merryXmas,merryWilder
名取
第1話
ドナ・ワイルダーはお調子者。
それは、街のみんなが知っていること。
お調子者ワイルダー。おばかなワイルダー。みんなが私をそう呼ぶ。けれど誰も私を「ドナ」と、ファーストネームで呼ぶことはない。
でも、それでいい。
だって私は、
*****
クリスマスの日も、それは同じ。
街のみんなは、ツリーの下でプレゼントを交換したり、好きな人と手をつないで雪の積もった街中を歩いたり、家族でひとつの部屋に集まって、温かい飲み物を飲んだりしているけれど、私はそんなことはしない。お調子者ワイルダーは、ただ、笑うだけ。いつもと同じこと。何も難しいことなんてない。
街中で、輪になって何か楽しげなおしゃべりをする人達の中に、勢いよく突っ込んで、ひとつふたつおちゃらけたことを言って、そうして笑わせたら、風のようにいなくなる。私に突き刺さる視線が、純粋な興味と好奇の目から、異質な邪魔者を見る、疎ましげな目に変わる前に。
去年の冬も、一昨年の冬も、何も変わらない。
今年のクリスマスも、そうして、冷たいお日様が昇って沈むまで、過ごす予定だった。
あの、真っ赤でやつれたサンタさんに出会うまでは。
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