スーパーお巡りさん無双……「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン」

 ――ロンドン警視庁の敏腕警官のエンジェルは、市民の安全をバリバリ守っていたが、その活躍を妬み、煩わしく思っていた同僚や上司に裏切られド田舎の警察署に左遷させてしまう。犯罪と無縁の田舎町で、失意のエンジェルはダメ警官のダニーとコンビを組みながら日々を過ごしていたが、やがて村で発生する奇妙な連続事故が殺人事件であると見抜く。真相を追うエンジェルは驚愕の事実に突き当たる――


 エドガー・ライト、サイモン・ペグ、ニック・フロストのトリオが送る「コルネット三部作」の2作目。三部作ではあるが、主要キャストとスタッフが同じだけの今作ではポリスアクションコメディとなっている。前作でダメな若者2人だったサイモン・ペグとニック・フロストが、堅物エリート警官と惰性で働いてるダメ警官という対照的なコンビを演じている。


 主人公のエンジェルは書類仕事、パトロール、犯人逮捕、犯罪捜査をなんでもこなせる完全無欠のお巡りさんだが、あまりにも真面目で仕事に熱中しすぎて同僚や上司の恨みを買い(左遷告知シーンが一周回って笑えない)全てを失い田舎へと左遷される。当然、左遷先は平和そのもので事件らしい事件もなく退屈な上に、あてがわれた相棒は「親が警官だったから」という理由で警官になったダメ人間のダニーである。

 当然、ダニーとの関係は当初ギクシャクしてたが、水と油なコンビと見せかけ、エンジェルの警官としての真摯な姿勢と仕事ぶりを見てダニーは成長しようとするし、エンジェルは田舎のスローな暮らしと平和な環境に慣れてダニーと過ごすうちに「息抜き」を覚えるようになる。

 この対比的な2人が徐々にコンビとして活躍していく様はまさにバディムービーであるし、それ故にクライマックスの2人が大暴れして事件を解決していく展開は胸がすくような気持ちになる。コメディではあるが、根は真面目なポリスアクションだ。


 また、一見して事件など起きないような平和な村で、得体のしれない黒幕が「事故に見せかけた殺人」を繰り返しているあたりはサイコスリラー感があるし、ある種のどんでん返しが用意されているのも面白い。

 しかし、この映画の良い所(変わってる所)は、主人公たちは決して「殺人」をしようとしない。黒幕と対峙する終盤では、相手の急所を外して銃を撃ったり、殴ったりして無力化して極力、逮捕をしようとする姿勢に徹するし、単に悪党を皆殺しにして終わらない清涼感がある。彼らは悪人を逮捕する事が目的の警察官なのだ。

 そのへんの姿勢の面白さも映画の魅力の一つだろう。

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