クエスト2-11 試練

 



 洞窟を抜けた先は草原がなだらかな上り坂と共に広がっており、その先に古びた塔がぽつりと存在している。



 ……まあそれはいいんだけど周囲崖なんでちょっと怖いです。落ちたら海へ真っ逆さまだし。




「あれが風の塔……見た目は古びた普通の塔だが……」

「外見は普通の建物でも、中が異次元に繋がってるダンジョンも存在する、と聞いたことがあります。気をつけてください」



 えっなにそれこわい。






 塔の前まで来たが、やっぱり見た目は普通の塔だ。

 ピスのバイタルサーチには何も引っかからないし、生物の影もあまり無い。聞こえてくるのは波の音くらい。

 静けさがかえって不気味かも。




 3人で力を合わせて、扉を開ける。


「よし、いくぞ」

「うん」

「はい」



「「「せーのっ!!」」」



 分厚く重い扉は、軋んだ音を立てながら少しずつ開く。



「異次元……ではないようだな」

「み……みたいですね」

「デスデス」

「ねー」


 塔の中は薄暗く、螺旋階段が内部の壁に沿って続いている。

 中央には大きな柱。



「うおっ!?」

「ひゃぁ!?」



 階段を一歩踏み出すと、急に階段の近くにあった燭台に火がつくものだから思わず声が出ちまった。

 階段には真っ赤な長い絨毯が敷いてあるし、序盤のダンジョンの割にラスダンじみた雰囲気がありすぎる。



  「見透す眼よ! バイタルサーチ! ……むむむ、これは……どうなってるデス?」

「どうした?」

「反応がありますデスが……微弱すぎてよく分からないデス……」


 うぉい、なんだそりゃ。

 うーむ、こういう時はどうするか……



「こういう時は警戒して進もう。フィン、プロテクションを頼む。トルカもいつでも魔法を撃てるようにしておいてくれ」

「うん」

「は、はい。偉大なる力の神よ、か弱き我らをお守りください! プロテクション!」



 フィンが唱えると、各自に薄緑のバリアが張られる。




「よし、行こう」



 俺達がさらに足を踏み出した瞬間、



「うぎゃあ! 反応がいきなり活性化したデス!?」



 ピスの絶叫と同時に、あちこちからけたたましいサイレンと赤い光が現れ、一瞬の間を置いてあちこちからレーザーが放たれる。





「いきなりかよ!?」

「こ、これはサーチアイ!?」

「唸れ炎よ! ファイア!」

「サーチアイって何!?」

「拠点防衛に使われる魔法生物の一種です! 侵入者の魔力を察知するとこんな風に……」

「シンヤ! こいつ、魔法効かない!」

「皆一旦下がれ! ピス! 階段の天井付近に向けてフラッシュだ!」

「がってんデス!」





 魔力を察知して行動なら、魔力の無い俺はおそらく察知できないはず。

 現にトルカ達が退避した今、サーチアイは持ち場に戻っている。





 後はフラッシュで居場所を割り出してスリングショットで狙い撃てば……!




「光よ、我らを隠す外套となれ! フラッシュ!」





 閃光が放たれ、周囲が一瞬昼のように照らされる。

 数は1、2、3、4、5……よし、とりあえずポイントは抑えた! 洞窟に比べりゃまだ見えるから場所さえ抑えれば多分当たる!





「はっ!」





 石を飛ばす風切り音の少し後に、金属が凹むような音と共に何かが落ちる。

 振り向くと、いつの間にかトルカが明かりのついた松明を持ち、フィンがサーチアイを解体していた。




「シンヤさん、お見事です。こちらに転がしていただければ、後は何とかしますので……」

「分かった、頼む。トルカ、松明ちょっと貸してくれ」

「うん」





 松明から火をもらったランタンで足元を照らし、位置を割り出したサーチアイを次々に狙撃して落としていく。

 サーチアイは魔法防御は極めて高いようだが、その代償からか物理攻撃にはかなり弱い。なんせ俺の狙撃でも一撃で倒せるくらいだからな。

 あと外してもバレない。監視用なら音探知くらい付けろとは思う。付けられると困るけど。


 やる事が勇者ではなく斥候のそれだが、活躍らしい活躍が出来ているので何だか気合いが入る。





「とりあえずこれで割り出した位置は全部か……」





 今までの配置から考慮すると、等間隔に設置された燭台の真上に、左右交互にサーチアイが配置されているようだ。

 1体目は右の燭台の真上、次は左、その次は右……ということは……



「多分ここに……!」



 6つ目の左側の燭台の真上を狙って石を放つと、サーチアイが落ちてきた。



「ビンゴ!」



 一旦下に戻り、皆と合流する。



「サーチアイの配置は分かった。俺が先行して始末するから、後から付いてきてくれ。いざという時は援護を頼む」

「うん」

「分かりました」




 サーチアイの配置規則は登ってもそのままだったので、退治が捗ること捗ること。

 これでレベルも上がってくれればいいのだが……






 ……………………





 ………………






 サーチアイを全て蹴散らして階段を登り、門のごとき大きな扉の前に着いた。



 全員で扉を押し開け、中に入る。





「ほう、何やら騒がしいかと思えば……また客人か。数ヶ月前に来た奴といい、最近はまた訪問者が増えたな」



 目の前には、骨で出来た玉座に座り、全身を黒と緑のローブに身を包み、後頭部に角を生やした骸骨がいた。

 よく見ると口元は骸骨のような金属製のごついマスクで隠してある。ファッション?



「お前、いやあなたが……風の大精霊……なの……ですか?」

「いかにも。我こそは風の大精霊であり、6,000年前の魔王でもある、不死の魔族。我が名は……フォリウム。ヒトガタよ、鬱陶しいからその固い口調をやめろ」


 フォリウムの目が緑色に発光する。

 この雰囲気は確かに魔王だ。


「して、客人よ。何故こんな寂れた塔にわざわざ参られた?」

「魔王を退けるために、力を貸してほしい」

「ほう、勇者とやらか……いいだろう。悪くない退屈しのぎだ」



 あれ、あっさり終わるフラグ?



「ただし……我が2つの試練をこなせたらだがな! 出でよ、我が眷属!」

「やっぱりそういうパターンかよ畜生!」



 フォリウムは高らかに声を上げると、指を鳴らす。


 直後、真後ろに何かが落ち、轟音と共に土煙が舞い上がる。


 巨大な図体、人型、土で出来た身体……


 ファンタジーの定番モンスターのひとつ、ゴーレム!




「なに、殺しはせぬ。存分にやるがよい。そして我を楽しませよ」


 フォリウムはいつの間にか椅子ごと宙に浮いていた。

 こいつ……



「しょうがねぇ、やってやる! トルカ! フィン! ピス! 行くぞ!」

「うん」「はい!」「がってんデス!」



 ゴーレムは目測でざっと7mくらいの大きさで、こちらの出方を伺っているのか、立ったまま微動だにしない。


「ゴーレムは身体の外側のどこかにある、第二の核が弱点です。それを壊すか剥ぎ取れば、魔力循環が上手くいかずに性能が大きく落ちます」

「なるほど、じゃあトルカの魔法で一気に行こう」

「いえ、その、魔法で破壊するのは難しいかと……」

「むぐぐ…」



 魔法生物というだけあって、魔法への対策は充分ってことか。厄介だな……



「俺とピスが撹乱しつつ第二の核を探す。トルカは攻撃を防いでくれ。可能なら部位破壊を頼む。フィンはトルカの援護を」

「うん」「わ……分かりました」

「がって……えっボクもやるんデスか?」

「上から見れるのはお前だけだろ。頼んだぜ」

「が、がってんデス!」

「あ、待ってください! 偉大なる力の神よ、か弱き我らをお守りください! プロテクション!」


 フィンが各自に張ったプロテクションを張り直す。



「サンキュー!」「ありがとうございますデス!」



 俺とピスは二手に分かれてゴーレムの側面に回り、トルカは詠唱を始め、フィンはトルカの前方で大盾を構え、ガードウォールを唱える。







 ゴーレムの拳がフィンめがけて一直線に飛び、大きな音を立てる。



 攻撃はそれだけにとどまらず、土の巨人は障壁を破壊しようと、その巨大な拳を連続で打ち込む。





 フィンが心配だが、防御魔法を2つも使っているんだ、耐えられるはず。


 それよりも核だ、第二の核を探さなければ!



「どこだ……側面か? 後ろか? 腕、頭、足……どれも違う……」




 くそっ、どこだ……!?




「唸れ炎よ! ファイア!」




 火炎弾がゴーレムの拳を削り、





「砕け氷よ! ブリザー!」




 氷塊がゴーレムの体表を削る。







 トルカの魔法とゴーレムの殴打の音が響き渡る中、必死に視界を動かして第二の核を探す。




 トルカの攻撃はゴーレムの攻撃を相殺し、体表を削り、妨害してはいるが、ゴーレムは御構い無しとばかりに攻撃を続けている。




「シンヤ様!!」



 ゴーレムは突如狙いを変え、地面を抉りつつ俺に向かって薙ぎ払うように拳を振るってきた。




 反射的に跳躍して凌ぐも、高度が足りずプロテクションが破損しまう。



「くそっ!」




 ダメージは軽微で済んだが、身を守るバリアが無くなった今、次受けたら無事では済まない。





 ゴーレムが俺を見据え、左の拳を構える。




「皆様! 第二の核は背中にありますデス!」

「でかした!」




 ゴーレムに向かって走り、飛んでくる鉄拳を股を潜ってかわして背後に回り込む。



「あれか……」





 ゴーレムの背中の中心には、青く大きな宝石がくっついており、淡い光を放っている。


 ……魔法じゃ無理ってんならあれフィンじゃないと壊せないんじゃないのか?





「輝きの槍よ、我が敵を穿て! メガブリザー!」




 そう思った矢先に巨大な氷柱がゴーレムの右足から出現し、右足を削りつつ思いっきり押し上げる。




 バランスを崩したゴーレムはそのまま地響きと土埃をあげ、地面に倒れた。




「冷気の枷を受けよ! フロスト!」




 トルカは続けざまにフロストを放ち、起き上がろうとしたゴーレムを地面に固定する。






「好機!」




 ゴーレムの背中によじ登り、核めがけて剣を振り下ろす。





 が、





「かってぇ!」



 硬い音と共に剣は弾かれる。



「くそっ!」



 振りかぶって斬りつけても柄でぶん殴っても、宝石はビクともしない。


 やっぱりか! 得物のせいかもしれんが、俺の力じゃ擦り傷ひとつ付かねぇ! こんなことなら最初からメイスを装備するべきだったか?!




「シンヤさん!」

「フィン! 悪いが頼む!」

「お任せください!」



 事態を察知して駆けつけたフィンと入れ替わりになり、ゴーレムから飛び降りる。




 鎧を着ているとは思えない軽快な動きでゴーレムに飛び乗ったフィンは、剣を納めてハンドアックスを持ち、盾を背負う。



 そして深呼吸し、



「はあっ!」




 両手で持ったハンドアックスの一撃で砕き割った。


 宝石は光を失い、破片が宙を舞う。




 筋力100オーバーってすごい。改めてそう思った。






「トルカちゃん!」

「輝きの槍よ、我が敵を穿て! メガブリザー!」





 フィンが飛び降りたと同時に地面から突き出した氷柱は、見事ゴーレムの中心を貫く。





 声にならない声をあげ、ゴーレムは砕け散る氷柱と共に土の塊へと戻っていった。








「ほう、やるようだな。1つ目の試練は合格だ」



 フォリウムは座った状態で拍手しながら降りてくる。




「さて、2つ目の試練と参ろう。ディバイドフィールド!」



 フォリウムが立ち上がって地面に手をかざすと、フォリウムを起点にして俺の方へ光が線となって地面を走る。

 その線は俺の足元を少し過ぎた辺りで止まると2つに分かれ、さっきの直線を直径にした円状に光が走り、俺と奴を取り囲む。



 直後、そこを基点にしてドーム状にが展開され、空は黒く地面以外は何もなく、地面には緑の蛍光色でグリッドが引かれた、格ゲーのトレーニングステージの色を反転させたような空間に閉じ込められた。





「今度はタイマンか……!?」



 まずいぞ、戦いとなりゃ俺単体じゃどう考えても負け戦だ!




 剣を構えるが、フォリウムは微動だにしない。





「大精霊として、勇者たるお前の心の本質を知る必要がある。少々手荒になるが、許せよ」



 やっぱり戦闘か!



 剣を構えたと同時に、フォリウムは片手をこちらに向ける。







 次の瞬間、何かが抉れる音と同時に、視界がブラックアウトする。

 直後、両目に強烈な痛みと熱が襲いかかる。




「がああ、あああああああああ!!!!」




 痛い、痛い、痛い、熱い、熱い!!!

 め、目が、目が完全にやられた!!





「う、くそ、目が!!」

「もうひとつ」



 続けざまに同じ音がし、両耳に目と同じ激痛と熱が走る。





「ぐあああ、あああああああ!!! くそっ、今度は耳か!!」



 耳もやられた! くそっ、痛い、死ぬほど痛い!!


 耳の外から奥の奥までごっそり焦がしやがって!!




 当然のように聴覚は遮断され、無音と闇の世界へ放り込まれる。




「てめぇ……!」



 反論など聞こえるわけがなかった。



 両目と両耳にとんでもない激痛が走るが、それでも剣を取り落とさず、膝も着くまいと必死だった。


 バランス感覚がおかしくなり、足がふらつく。


 今の状況で戦える道理など微塵も存在しないし、地面に伏して目か耳を押さえたくて仕方がなかったが、それでも諦めるわけにはいかない。




「ぐあっ……ああああ!!」



 灰になるような痛みがまたしても襲う。




 今度は両足か! くっ……駄目だ、立てねぇ……足が……動かない……!




「はあ……はあ……はあ……」




 生きた心地がしない。


 自分がどうなっているかも分からない。



 動かせるのは両腕だけ。






 剣を地面に突き立て、立ち上がろうとしてもうまくいかない。





「くそっ……せめて……片方だけでも……動けば……」





 またしても走る激痛と熱。



 腕だ。


 手に力が入らない。





 ついに腕さえも動かなくなった。






 流石に、もう駄目かもしれない。





 見えない、聞こえない、動かない。

 へへっ、詰みの三拍子だ。






 いや、まだだ。




 足搔けるだけ足掻いてみせる。



 全部放り投げて諦めるのは、その……あ……と……








 ……………………





 ………………








「シンヤ!」

「シンヤ様!」

「シンヤさん!」




 3人の声。



「あ……れ……?」




 見える、聞こえる、動く。

 俺の周りには、いつしか皆が集まっていた。



「……シンヤ、大丈夫?」

「ああ、問題ない」



 立ち上がり、剣を収める。



「戻ったか。2つ目の試練も合格だ」

「……そうか。で? あれは何だったんだ?」

「言った通り、お前の心の本質を見た。ヒトガタの心は危機に瀕した時、本当の姿を現わす。まあ、貴様なら問題なかろう」

「死ぬほど痛かった割に元通りなのは?」

「機能を一時的に奪い、激痛を付加しただけだ。実際に傷など付いておらぬ」


 身体を確認してみると、どこにも傷らしい傷は見当たらないし、きっちり動く。


「さて、勇者よ。協力の証だ、こいつをくれてやる」



 フォリウムの手から光が生まれ、それは緑色に輝く宝石のついた指輪へと変わる。



「これは?」

「はめれば分かる」



 はめてみると、指輪の力とその使い方が一瞬で頭の中を駆け巡り、記憶に叩き込まれる。


 何十本ものビデオを早回しで見せられたような感覚だ。



「風の精霊剣だ、名前は好きに付けるといい。ひとたび顕現させれば風のように軽やかな動きを手に入れ、魔力の無い貴様でも風の魔法が扱える。刃は魔力で形成され、魔力を持たぬ防具はすり抜けて切り刻む」



 フォリウムの語る内容と脳内に流れてきた内容は一致している。

 起動の仕方は勇者の剣と同じ、剣の形はイメージによって変化する。初回起動には剣に名前を付けて叫ぶ必要がある、魔法を使う時にはイメージと魔法の名前がいる……とりあえず覚えることはこのくらいか。



「風の……精霊剣……」

「言ってしまえば誰でも使える剣だ。この剣を求めて塔に来た冒険者もいるが、最後まで使いこなした者は誰もいなかった。使いこなせば、唯一無二の存在になれるぞ」



 ……もしかして、とんでもなく厄介な武器を押し付けられた?

 激痛に見合わないトンチキ仕様だったら、泣いていい?



「では、我はサーチアイの再配備にでも行くとしよう。帰りの魔法陣はあっちだ、ではな」



 フォリウムはそう言うとワープ魔法か何かでどこかに行ってしまった。




「シンヤ様! おめでとうございますデス! 無事に大精霊様の力を借りる事に成功したデスね! これで残りはあと7人デス!」

「そうだな……色々世話になったな、ピス。感謝する」

「いえいえ、これくらいは当然デス!」


 そう言いつつ、ピスはどことなく嬉しそうだった。



 何がともあれ、目的は達成か。

 しかしあと7人ってのは中々長いな……



「ピス、次はどこだ?」

「はい、お次はサンドラールという砂漠の国でございますデス!」

「サンドラールへは、ここから西にある山脈の向こう側ですね」

「砂漠かぁ……」


 砂漠は温度差が激しいって聞くけど、大丈夫かなぁ。

 まあ、それは後で考えるとして、2人にもお礼を言わなければ。





 俺はトルカとフィンに向き直る。



「ピスもそうだが、ここまで来れたのもトルカとフィンがいてくれたからだ、ありがとう」

「うん。トルカ、これからも、頑張る」

「いえ、私はそんな大それた事は……」



 嬉しそうにするトルカと、謙遜するフィン。



「いや、プロテクション滅茶苦茶助かったよ」

「うん、助かった」

「そ、その……お役に立てたなら、良かったです」



 兜の中から表情は分からないが、フィンは照れ笑いしてそうな仕草を見せる。



「……フィン」

「は、はい、何でしょう?」

「その……もし良ければ、俺達と一緒に来てくれないかな」

「えっ?」

「さっきも言ったけど、すごく助かったし、仲間にいたら心強いな、って」

「おお! 強力な魔法を操るトルカ様に鉄壁のシアルフィア様が加われば、まさしく敵無しデスね!」


 回復と補助を使え、攻撃力も高い壁役。いらない理由はどこにもない。

 トルカもうんうん、と頷いている。


「えっと……その……わ、私なんて役に立ちませんよ? 今日は大丈夫でしたけど、盾役のくせに前に出るのが苦手ですし、魔物に怯えてばかりですし……」

「何言ってんだよタフなヒーラーってだけでも充分存在価値あるだろ」

「そ……そうですか?」

「俺はそう思う」

「……トルカも」



 フィンは暫し俯いた後、こちらを向く。



「あの……その、この件は一旦保留とさせてください。考える時間が欲しいのもありますが、貴族というのは何かとしがらみが多い身分で、私の一存では決められないのです」


 そうだった、フィンは貴族の令嬢だったな……。

 貴族がどんな感じかは分からないけど政略結婚とかあるだろうし、まあ……そうなるか。



「分かった。事が終われば領主様に報告する予定だし、その時でいいかな?」

「はい、分かりました。すみません、色々と……」

「いや、気にするな。俺も「何戯れてんださっさ帰れヒトガタどもめ!」



 キレたフォリウムによって俺達は強制的に外に放り出されました。


 すまんな。


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