白ノ王女 黒ノ姫
翡翠
第1話
お父様へ
ご機嫌いかがでしょうか?
お父様と話したい
私は静かに暮らしています
春ですね
白の国の国民は、春祭りも間近にせまり、浮き足立っています。
みなさん楽しそう。
でも…耐えられません。
お父様が話してくれたことについてもっと聞きたい。
どうしたらいいのかわからないの
助けて
『help me』
と書き、ふっと吐息をついて筆を置く。
「王女さま、また書いていらっしゃるのですか。お父様のことを大切にされているのですね。」
世話係がにこやかな顔で言って、少し首を傾げた。
「すみません、悲しい気持ちにさせてしまったでしょうか?」
世話係の少し間を置いたような言葉に、またため息をつきたくなるのを堪えて、首を振る。
「大丈夫。ただ…ちょっと一人にさせてくれる?」
「承知いたしました。」
バタン、と戸が閉まる音を聞いてから、手紙に向き直る。
誰に出すでもない手紙
『お父様』はもういない。
今となってわかった。たった一人の信頼できる人。
私は『白の国』の王女だ。
『白の国』は世界で最も純真な天使のような国民が集まっている国。
何もかもが幸せで埋め尽くされていて、誰もが憧れる、まるで天国のような国。
選ばれた人だけが国民になれる。血筋は関係ない。『ふさわしい』と認められた人だけが入られる。
…と聞かされてきた。
私はこの国が好きだ。いや、好きだった。
お父様が亡くなる間際、私に言った言葉
『白の国民は、狂ってしまった。心に『優しさ』が微塵もない。』
『優しさ』
そういえば、それを私はこの国で感じたことがなかった。
白ノ王女 黒ノ姫 翡翠 @7hisui7
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