第2話 光の空間
俺は目が覚めた。
そこは光り輝く大きな部屋だった。体育館よりも、結婚式の披露宴会場よりも広かった。床も壁も天井も、どれも白く眩しく光っている。
俺はそこに、一人きりで立っていた。何故、俺はここにいるのだろうか。
しばし考える。
この場所は知らない。ここに連れてこられた経緯もわからない。
ではその前、俺は何をしていたのだろうか。
そうだ。彼女と待ち合わせをして、すっぽかされて、そして自宅に帰る途中でトラックにはねられた。
つまり俺は死んだのか。
死んだという実感はないのだが、この見慣れぬ光り輝く部屋にいるという事はそうなのだろう。
絶望感はなかった。
自分が死んだというのにこの先何が起こるのか、その期待感で胸が膨らんでいく。
もしかするとアレかな。女神様が出てきて、異世界に転生させるとか言うアレ。何かものすごいチートスキルを貰って、無双してハーレムを作るのだ。
ふふふ。
出てくる女神様って、ドジっ娘タイプが定番だよな。どんな美少女さんが出てくるのだろうか。
俺は待った。美しい女神様が出てくるのを。
しかし、誰も出てこない。
ここでも待たせるのかよ。
いや、女神様でなくてもいい。閻魔大王様でもいいから出てきて下さい。こんな場所で一人にされたらさすがに心細いじゃないか。
そんな阿保な事を考えていると目の前に眩しい光の玉が現れた。その光の玉は人の形になり男性の姿となった。
白い衣装をまとい神々しい光に包まれている男。彫が深く口と顎にひげを蓄えているその顔は見たことがない。
でも俺は直感した。
この人はイエスキリストではないのか?
いばらの冠を被り、十字架に張り付けられたというあの人では……。
「
優しい口調だった。
その男は慈愛に満ちた表情で俺を見つめる。
「女神様でなくて悪かったね。それと、転生を期待していたようだけど今回はそういう案件ではないからね」
途端に恥ずかしくなる。心の中まで見抜かれていたなんてとんでもない事だと思った。
そして俺は後悔していた。
ここに来るまでは「クリスマスなんて大嫌いだ。クリスマスの馬鹿野郎!」と繰り返し文句を言っていたからだ。
今、目の前にいる男はクリスマスの張本人、いや、世界中で彼の生誕を祝っている神様じゃないか。
俺はなんて罰当たりな事を言っていたのかと後悔した。唯々赤面して俯くばかりだった。
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