」


鷹史「フーン藤田どもは芋で腹を膨らませて、とっとと帰りな。……タカシまじ策士」

忍「うちって、なんだかんだ言って、藤田に食べさせてあげてるよね」


鷹史「あとでキッチリ請求するッ!」

忍「本当ですか?」

鷹史「タ……タカシがんばる」




その⑥ 【おまたせ鷹史の、クリスマスSPディナー✧】


鷹史「……なのですが。スペース空けてくれます? 全員着席のハウス!」


藤田「ねこー。もふりこもふりこ(猫吸い)」

藤田父「はじめちゃんは、大の猫好きなのに、藤田家で飼えなくてすまないねぇ。でもねぇ、篠塚くん家にはいつでもいるから、いつでも遊びに来れるからねぇ、それでいいよねぇ~」


鷹史「いや、ダメ。断固拒否する!」


疲れ果てたツナ「にゃ……」


鷹史「まあ、とにかくお前らメシを食え!」



<本日限定! タカシの★おこさまコース+おつまみ>


ツナたまごサラダ(こどもが大好きとろけるチーズマヨソース)、フライドポテト、鶏もも肉のフライドチキン、合鴨ロース、すばらしい蟹、ホタテソテー、冬野菜と海老のテリーヌ、生ハム・チーズの盛り合わせ、小鉢(きんぴら、かぼちゃ煮、ひじき)、ブイヨンスープ、辛くないペペロンチーノ・パスタ。

食後のおまけ・苺と生クリームのホールケーキ(スポンジはちょっとコゲました)、ねこりんご。



忍「うわぁ、すごい! 洋食だ……珍しい」

鷹史「うん、うん、忍のためにがんばっちゃった!」


藤田「こども大喜び!」

藤田父「篠塚くんは優しいよねぇ」


鷹史「ついでに、ほらよ。化け物じみた胃袋をもつ藤田ども、まずはこれ食って、満腹にしとけ」


▼ 追加で『猫旗つきのオムライス』


忍「おむ……(そっちがいいな)」




その⑦ 【その頃、外ではたかしの常連客が悶々としてました】


常連・鬼頭「自宅の玄関戸が開いたままだが、誘ってんのか鷹史の野郎?」

常連・厳蔵「はい? 先輩の頭、沸いてるんです?」

常連・鬼頭「何?」

常連・厳蔵「世間じゃクリスマスですから。さすがの先輩も、聖夜の虚しい幻想をみたんじゃないかっていう心配ですよ」

常連・鬼頭「虚しいゴリラのその口から聖夜とは、かがり町もだいぶ病んでるな」

常連・厳蔵「鬼頭医院で診てもらうんで、大丈夫でしょう」

常連・鬼頭「オイ。鬼頭医院は、人間様専用だ」

常連・厳蔵「そんなわけで先輩。そろそろ退いちゃあくれませんかね」

常連・鬼頭「奇遇だな、俺も『退けやゴンゾー』って、ドタマに来てたわ」

常連・厳蔵「聖夜に1on1で、決着つけましょうか」


玄関見にきた鷹史「ちょっと。なにやってんですか、そこの中年ども」


鬼頭「よぉ、鷹史」

厳蔵「こんばんは。鷹史さん」


鷹史「喧嘩?」


鬼頭「違う」

厳蔵「違います」


鷹史「うち、今日はお休み頂いてるんですよ。おじさんたち迷惑だから、帰ってね」


鬼頭「いいから店、開けろや」

厳蔵「うっわ、我儘な中年め」

鬼頭「ア?」

厳蔵「たかしの、本当にお休みですか? ここら一帯にうまそうな料理の匂いが漂っているんですけれど……」


鷹史「何……? おじさんら腹減ってんの?」


鬼頭「そこそこ」

厳蔵「減ってます、とても!」


鷹史「んー。ガキどもの残りで良ければ、……食ってく?」


鬼頭「幾ら?」

厳蔵「払います!」


鷹史「いいよ、別に。ただし、うちの子ら怖がらせないで下さいよ……?」


厳蔵「Σもっ、勿論です…! 厳蔵感動の極みッ!!」

鬼頭「Σギャア! デカい図体で押すなやゴリラ。で、何……忍の友達でも来てんの?」


鷹史「はい、まあ…………、藤田が」


鬼頭・厳蔵「なんだ藤田か。じゃあ問題ない」




その⑧ 【藤田父はふわふわしてる】


藤田「あれ、父さーん! どっか行っちゃったー」

忍「藤田、そろそろツナを放してあげ――


藤田「うちの父さんがこつぜんと消えちゃったから今夜はしのちゃんち、泊まっていいかなー?」

忍「あ、いいよ」

藤田「わーい」


ツナ「……にゃあ」


藤田「ツナがね、『……しのぶ』って求めてる」

忍「そうなんだ。でも今夜は藤田にまかせるよ」

藤田「おっけー」


ツナ「……にゃ」


▼ どうしても、猫は人間の言葉が喋れない




その⑨ 【だんだんご近所のクリスマス会になっていく】


鷹史「ごめん、近所のおじさんたちも一緒に、ご飯食べたいって~」


鬼頭「よお」

厳蔵「こんばんは、メリークリスマス?(照)」


忍「あ、鬼頭先生!」

藤田「と、あとなんだっけ、なにかのひとー」


鬼頭「おい藤田のせがれ、猫が窒息しそうだ。今すぐ放せや」

厳蔵「……近所の高校の先生だよ。君らも来年受験するんじゃないかな?」


忍「あ、かがり高校の! 厳蔵さんって、先生だったんだ」

藤田「うーん 僕、偏差値ぎりぎりっぽいんだよねー」


鷹史「Σおまっ 藤田、ガリコーで偏差値ぎりぎりってやばくね?」


鬼頭「おい、忘れてんのか鷹史。俺とゴンゾーはかがり高校OBだ」

厳蔵「いいから死ぬ気で勉強しろよ」


鷹史「いいから! ねぇ、はやく俺のメシ食ってくんない? せっかくのスペシャルが、冷めちまう!」


鬼頭「すまん……Σって、何! 洋食だと⁉」

厳蔵「鷹史さんが、洋食を⁉」


鷹史「カチーン。俺だって、エビフライとか、ハンバーグとか、あとなんだ、グラタンとか作るわ!」


忍「え……?(ハンバーグは、ない)」

藤田「なんか喋ってると、おなか空いちゃうよね、もう一回食べよー」


鷹史「Σてか藤田さ、遠慮とかないの……?」


鬼頭「藤田だな」

厳蔵「藤田ですねー」

鷹史「やっぱ藤田は、息子も藤田か……」


藤田「エヘヘ」


鷹史・鬼頭・厳蔵「藤田を、褒めてない」




その⑩ 【そろそろ大人の時間かな?】


鷹史「はい~、座った座った!」


鬼頭「よお、猫。元気にしてるか?」

ツナ「にゃあ♡」


鬼頭「しかし急激にデカくなった…」

気にしてるツナ「にゃ……」


厳蔵「あの鷹史さん、酒飲みます? 俺、焼酎持ってきました!」

鷹史「え~、今日はみんなで……酔っちゃう?」


忍「あ……」


▼ なんとなく、大人の雰囲気を感じとる、忍。


忍「……」



忍に背を向けている鷹史は楽しそうだ――

こどもの相手をしてるよりも、楽しそうだと思う――



忍「……」


忍「……(賑やか、だな)」


鷹史「忍、うるさくなっちまって、ごめん!」

忍「大丈夫です(……たぶん、大丈夫です)」


鷹史「来年こそは、ふたりっきりで過・ご・そ★ なんつって!」

忍「考えておきます」


鷹史「Σえ!」


藤田「ねえねえ。ごはんもうないよ。おかわりちょうだいー」


鷹史「Σえ⁉ 藤田……ウソ、えっ!?」


忍「出してくるよ、ちょっと待ってて……」

忍「あ、大丈夫……」

忍「ひとりで大丈夫だから……」



そう言いながら忍は、自室へはけてしまった――

忍の布団の傍にはさりげなく、鷹史からのクリスマス・プレゼントが置かれていた。



忍「いいのに……」



今が幸せだから、いいのに。

まだ平和。

忍が、あの古いアルバムの……鷹史の写真を見つけたのは、ちょうどこの頃。


ちょうどこの頃、だったと思う――。




 篠塚家のクリスマス・了

 

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