第20話 料理人グランプリ、開幕!
さあてやってまいりましたあ!世界の料理人の頂点を決める料理人グランプリ!全世界から三ツ星の料理人たちが集っています。実況はわたくし滝川とぉ、解説は、なんとなんと!!神の料理人・モッスさんです。
滝川 「モッスさん。本日はよろしくお願いします。」
モッス「モッス!よろしくお願いしモッス。」
滝川 「……さて、モッスさん。今年の料理人グランプリもすごい賑わいを見せておりますが」
モッス「モッス!それもそのはず!料理人グランプリで見事優勝すれば、十年は客に困らないと言われていモッスからね。」
滝川 「(うっ、この人相変わらずめんどくさいしゃべり方するな)」
料理人登場に合わせて、2人はその料理人たちの紹介をしていく。
「本場のカレーならばこの人!インドカレーの巨匠 コリーシャ!!」
「フレンチに命を懸けるブラジル人 オブリガード・ミル・フォア!!」
彼らが登場するたび、会場はオーブンのような熱気と、耳をつんざく歓声に包まれる。
「今日は本当にそうそうたるメンツが世界中から駆けつけてくれましたよね、モッスさん。」
「まったくです!それにですね、今日は数年ぶりにあの男が姿をあらわすんですよ。」
「あの男ですね!」
「モッス!数年前、料理人グランプリ優勝が濃厚と言われながらも、突然パタリと姿をくらましてしまった天才料理家・コッコです!!」
彼はけたたましい拍手と歓声で迎えられた。
が、彼が登場した瞬間、それはぴたりとやみ、ざわつきへと変わった。
斜めの男が入ってきた。その瞬間、思わず警備員が動き出してしまうほど、以前のコッコの面影はきれいに消えてしまっていた。人によっては、「醜い」といった言い方をするかもしれない。いや、多くの人がそう言うだろう。コッコを見るために駆けつけてきた女性ファンたちには、残念、というよりもむしろ驚きの方が強かったようで、みな呆然としていた。
さらに斜めになっていたことを除いても、彼はふつうではなかった。
頭はボサボサ、服はシワシワ、靴はボロボロだった。
しかし、眼だけはギラギラとしていた。それは虚ろな目とは対極にあるものだった。確固たるミッションをもっている人間の目だ。誰もがそう感じた。
さらにその薄汚れた全身とは対照的に、彼の調理器具はうつくしく光っていた。しかし新品のように見えるというわけではない。しっかり使い込んであるのに、とても綺麗な道具たちだった。
料理が始まると彼は胸ポケットから何かを取り出した。調理器具を凌ぐくらい大切そうに。それは一人の女性の写真だった。
療養室ではテレビがついていた。斜めの料理人・コッコの登場は彼女に届いただろうか。彼女は口元にかすかな笑みを浮かべ目を閉じていた。彼女の頬の火傷が、それとなく何かに反応しているようでもあった。
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