リィンカーネーションクエスト -チート武器で成長率０倍-

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　ここはどこだ。

　何も見えない、聞こえない。

　俺は……死んだのか？

　ということは……トルカも？

「そうだよ」

「誰だ！？」

　女の子の声。

　聞き覚えはあるが、誰だか思い出せない。

　絶対知ってる。

「進也君は死んじゃったの。あのおチビちゃんと一緒に、化け物の餌になっちゃった。かわいそ〜」

「何だ、てめぇ……」

　ひとかけらもそう思っていなさそうな話し方。

　思い出したぞ。

　奴だ。

「あれ？　もしかして私の事忘れちゃった？　ひっどーい！」

「忘れるかよ……相澤……！！」

　突然俺の目の前がスポットライトで照らされ、相澤が現れる。

　一部をピンクに染めた茶髪を、兎の耳のようなリボンを用いてポニーテールにし、制服であるポロシャツの上にベージュのカーディガンを着た、中学校の時と同じ姿。

　挑発的なムカつく表情も当時のままだ。

　ふと俺の姿を確認してみると、どういう訳か俺の格好も中学校の時と同じになっていた。

「そうだよね〜、忘れるわけないもんね〜。私は進也君が絶対に勝てない、頭の上がらない存在だったもんね？」

　相澤きらら。

　俺の隣の家に住んでいた幼馴染であり、

　勉強、スポーツ、ゲーム等、ありとあらゆる分野で俺より圧倒的に秀でていた天才であり……

　俺の人生を狂わせた人間だ。

「お前が何故ここにいる」

「私が何でここにいるかなんて別にいいじゃん。私はただ……嘲笑いにきただけだよ、進也君の無様な姿を！」

　相澤は邪悪な笑顔を見せつける。

「格下だと思ってた奴に殺される気分はどう？　守りたい者を守れなかった気持ちはどう？　ねえ進也君、教えてよ！」

　こいつはいつもそうだった。

「教えてよ進也君！　敗北する気持ちってどんな気持ちなの！？　教えてよ、天才で、無敗の、この私にさあ！」

　テストで、スポーツで、ゲームで、そうやって俺を打ち負かしては、

「知りたいな〜、敗北を知りたいな〜、私もぉ、全力出して、敗北してみたいな〜。ま、進也君みたいに死ぬのはごめんだけどねっ」

　こうやって俺を煽っていた。

「でもしょうがないよねっ、進也君はただの凡才、私は１００万人に１人の天才。出来が違うんだもの。凡人に歴史は変えられないもんねっ」

　このくらいなら……このくらいならどうってことはない……

　８年くらい似たようなこと言われてきたんだ、今更……

「それにしても本当にかわいそうだよねぇ、あのおチビちゃん。進也君みたいなよわ〜い人に救われたせいで、無残に死んでいったんだもの」

「…………！！」

「あの子、進也君が殺したものだよね」

「違う」

「だってそうでしょう？　進也君がちゃんとしていれば、あの子は死ななかった」

「違う！！」

　違う。

　確かに俺の実力が無かったからああなった。それは多分その通りだ。

　だけど、だけど……！

「違わないよ？　進也君の思惑なんて関係ないもの。進也君がどう思っても、結果は変わらない。あーあ、かわいそうだなぁ、私なら上手くやったのになぁ」

「…………」

「無理なんだよ、進也君には。どう頑張ってもせいぜい２番にしかなれない、永遠の二番手！　そぉんな進也君はぁ、勇者なんかにはなれない。誰も救えない！」

　言い返す言葉が無いのをいいことに、相澤はとびっきりの悪い顔で、さらにまくし立てる。

「劣等生の進也君には、劣等生の仲間しか付かない！　痛々しい事ばかり言っていた黒田君、赤点の常習犯だった松山君、それから、進也君と一緒に死んだ、あの無能なおチビちゃん！！　みぃんな、劣等生じゃない！！」

「黙れ……！」

「知ってる？　無能な仲間ってね、誰かを引きずり下ろすのが得意なの！　そんな奴らちゃっちゃと切り捨てようよ！　他にもいるでしょ？　あっいなかったかぁ！カリスマがあってスクールカーストも最上位な私と違って！　うぷぷ、かわいそー！　皆切り捨てて仲間にしてくださいって言えば、私専用の下僕にしてあげるね！」

「黙れ！！」

　思わず相澤の胸倉を掴み、拳を振りかぶる。

　俺の事だけならどうということはなかった。

　だけど、俺のかつての友達やトルカのことを侮辱されるのは、どうしても我慢できなかった。

「てめぇ、あいつらの事をそれ以上悪く言ってみろ、てめぇの顔面に１発ぶちかますぞ」

「いやーん、暴力なんて進也君こわーい。でもいいのかなぁ？」

「何がだ！！」

　相澤は余裕な表情のまま指を鳴らすと、周囲の景色が弾けたように変わる。

　中学校の教室。

　３年の時のクラスメイトが、皆俺と相澤を見ている。

　ある者は俺達に困惑の目を向け。

　ある者は俺に敵意の目を向け。

　ある者は俺に失望の目を向け。

　ある者は相澤に同情の目を向け。

　俺の友達だった松山と黒田の姿は無い。

　俺の味方は、いなかった。

「本当に殴っていいのかな？　皆は私の言うことを信じるよ？　進也君の味方はいない。それでも殴っちゃう？」

　昔っからそうだ。

　俺が攻勢に出ると、相澤はそうやって脅してくる。

　外面を取り繕うのが得意な相澤は、味方作りが上手かった。

　こいつの本性を知らない奴からすれば、俺は品行方正な女子生徒に殴りかかる下劣な男子生徒に映るのだろう。

「どうする？　今やめれば皆も許してくれると思うよ？」

「てめぇ……！」

　俺は振りかぶった拳を固く握り締め＿＿