千年メモリースティック

御影カガリ

Prologue「思想」

私たちは何を成すために生まれ、育ち、生きているのだろうか。私、蒼波紬はいつも考えて生きている。これは全人類、世界中、日本中、みんなが一度は考えたことがあることだと思う。正解はない、だが自分なりの答えはあると思う。学校でこんなことが書かれた本を読んだことがある、


『人間は何かを成すために生まれてくる』


 私はその言葉の意味がよくわからなかった。人間いつかは死んでしまうのだから。何も成すことなく死んでしまう人は大勢いる。だからこそ知りたかった。言葉の意味を、本質を。そして、自分の成すべきことを。


だが、


「そんなの、あるわけないでしょう。人間は自分が生きたいから生きているだけだ。寿命があるから死ぬだけだよ。その過程で、ついでに、たまたま大きなことをやってのけた人がいた、ってだけだ」


 私が数年間かけても出ない答えを彼女、神農大和はたった数行の言葉で一刀両断した。


「そもそも人ってのは先人達が見出した技術、知恵がなければ何もできない生き物なのさ。赤子は一人で生きてはいけないだろう?子供は親から教えてもらわないと何もできないだろう?大人はその過程が、先人の知恵がないと何一つ、言葉すら知らないただの物質と同じだろう。それは、君にも言えることなんだよ」


 そんなことはない、とは一概にも言えない。彼女の言うことも概ね筋が通っているからだ。悔しいが言い返すような言葉が今の私には思い浮かばない。


「あなただってそうでしょう?」


「いいや、私は違うよ」


 即答。彼女は妖艶な笑みを浮かべ全てを見透かしたような眼で真っすぐ私をその瞳に映し出す。私はその目が嫌いだ。なんでも知り尽くしたかのような、すべてを見透かしたような、どんなものでも見通すようなその目が、嫌いだ。


「いつも言っているだろう?もう、本当に君は凡愚だねえ」


 お決まりの言い回し。そして彼女は私を、この世の中を嘲笑うかのようにいつも決まってこう言うのだ。


「私は全てを知っている」


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