プレデター新作、今度はお祭りだ!……「ザ・プレデター」

 ――銀河を又にかけ獲物狩りを娯楽とする宇宙人、プレデターがまたも地球へと飛来し、作戦中に偶然プレデターと遭遇し、彼らの装備を奪った兵士のクインは、プレデターに殺された同僚の戦死の罪を擦り付けられ、政府は隠蔽を決める。そんな中、研究施設から捕らえられていたプレデターが脱走、その目的はクインが自分の息子に送ったプレデターの装備だった。護送中に脱走を図ったクインは逃亡兵の仲間と共に息子を守るため、プレデターに戦いを挑む――


 プレデターシリーズ最新作。監督は「プレデター」で猥談してたらプレデターに惨殺されたメガネの兵士役として出演した脚本家・映画監督のシェーン・ブラック。脚本は彼と共に娯楽モンスター映画の傑作と名高い「ドラキュリアン」で有名なフレッド・デッカーが担当している。


 はじめに映画の内容について説明すると「一体どこのどいつが脚本担当したんだよ!監督とフレッド!てめぇか!!!」と叫びたくなるぐらい内容はとっ散らかっている。プレデターというキャラクターの新たな一面を描き、そこへ親子の絆と、負け犬だった男たちの再起をかけた戦いが描かれるが、細かい部分で設定の荒さが目立ったり、話の流れが強引すぎたりと気になる点が多いし、プレデターというキャラクターにかなり踏み込んだ作品故にシリーズのファンには割と拒否反応を示す人も多いかもしれないだろう。実際、評価はかなり割れている。


 ただ、過去作のプレデター3作(AVPは1しか見てないので除外する)と比較すると毛色がかなり違う作風であり、それがピカピカに光る作品だ。

 主人公は凄腕には違いないが奥さんと別居中でスケープゴートにされて収監待ちの兵士であり、息子が心の支えという変化球なキャラになっているし、プレデターを追うチームも「一緒に脱走してきた犯罪を犯したイカれ軍人たち」というボンクラを煮詰めに煮詰めたような連中がそろっている。多分、今までのプレデター作品だったら間違いなくプレデターに殺されるシーンすら描かれないだろう。

 しかし、プレデターに遭遇し、主人公の家庭と地球に危機が迫っていると知った彼らは奮起してプレデター狩りに参加する。軽口やジョークを叩き合いながら兵士としての本分を取り戻していく彼らの奮闘にいつしか心を掴まれていたし、「こいつらバカだけど死んでほしくないな……」と後半には思えてくるから凄い。


 また、負け犬軍人たちの再起の物語と同時に、主人公の息子が未知との遭遇を果たすパートも面白い。主人公の息子はサヴァン症候群で、常人とは違う性格と頭脳の持ち主であるが、学校でいじめられていたどん詰まりの生活の中で、突如手にしたプレデターの装備で日常を一変させる世界へ向かっていく……という筋書きで、血なまぐさい狩猟民族との嬉しくない出会いながらも、その流れはいかにもジュブナイルSFのようで見ていてワクワクするだろう。


 しかし、肝心のプレデターに関してはキャラクター造詣に愛着を持っている人には受け入れ辛いのでは、という印象を受ける。バリバリ喋るし、プレデター視点のシーンで「字幕」が入ったりと、大幅な味付けがなされているだけあり、旧作ファンには物足りないだろうし、特にちいさいプレデター(でかい)の行動原理に関しては脚本ちゃんと作ったのかと言わんばかりのブレがある。何がしたいんだキミは。


 しかし、考えてみればシェーン・ブラックのフィルモグラフィーを見ると「ザ・プレデター」は彼なりの流儀で作ったプレデターシリーズの作品である。「アイアンマン3」や「ナイスガイズ!」もそうだったが「楽しまなくちゃ!だろう?」というワクワクする展開を大盛り牛丼ばりに持って来る男がシェーン・ブラックという男なのだ。1作目に少し関わる程度だった彼が長い月日を経て、ようやくプレデターシリーズでドッカンドッカン盛り上がるバトル盛り人間ドラマ盛り新機軸モリモリのプレデターを作ったというだけでも、俺は最高の作品だろうと思う。

 あまり深くネタバレしたくないが、ラストシーンに関してはまんま「アイアンマン」だなと思ったし、シェーン・ブラック監督による続編が出たら間違いなく見に行きたくなるだろう、絶対見に行くわ。

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