第66話
「解っていただけましたか?」
「あぁ。つまりお前は、超能力者兼ヒーロー兼誘拐犯だったんだな」
「…あ、誘拐犯の肩書は消えないんですね」
当たり前だろ、善行を積んだところで悪行は帳消しにならないんだよ。世界を救うのが+95ポイントだとすると、みくるさんを誘拐しようとするのは−97ポイントでプラマイゼロで俺に中でのお前の好感度はかろうじて平均値だ。
「そうですか。困ったものです」
小泉はあまり困ったふうでもなくそういった。
「まぁ実際のところ予測の範囲内ですからね。僕らが出遅れてしまったことで、未来人サイドにここまで差をつけられてしまったのは痛恨の極みですが、それでも大幅に悪化した僕に対する好感度を平均値まで戻せたわけですから良しとしましょう」
聞いてもいないのに説明してくれてありがとうよ。けどその通りで、これ以上みくるさんにちょっかいを出さないなら俺だってお前に悪感情を持つつもりはない。
「話が早くて助かります。これでこちらの面目も立つというものです。未来人だけではなく、TFEIサイドにまで遅れを取ってしまうと僕も上に怒られてしまいますので」
ですが、と小泉は顔をぐいっと近づけてきた。真面目な声を出すな、息を吹きかけるな、顔が近いんだよ。あとTFEIってなんだ。
「何も彼女たちを裏切るように言っているわけではありません。ただ、彼女たちと僕らの利害が食い違うときに、ほんのちょっとばかり、あなたには僕らの方を向いていただけるようお願いしたい」
「なるほどね。だが断る」
小泉たちがやっていることが世界のためっていうのは分かる。分かるが、だからといって俺がみくるさんの対面に立っているとは考えられない。たぶんみくるさんと一緒にどうしよっかなぁとウンウン悩んでいることだろう。そして朝倉委員長に助けてもらうような気がする。
「そうですか、残念です。ではあなたのために用意したお金は市民大学にでも寄付しましょうか」
「…何の話?」
「さきほどのように、我々機関のメンバーは神人…あぁ、神人とは先程の白いモノの呼び名ですね、その神人を倒す能力を持った者たちのことです。ですが、それとは別に協力者もいます。ある程度の理由を話して、条件付きで協力してもらっているんですよ。有償でね」
「……額は?」
小泉は制服の内ポケットから電卓を取り出すとピッピッと数字を打ち込んで見せてきた。
「小泉………いや、なんでもない」
抱きしめながら3000回愛してると言いそうになるのを我慢して、俺は回答を保留して自宅に到着するまで黙りこんだ。
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