第1章 家政婦を頼んだら執事が来ました

1-1 次期王は黒猫がお好み!?~ペットは甘く愛される~

……これは夢?

私は夢を見ているの?


アメリーンはいまだに、自分自身が聞いた言葉が信じられずにいた。


「アメリーン?

返事は?」


「えっ、あっ、はい!」


黙っているアメリーンにエリオットは不思議そうだが、現実感がまるでない。


――まさか、しがない下級貴族の娘である自分が、次期王であるエリオットに求婚されるなど。


「その。

……誰かとお間違えでは?」


曖昧に笑ってその場をごまかそうと試みる。

が、エリオットはその口から深いため息を落とし、立ち上がった。


「どれだけ僕が、君に愛を囁いてきたと思っている?」


ずっと自分の黒髪と黒い瞳が珍しいから、ペット代わりに傍に置いているのだと思っていた。

そうでも思わないと、自分の気持ちに――エリオットが好きだという自分の気持ちに押し潰されてしまいそうだったから。


「で、でも私は、ウェイド家の人間で……」


「それがなにか、関係あるのか?」


はっ、あきれたようにエリオットが短く笑う。


けれど関係は大ありだ。


貴族とは名ばかりの貧乏で、アメリーンを売るようなウェイド家の人間が王族、しかも次期王となど結婚できるはずがない。


「そもそも君はソーク卿に養子に出されたのだから、もうウェイド家の人間ではない」


そんなもの、詭弁でしかない。

確かに城に献上品として上がる際、家格を上げるために買い主であるソーク卿の養子に入った。

しかしどんなに身分を取り繕おうと自分はここでは――奴隷も一緒なのだ。


「で、でも、私は――」


「さっきからつべこべうるさいな!」


ぐいっとエリオットの手がアメリーンの腰を抱き寄せる。

そのまま右手がアメリーンのあごを持ち上げた。


「返事はどちらかだ。

……YESか、NOか」


じっと、アクアマリンの瞳が自分を見ている。

からからに渇いた喉につばをごくりと飲み込み、アメリーンは口を開いた。


「……YES、です

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