ゾンビコメディ映画の金字塔……「ショーン・オブ・ザ・デッド」
――家電量販店の店員で、うだつのあがらない青年のショーンは自堕落な無職の親友エドと共にルームシェアをしながら日々を過ごしていたが、恋人のリズにふられた事が切っ掛けで意気消沈。エドに慰められ失恋から一夜明けると、世界はゾンビが蔓延る危険地帯と化していた。家族を守るため、元恋人を守るために奮闘するショーンであったが、ゾンビ達の魔の手は容赦なく彼らへと襲い掛かる――
エドガー・ライト監督、サイモン・ペグ、ニック・フロスト主演の「コルネット(日本で言うジャイアントコーンみたいなアイスクリーム、全作共通で登場する)三部作」の第一作目にして、ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」に対するラブレターとも言うべきゾンビ愛溢れるコメディ映画だ。
流れるようなテンポのよい編集と、短いカットを立て続けざまに繋げるエドガー・ライト独特の作風が光っており、サイモン・ペグとニック・フロストを一躍スターへと押し上げた意味でもすごい作品である。この監督と俳優のトリオ三部作は本当に外れが無い。
前半はショーン青年の自堕落な日々と失恋を描き、中盤からはゾンビ発生による大混乱、終盤はゾンビとの息詰まる死闘を描かれている。コメディ映画なので、ゾンビ発生後にショーンとエドのバカ2人が「やっべゾンビだどうしよう」と右往左往する展開も面白いし、日常にゾンビが侵食しつつある光景を華麗にスルーしたり、元恋人や家族を救うための行き当たりばったりな救出作戦を展開していく下りなども良い。
何より登場人物が生き生きとしているのも面白い。本当にそのへんに居そうなダメ青年と、どうしようもないアホ無職のデブというコンビ物であるので、主役2人の掛け合いや関係性の良さも光るし、個性的な女友達、老けたハリー・ポッターみたいな友人、気の強い恋人のリズ、ショーンの母や頑固者の義父などバリバリと個性が光るキャラクターたちを楽しめる。
ただし、単なるゾンビコメディで終わらないのが今作。キャラクターの掛け合いで楽しませてくれた後にハンマーでぶん殴られるようにキツい展開がクライマックスにつるべ撃ちされていく。
ゾンビは出てくるし笑いもあるが、世界はとにかく残酷だという現実を終盤に遠慮なく突き付けてくるのだ。キャラクターたちがまた一人また一人と欠けていき、ついにショーンは絶望の淵で、とある選択を迫られる。
ショーンとエドの友情に、思わず涙する事請け合いだろうし、エンディングの展開にはしっかり笑わせつつもほろりと来る光景が待っている。
素晴らしき哉、ゾンビ愛!
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