闇医者の長い一日……「ホテル・アルテミス ~犯罪者専門闇病院~」

 ――近未来のロサンゼルス。市民の暴動が頻発し治安悪化と警察重武装化が進んだ世界。ロスの裏社会では伝説となっている会員制の闇病院「ホテル・アルテミス」は厳格なルールの元で運営され、女医のジーンと助手のエヴェレストが切り盛りしていた。ある日、負傷した銀行強盗を入院させたその日に厳格な規則が破られてしまう。状況が刻一刻と悪化する中、ジーンはこの騒動で自分の過去に纏わる真実を知る事になり――


 ジョディ・フォスターが久々に主演を務めたクライム・サスペンス映画。日本ではビデオスルーとなった作品だ。昨今の「ジョン・ウィック」シリーズに代表されるような「ルール」「掟」の設定がバリバリ前押しされる作品であり、作品一番のポイントはそこに集約されている。


 舞台が近未来なだけあって、独特の雰囲気が漂うのが面白い所。3Dプリンターや小型レーザーメスと言った医療ガジェットが登場・活躍したり、民衆による暴動が多発している治安最悪な近未来のロサンゼルスが描かれている。2020年6月現在で現実世界のアメリカも大体こんな感じになっているのだから今見るとかなりのリアリズムを帯びているのが皮肉か。


 キャラクターもそこそこ良い。キャラが立っている者が多く、正味90分ちょいぐらいの尺にしては濃いめな登場人物が多い。プロっぽい銀行強盗の兄ちゃん、密命を帯びて病院に潜入した女殺し屋、傲慢で終始うるせえ武器商人、医療従事者には到底見えない屈強な助手、広場恐怖症とトラウマを持ちながら犯罪者の治療に奔走する闇医者、そしてこの医院の開設を行った裏社会のボスなど、面白い役回りのキャラが多い。

 キャストも豪華で、主人公の医師にはジョディ・フォスター。他にもジェフ・ゴールドブラム、スターリング・K・ブラウン(ザ・プレデターのショボい奴)、デイブ・バウティスタなど濃い面子が揃っている。


 ただ、脚本はややとっ散らかり気味で全体的に粗っぽいのが残念か。それでもキャストの豪華さやキャラの濃さ、それと世界観で魅せてくれるので割と楽しめる一本だろう。大規模な肉弾戦シーンや、格闘戦などのアクション場面も満載だ。

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