三十話 雪姫の覚悟

 数多あまたの槍が降り注ぐ。

 地面が破裂し、無数の呪力の手腕が伸びる。

 ぬゑ、虎、麒麟、竜。無数の幻獣が襲い掛かる。

 統率の取れない死人の集団は、次々に潰されていく。


 ただ、愛する人さえいればいい。


 頼まれれば、人でも死人でも屠ってきた。


 愛する人さえいれば。


 それは思考停止だ。

 わたしは、わたしと決別する。

 ユウくんがわたしを殺すように指示を受けていることは、既に知っていた。

 わたしは、甘んじて受け入れるつもりだ。しかし、生きているうちは役に立ちたい。

 心の底から愛する、二人目の彼のために。

 彼の幸せの糧になると思えば、怖くなかった。

 思考停止でも、いいじゃない。それが、彼のためになるのなら。


 世界が崩れ落ちてゆく。動くものはもういない。荒野は業火に包まれていた。

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