キッカケなんて些細なもの
好きになったのは些細な偶然だった。
3年前、人知れず声優になり、……人知れず声優をやめた。
皇みかさこと、私、
処女作にして、主演作。最初で最後の作品。
それが、『
誰もわたしが小学生だなんて思わなかった。
等身大の役をやっているなんて。
でも人気なんて出ずに、好きな人が何人かいてくれたから、何とか一期最終回まで行けた。
最後、クリスマスが終わりを告げる時、キャロルは天使の羽を広げ、たくさんの感情や気持ちをくれた人間たちに感謝して天界に帰って行く。
涙を流しながら。
ほんの数日だったのに、人間が大好きになっていたキャロル。
最後の台詞は、『ありがとう、さようなら。また来年会おうね』だった。
……しかし、キャロルは次の年もその次の年も現れなかった。現れることが出来なかった。
打ち切りになったから。
クラスのわたしは、髪はボサボサで地味な目立たない格好。加えて、誰とも話したことがない。話しかけられても頷くだけ。
人見知りの根暗だった。
そんなわたしの心を占めているのが、ずっと同じクラスの陰キャと呼ばれている
3年前、本当に偶然知った。
「おい、翔琉! またアニメ見てんのかよ!
たまにはサッカーしようぜ! 」
「……オレはいいよ」
「付き合い悪いなあ。何それ」
「『
「可愛いけど、おもしれえの? 」
「オレ、キャロル好きなん」
……キャロルが好きと言ったのに、自分が告白された気分になって真っ赤になった。
数少ないファンがクラスメイトにいたことに嬉しさを感じた。
最初はただそれだけだったのに。
いつの間にか目で追ってしまう。
あの声を聞きたくなってしまう。
また、キャロルの話をしてほしい。
恋だと気がつくまでに、そう時間は掛からなかった。
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