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じく
第1章「回帰」
静寂を携えた暗闇が、徐々に蒼く輝き始める。
姿をわずかに表わし始めた朝日が銀雪を照らし、空気が生気を取り戻す。
朝の雪は青い。姿を陽光に晒し白く染め上げられる前に、雪はわずかな時間その本性を垣間見せる。その色からは恐怖さえ感じられ、すべての汚れを覆い尽くすその雄大な姿から海さえ想像させる。
車窓に流れていく一面の青を、登は遠い目をして眺めていた。
一年ぶりの日本。わずかな歳月でその姿を変えるはずもないが、登は過去の日本での記憶を辿っていた。それだけこの一年間の海外生活が登にとって大きかったとも言える。
◇ ◇
コーチのストックが上がった。斜面が一段落した所に、コーチと選手が数名、次の選手の滑走を待っている。
退屈な練習だった。レクチャーの後それに従いゲレンデを滑り下り、修正箇所を指摘されまたレクチャーが始まる。
コーチの言うことは恐らく正しいのであろう。だが登は頭で分かっていてもそれを受け付ける気にはならなかった。
「よろしくお願いします!」
滑り出しに必ず言う掛け声。体育会の匂いがしみついている。吐き気がする。そしてそれを言う自分にも嫌気がさす。
スキー板を並行にした大回り。パラレルと呼ばれる滑走だが、こんなことは横を通り過ぎていく一般スキーヤーでもごく当たり前にできることだ。
登は前回コーチに言われたことをイメージに描きながら雪面をとらえていく。
自分の滑りとは違う拘束されたスキーだった。欲求を抑え付けるがごとく慎重にターンを刻んでいく。
まもなくコーチの前にブレーキングした。
コーチの顔色をうかがう選手達。登の滑りを見て各々が感想を持ち、その真偽を確かめようとしている。
登は別にコーチに意見を求めようともせず、ゴーグルを外して選手達の列に加わろうとした。
「沢井、お前何度言ったら俺の言うことが分かるんだ?」
「何ですか」
登はこれから言われることは十分に分かっていながらも、決して自分から進んで言おうとはしない。
「形だけ外向傾を示しても点数は上がらないぐらい、お前だって分かってるだろう」
点数という言葉が登の感情を刺激する。
「技術戦じゃな、お前みたいな高校生が上手く見せたって審査員にはお見通しなんだよ」
「そうですね、十八の坊主が外向傾だ、内倒だって言われても理解できるわけないですね」
「何?」
登の攻撃的な口調にコーチの顔色が変わった。口頭だけの怒りが徐々に本気になっていく。
「こっちはお前達のために忙しいのを時間割いて教えてんだぞ! 強化委員として県の基礎チームを何としても本大会に上げるために…」
コーチは日頃から反抗的だった登に今度こそ修正してやろうとまくしたてる。しかし登の返事も半端ではなかった。
「どうせてめえの本書くよりも、コーチ料の方が金になるからこっち来ただけだろ。自分の書いたのをそのまま繰り返すだけしか脳が無いくせに、偉そうな口を叩くんじゃねえ」
さすがに周りにいる他の選手達も、この登の言葉に状況がただでは済まされない雰囲気を感じ取った。
「おい、そこら辺でよしておけ沢井」
見兼ねた選手の一人が割って入る。
選手達の中では登は最年少であり、他の選手は全て年上である。仲裁に入ったのは特に年令が高そうな男だった。
「黙ってろ! お前らだって委員に媚売って代表に選ばれることしか考えていないくせに」
「な、何!?」
矛先が自分にも当てられ、一瞬絶句する。
「何だ違うのかよ。自信があるなら大枚はたいてこんな講習会出なくていいだろ。元県代表の最年長選手さん」 少なからず的を得ている言葉だったがそれだけ怒りを抑え付けることができず、その選手は登に組み付こうとしたが周りの選手に止められた。
「お前、何様だと思ってここにいるんだ! 特別強化選手だから入れてやっているだけで、本来ならば…」
コーチは雪面にストックを叩きつけた。だが登はその仕草に恐怖どころか、ますます嫌悪感を覚え思いを全て吐き捨てた。
「誰も頼んでやってもらってるんじゃねえ! おい、そのお得意のスキー理論とやらでよく聞けよ。俺は大会に出ていい点数もらってメダル貰うために滑ってんじゃねえんだよ。ましてやお前みたいにその後の金勘定を計算するほど暇じゃない。俺はてめえの言う雪に合わせて滑ってるんじゃない、俺が雪の上を滑ってるんだ。てめえらみたいに雪が無いと生きていけないような奴らを見ると、唾吐き付けてやりたくなるんだよ」
そう言うと、登は本当にコーチのスキー板に唾を吐き付けた。自分の本どころか理論までも傷つけられたコーチは完全に怒り心頭に達した。だが、咄嗟に登の発言に答えられなかったことへの苦し紛れでもある。
「出ていけ、今すぐこのゲレンデから出ていけ! お前のようなスキーを侮辱した奴なんかにこのゲレンデにいる資格はない! 二度と大会なんか出せなくしてやる。いや、この世界に居られなくしてやる!」
コーチは今年ニューモデルの自分の板を気にして雪で唾を拭き取りながら叫んだ。
「こっちから願い下げだよ。せいぜいコーチ料分ぐらいは働いて、この人達に口先だけの理論を教えてやればいい。オールドタイマーの理論をな」
登はゴーグルを付けると、バンドに腕も通さずストックを握り締め雪面を蹴った。スケーティングをして列から離れていく。たちまち登は他の選手達の視野から遠くへと小さくなっていった。
「来るな、二度と来るな!」
後ろでまだコーチの喚き声が聞こえてくる。登はそれに見せ付けるかのように斜面を攻撃的に削っていった。 欝憤を爆発させるその滑りはゲレンデの中でも一際目立ち、リフトの上からもスキーヤーの視線を集める。下に姿を消していく登を見つめていた選手達も一瞬基礎スキーヤーとしての反感を覚えたが、やがてその滑りに魅力を感じている自分達に気付き、あわててその感情を掻き消した。
登は一般スキーヤーが恐れてスピードを出さないバーンを、何のためらいもなく滑り降りていく。
「これだ、これなんだよ」
登は雪面からの雪飛沫を浴びながら呟いた。
これが俺のスキーなんだ。これが俺のやりたいスキーなんだ。
コブを削り、時にはその間をボブスレーのように加速して通り過ぎていく。
久しぶりに登は自分の滑りから爽快感を得た。基礎スキーを初めてから理論に悩む日々だったが、全てから開放された滑りは今までの苦心が馬鹿らしく思われる程魅力的な、完成された滑りだった。
登はこの日から、完全に基礎スキーを捨てることを決意した。
◇ ◇
「起きてるの、登?」
後ろの席から女性の声がした。
バスはまだ整備されたばかりの高速道路を北上していく。すでに周りは雪に覆われた家屋や畑が見える。
「ああ」
登は気怠い様子で前をむいたまま答えた。思考を中断されたことに対する反感もあるが、それだけではない。後ろの人物からの質問を歓迎していないのが分かる。
「少しは寝たの?」
「少しはね」
その声の主である櫻田は後ろから身を乗り出してきた。二十代半ばであろうか、仕事柄女性ではあるが化粧をしていないこともあり、時に年令を感じさせる表情が見える。眼鏡の向こうには有無を言わせない威厳さえあった。まだ二十歳の登にははるかに年上の印象が強い。そして実際、年令以上の開きがあった。
「向こうに着いたら早速板を合わせてもらうから、少しでも寝ておきなさい」
そう言うと櫻田は登の席のカーテンを閉めた。景色が閉ざされ不満のある登だったが、櫻田には逆らわず黙っていた。小言を言われても何も言い返せない子供のようである。
登はあいまいな返事をすると、仕方なく肩を下げ、目を閉じることにした。
その様子を確認すると、櫻田は乗り出した状態から自分の席に戻り座り直した。
先程までチェックしていた窓際に置いたノートを再び開く。
そこには舞ケ岳スキー場についてからの行動予定、現地で入手予定のスキーメーカー『ニシムラ』のニューモデルに関する各種データー、その他今大会の予定コースの斜度、コブの種類、雪質などが綿密に書いてあった。字体はやや右よりに切れ上がっている。
櫻田は全日本フリースタイルスキーチームのサービスマンである。自分の周りにも全日本代表の選手やコーチ、マテリアルやトレーナーなどを担当するサービスマンがバスの席に座り、時差ぼけを少しでも惜しむべく寸暇を惜しんで睡眠を取っていた。
代表チームを乗せたバスは空港から一路舞ケ岳スキー場へ、ワールドカップ第七戦の会場へ向かっている。全八戦の中、唯一日本で行なわれるワールドカップである。チームのメンバーの中には疲れを表情から隠せない者もあった。欧米を転戦し、母国に戻りながらも休む間もなく大会の日程が待っている。そして終われば再び最終戦に向けてヨーロッパに起たねばならない。
櫻田は表にはあまり出さない登の身体を気遣っていた。まだ若い登には自分のコンディションをコントロールすることはできない。それならばたとえ憎まれ役を買ってでもうるさく注意していかなくてはならない。
だが櫻田自身は一睡もしていなかった。自分の仕事には妥協を許さない。たとえ移動中のバスの中ででもあった。
スキー競技には大きく分けて二種類がある。基礎スキーと競技スキーである。
基礎スキーはタイムや距離、スピードを争うものではなく、そのスキー技術を競うもので、指定された斜面を指定された型の滑走で滑り下り、審査員による点数でその優劣を決定する。もっともそれは大会においてのみである。スキーヤーがバッヂテストと呼ばれる検定を受けたり、スキースクールで技術を学ぶのも全て土台は基礎スキーである。世界的に競技として浸透していない代わりに、最も一般スキーヤーに浸透しているのが基礎スキーと言えよう。
それに対して競技スキーはアルペン、ノルディック、フリースタイルの三つに分けられる。
アルペンは滑降、大回転、回転などワールドカップやオリンピックで馴染みのタイムを競う競技である。
ノルディックはジャンプ、クロスカントリー、バイアスロンなどを総称しており、ゲレンデのみでないスキーの可能性を示した多様性のある競技と言える。
そして『第三のスキー競技』と当事者にとっては皮肉にもそう呼ばれているのが、一九七九年より正式に競技として認められたフリースタイルである。
フリースタイルにも三種類の競技がある。
雪で設営された大型のジャンプ台から空中に飛び出して回転するエアリアル。緩斜面でスキーをいっぱいに使って優雅さを競う華麗なバレエ。そして急斜面の激しいコブをものともせず、猛烈なスピードで滑降する自由奔放なモーグル。
登はモーグルの選手である。代表チームは競技性こそ違いがあるが、エアリアル・バレエ・モーグルとも同じチームとして行動している。その中でモーグルのマテリアルを担当するサービスマンが櫻田である。実質的にはモーグルの代表選手は登一人しかいなく、櫻田は登にマンツーマンで対応しているわけである。
櫻田が見つめるノートには、今までのワールドカップ全六戦の登の成績が書いてあった。そこには櫻田が用意したマテリアルとチューンアップした状況、雪質と使用したワックスなどが事細かに記載されている。そしてその最後に登の滑りに対する短評が書かれていた。
『攻撃性はあるが、オーバースピードのため雪面をしっかり捉えていない。ポップターンになっている』
『エアーにトリプルを入れられなくては、まだ入賞は難しい』
エアーとはコースに設置された大型のコブを利用してジャンプし、空中でパフォーマンスを入れることである。二回行なうことが義務づけられており、全点数の二五パーセントを占める。ちなみにターン技術が五〇、タイムが二五パーセントである。
『勘違いしている。モーグルは見せ物ではない。評価されるのはいかに「フリー」であるかだ』
櫻田のコメントは常に冷酷だった。日本代表としてワールドカップ初参戦ながら何度か決勝出場は果たしている登だったが、櫻田はそれには飽き足りていない。登の素質を見抜いているのである。この世界に入って二年余りの若者が代表に選ばれたのだから、そのセンスに期待しても不自然ではないはずである。櫻田の登に対する期待は大きい。
櫻田はノートを閉じると、眼鏡を外し窓際に置いた。
「私も少しは休まなければ」
言葉にはしなかったが、自分に対しても命令形であった。
休息さえも義務に考える櫻田は、席をリクライニングさせると前の網袋にあるアイマスクを取った。移動の際には必ず携帯している。
櫻田は視界を暗闇にし、体の力を抜いた。
何も考えぬよう努力するが、常に競技の事が頭を離れない。登のことも心配である。
悪い癖だと思う。
しかし今の自分にはこの仕事だけは生き甲斐である。いや、生き甲斐にしなければやっていけない。
さらに櫻田の思考は進んだ。
一年ぶりの日本。
考えないようにしていたが、やはりある人物の映像が浮かんでくる。
この日を待ち望んでいたのだろうか? 仕事に打ち込むことで忘れようとしていたのだが。
萩原。
今更名前を呼んだところで、今日にはもう会うことになる。
思い出にしようとしているのではないか。してしまおうとしているのではないか。
その先を考えるのが恐かった。
アイマスクの上から顔に手を当てた。そしてその手を下に降ろす。
幸いにも疲労が、櫻田の意識を徐々に白紙に戻していく。やがてバスの振動に掻き消されながらも寝息が聞こえてきた。
閉じられたカーテンからはすでに朝日が差し込んできている。
車内が暗闇に閉ざされた。バスの轟音がトンネル内に響く。薄橙色のライトが瞬きのごとく屋根を照らしていく。数百メートルごとに非常灯が横を通り過ぎていく。前後に車は見えない。
ふとした振動で登は浅い眠りからまた目覚めてしまった。時差ぼけにはこの一年間で慣れたつもりだったが、やはり高まる気持ちは抑えきれない。
席の隙間から後ろを覗いてみた。
櫻田もすでに眠りについている。寝顔がかわいければまだ救いもあるのだが、アイマスクのせいでそれを知る術もない。
自分が代表チームに入ると同時に、スキーメーカーの『ニシムラ』から派遣されてきた櫻田。たしか名前は千文のはずだった。
これは一年間思い続けてきたことなのだが、どこかで櫻田の名を聞いたことがあるような気がする。だが、今日の日まで思い出せない。本人に一度聞いてみたこともあったが、
「そんないい加減なことを言われても分からない、そんな事を考える暇があったら…」
と何ら得るところはなかった。それ以上しつこく聞くのも気が引けたし、重ねて何か文句を言われるのも嫌でそれ以来聞いていない。ただ、スキーメーカーから来ているだけあってマテリアルのことはもちろん、競技についても精通していた。
もう一つ櫻田には謎がある。彼女は決してスキー板を履かないのだ。
大概、選手以外のメンバーもゲレンデ内の移動やプライベートスキーのために選手用のマテリアルと一緒に自分のスキーも持ち歩く。そして例外なく櫻田の板も登は見かけたことがある。だが、それを付けたところを一度も見たことがないのだ。仕事には一切支障をきたしていないが、不思議なことには変わりがない。
たしかに櫻田の仕事には隙がない。自分がワールドカップで伸び悩んでいるのも、百パーセント自分の責任だと登は感じている。登が自分の責を認めるのも珍しいが、自分は彼女によって完全な環境で滑っているのだと言う自覚がある。
それだけに自分がもどかしい。彼女に何を言われても文句は言えない。だからこそ櫻田の言葉は何を聞いても辛かった。
登は深くため息をついた。
「一度は誉められてみたいもんだ」
そう独り言をつぶやくと、登は櫻田に先程寝るように言われたのを思い出してまた前に向き直り目を閉じた。 今度はよく眠れるような気がした。
ただ一台、それぞれの思いを乗せたバスがゲレンデに向かい、北に駆けていく。
脱走
「もう、あの子ったら!」
櫻田は手に取ったメモ用紙ををクシャクシャに握り潰した。
櫻田は舞ケ岳スキー場に着くと、早速他のサービスマンと一緒に乾燥室に代表チームのスキー用具を運び込んだ。到着時間が予定より早かったせいか、まだ朝早く他のスキーヤー達の姿はない。
スキーメーカー『ニシムラ』の商品開発部の人間と会うのは十一時頃の予定だったので、とりあえずそれまで仕事はなかった。
登には時間になったら一緒に立ち合うように指示し、それまで自室で休んでいるように言っておいたのだ。
櫻田もまだ飛行機移動の疲労が取れず、ベッドに横になったままそのまま寝てしまった。もちろん仕事に関しては抜かりなく、モーニングコールは十時半にセットしておいた。
電話のベルに目を覚ますと身仕度を簡単に整え、登を呼びに部屋を出ようとしたらドアの下に一枚の紙が差し入れられていた。それが先程のメモ用紙である。
「打ち合せはお任せします。板は旧モデルを使うので。昼には戻ります。 沢井」
と、言うわけである。
あれ程休むようにと言ったのに、と櫻田は登への怒りを独り言でぶつけた。昼ではもうメーカーとの打ち合せは終わってしまう。
登には単に滑るだけでなく自分を支えてくれている様々な人達を知ってもらい、競技に対する責任を感じて欲しいと考えていたのだが、若者の底知れぬパワーに呆気なくそのもくろみは崩されてしまった。
もちろん戻ってきたら厳しく注意するつもりだが、それ以上に登のスキーに対する執着心に呆れてしまった。競技に対してではない。自分が楽しむためのスキーに対してである。
本当にあの子は選手としての責任を全然感じていない。
「板? 折れなきゃなんでもいいよ」
櫻田が初めて登に出会った時、マテリアルに対する要望を聞いた時の答えがこれであった。サービスマンとして選手からどのような注文が与えられるか、と真剣に悩みながら臨んだミーティングでこんなことを言われいきなり毒気を抜かれてしまったのを覚えている。
当初は登の言動に戸惑うこともあったが、日を重ねていくうちに登の性格が分かってきたこともあり櫻田はこちらから厳しく言っていくことに決めたのだ。早い話がまだ子供なのである。
櫻田は大人で、登は子供だった。櫻田は女で、登は男と見ることもできる。
登の選手としての破天荒さにはすでに慣れていたが、時にはその姿に憧れるものがあった。これもスキーヤーとしての、またフリースタイルの選手としての天分であると思う。
自分にはできない。
だが、それと今目の前にある事情は全くの別問題であった。すでに時計は十一時を回ろうとしている。
櫻田は急いで部屋を出た。
「ただじゃおかないから」
クシャクシャにしたメモ用紙をポケットに突っ込むと、待ち合わせ場所のホテルのロビーに櫻田は急いだ。
◇ ◇
時間はやや前に戻る。
登はホテルに到着後、櫻田に言われそのまま部屋に直行した。言われた通り一休みしようとしたのだが、登が外の景色を見ようと窓のカーテンを開けた時、もう櫻田の言葉は忘れてしまっていた。
朝日を浴びて山々に光をまき散らすゲレンデが登の目に飛び込んできた。三階のこの部屋からは見上げるように雪面が広がっている。山頂に向かってリフトが伸びておりその終わりは見えない。
昨晩雪が降ったのであろうか、麓に広がるメインゲレンデにもまだ新雪が残っているように見える。圧雪車がリフトの始動に間に合わせるために、慌ただしく何台も音楽を流しながら動いていた。
もちろんまだ滑っている者はいない。誰にも汚されていない生まれたばかりのままのバーンが、登には何億の大金にも勝る宝石に見えた。
もう抑えられない。
登はベッドの上に放り投げたバックを乱暴に開けると、タオルや洗面道具など邪魔な物を投げ捨てスキーウェアを取り出した。
ジーパンからスキーパンツに履き替えると、さすがにグローブはいるが帽子やゴーグルなどは一切持たず瞬く間に準備を整えた。まだ大会関係者用のパスは貰っていないので、自分の財布を持っていかなくてはならない。 金なんてどうでもよかった。ゲレンデが手招きして待っている。移動の疲れは高まるアドレナリンによってとっくに忘れてしまっていた。
リフトが試運転を始めていた。何よりも優先してあのリフトに乗らなければならない。他の誰かに最初のシュプールを刻み込まれる前に早くしなければ。誰よりも早くあの処女のままのパウダースノーを踏みしめなくてはいけない。発想が欲求になり、やがて使命へと姿を変えていく。
登が窓から向きを変え部屋を出ようとした時、スキーウェアのポケットから一枚のコインがこぼれ落ちた。それはアメリカの二五セント硬貨だった。
それを見て登はマークの顔を思い出した。
マーク・ブラッドショー。登と同じワールドカップを転戦するアメリカフリースタイルチームのモーグルの選手だ。一年目ですぐに親しくなった登の友人である。登は彼のおかげで大分英語が喋れるようになった。今ではたどたどしくはあるが、何とか外国での日常生活には困らない程度の会話はできる。高校でならった英語とは大違いだった。
このコインはマークが前回のアメリカで行なわれたベッケンリッジ大会でくれたものだ。ちょうど製造年が登の生まれた年と同じになっている。マークは自分の物をゲレンデに出る時はいつも持ち歩いていると言う。お守りの意味もあり、色々役に立つともマークは言っていた。
登が珍しさもあり喜んで貰った物が、そのままポケットに入れっぱなしだったのだ。
登はそのコインを拾いポケットに再びしまうと、櫻田の言葉を思い出した。どうやらマークから競技のことを連想したらしい。思い出してしまうと約束を破るのは辛くなる。
だがもはや使命となってしまったゲレンデ一番乗りには代えがたい。仕方なく登は、ベッドサイドにあるテーブルからメモ用紙とボールペンを取った。
登はリフト係員のお爺さんに、執拗な説得の上に試運転中のリフトに乗せてもらった。
「圧雪もしとらんから、雪だるまになっても知らんぞ」 と警告とも脅迫とも取れる言葉を言われたが、登は雪だるま大歓迎とばかりにそのお爺さんに感謝して早速座席に座った。
そこから先のリフトの乗り継ぎは客が上がってきたことでもう営業開始かと係員が思ったらしく、何も言わずに座席の雪を払って乗せてくれた。
ゲレンデを見下ろして山頂への到着を待つ登は、上級者専用のこのシングルリフトがもっとスピードアップしないものかと無理なことも考えていた。
三〇度はありそうな急斜面に、傷一つない新雪が広がっている。ここには圧雪車も入ってこれない。恐さ知らずのスキーヤー達が転がって落ちてゆくことにより雪面がなれていくのだろう。
新雪を滑るにはいくつかの技術が必要となる。
まずスキー板が雪面の中に沈み込んでしまうため、スキーの先端部分を意識的に上げてターンをコントロールしなければならない。深く板が埋まったままだと、一回もターンできず谷底へ一直線となる。そのために普通の斜面では厳禁とされている後傾姿勢を保たなければならない。本来ならば後傾になるとスキーをコントロールできずオーバースピードになってしまうのだが、それは深い新雪が抵抗となりスピードを緩めてくれるのである。 また急激に方向を変えるターンも危険である。重い新雪の中では人間の運動量だけではとても板を回転させることはできない。雪面からの反動を利用した体重移動により、ゆとりを持ったターンが必要である。そのためにスキー板を平行にして小回りをするウェーデルンという技術を、直線的に斜面の傾斜に逆らわず行なうのが良い。
その他にも柔らかい新雪は飛び散りやすく、視野を確保するためのゴーグルは付けるべきである。また新雪の下にはどんな地形が隠されているのか分からないのであらゆるアクシデントに対応できるテクニックや精神的余裕が求められる。あとブーツを板に固定する金具も、ショックに耐えられるために強度を上げた方がいいだろう。
だがそんな事は登は全然知らなかった。それが証拠にただでさえ雪面からの日光反射が強く眼を痛めてしまう恐れもあるのに、ゴーグルは付けず金具なんて触ってもいない。新雪の滑り方なんて登は聞いたこともなかった。
外国のスキー場には日本のような狭いゲレンデは皆無に等しく、登はまだ圧雪されていない広大なゲレンデを自由に滑っていた。全ては体が覚えているのである。
リフトの終着点が見えてきた。係員が滑走路の雪を専用の巨大なスコップで運んでいる。登はこのゲレンデを一番に滑ることを誇らしげに感じていた。全てが自分のためにある気さえする。
あと数本の支柱を通過すると降りなければならない。ときめく心を抑えきれず、登は早々とストックを両手に握り締めた。
斜面のスタート地点にはもう滑りだそうかというスキーヤーの姿もある。
「えっ!?」
スキーヤーがいたのだ。登は驚きの余り、ストックを持つ手を放してしまった。ストックは風を切る音をさせて悲しく降下していく。数秒後、ストックは音もなく新雪の中に沈んだ。
「嘘だろ?」
登より先にリフトに乗る人影も見なかったし、係員達も登が最初の客のように扱っていた。第一こんな早朝に山頂の上級者コースを滑ろうとする奇特な人間が、自分で言うのもなんだが登以外いるとは考えられなかった。 だが、いたのだ。
終着点にまもなく辿り着く登に係員は気が付くと、その係員は斜面のスタート地点に立つ滑りだそうとしていたスキーヤーに声をかけた。向こうも分かった様子で手を振って応える。するとそのスキーヤーは斜面を滑り台を降りるように何気なくスタートしていった。
「兄ちゃんだめだよ、ストック落としちゃ。ったくろくに滑れない奴がいきがって上がってくるとこれだからなあ」
リフトを降りてくる登に係員のおじさんは屈辱的な言葉をかけたが、登はそんなことは気にしなかった。それよりも自分よりも先にこのゲレンデにやってきていたあのスキーヤーが気になった。
「あの人はいつここに来たんですか?」
登が指を差そうとしたら、もうそこにはそのスキーヤーはいなかった。代わりに係員のおじさんの方が居場所を指差した。
「ほら、あそこだよ」
その方向を見ると登がストックを落とした辺りに止まっており、そのストックを手に取って高く掲げている。いくらリフトの途中とはいえ、ここから結構距離はある。そのスキーヤーのいる場所から上に遡っていくと、大胆に雪面を削り取ったシュプールがあった。転んだ様子はない。それ以前にこの新雪の中で転んだらそう簡単には起きれない。
「あの子にあんたのストックを取りにいくように言っといたんだよ」
登はあのスキーヤーの技術に驚きを隠せなかったが、危うく係員のおじさんの言葉を聞き逃すところだった。
「あの子!?」
「そう、一平にな。まだ小学校の六年になったばかりのガキんちょだ」
そう言われて改めてストックを振っている姿を見ると、たしかに大人よりも背格好が小さい。距離があるため言われるまで気が付かなかった。
「たぶん下の乗り場まで降りて置いていってくれるだろうから、あんたもストックがないことだし、下りも特別に乗せてやるからリフトで降りていきなさい。その分じゃあまり山降ろしも上手そうじゃなあ」
登は聞き慣れない言葉を耳にした。
「山降ろし?」
「ここから一番下まで滑っていくことをそう言う、村の若者達が良く使う言葉だ。一平は山降ろしに夢中だからなあ」
登はしばらく眼下にいる一平という少年を見て感心していたが、一平が再び滑り降りようとした時、登は大声を張り叫んだ。
「今から行くから、そこで待っててくれ!」
「兄ちゃん無茶だ、村の若いもんだって一平以外はまず転けるんだから。悪いことは言わんから…」
係員のおじさんは登を制止しようとしたが、登は構わずリフト降り場を下っていった。
途中の斜面に立つ少年は、意図が通じたのか滑らないでそのまま待っている。楽しみそうに登が滑りだすのを見上げて待っていた。
「ようし、あの後に合わせるか」
登は一旦斜面の前に立ち止まると、両手を横に広げた。そして徐々に力を抜いてストックをイメージする。
「GO!」
スケーティングで登はスタートした。
係員のおじさんは呆れ顔で降り場のステップから斜面を覗き込んでいる。ところがその姿勢がだんだん身を乗り出すように変わっていった。
斜面に小刻みなリズムで雪煙が上がる。そのリズムは一行に途絶えない。雪煙はストックを持つ一平の方に一直線に向かっている。
「ほう」
先程まで馬鹿にしていた係員のおじさんが感嘆の声を上げた。
「近ごろじゃ都会者も山降ろしができるのか…」
登は右手と左手を交互に上下に動かしながら、一平との距離を縮めていった。全くターンのリズムは崩れない。
やがて登は一平の近くまで来ると、さらに大きい雪煙を上げてブレーキングをした。
「うわ!」
それが一平にもかかり、頭から雪まみれになってしまった。もっとも一平も自分の滑りで少なからず雪を被っている。
「悪い、悪い」
登はそう言うと一平の体を手ではたいた。
「ひどいわ、兄ちゃん。せっかく待っててやったのに」 一平は口を尖らせて文句を言った。
雪が取れていくと一平の輪郭がはっきりとしてきた。身長は一五〇センチぐらいで普通の体格、黒のワンピースを着ている。特徴的なのは背中にまでかかろうかと言う長髪である。大きい眼が印象的でいかにも童顔を感じさせる。
「悪かったよ。それにしてもお前、スキー上手いなあ」 登は笑顔で一平に話しかけた。登の滑りに感心していたこともあるが、自分の滑りに満足がいったことで笑顔が隠せない。
「兄ちゃんも山降ろし上手いに、驚いた!」
一平は素直に、ストックなしで鮮やかに滑り下りてきた登に驚きを示していた。自分以外に実力のあるものを見ると、普通人間は素直に受け入れず嫉妬やライバル感を持つものだが、一平にはそれが全然感じられない。
「しかし、一番乗り取られちまったなあ」
登も最初こそ悔しさがあったが、この少年を前にしてそんな気は失せてしまっている。相手が子供ということもあるが、何を言わずとも一平の描いたシュプールが登に好感を抱かせた。
「あい、これ」
一平は登にストックを手渡すと、首から垂らしていたゴーグルをその長髪の上につけ直した。
「兄ちゃん、東京者か?」
「まあ、そうだな」
正確には東北生まれなのだが、コーチや他の選手と話しているうちにすっかり言葉は標準語になってしまっている。それに、ここ数年はほとんどスキー場を転戦していて地元に長い間滞在したことはない。とりあえず事情を説明するのも面倒なのでそういうことにしておいた。
「じゃあ、そのうち帰る?」
一平は残念そうな顔をした。
「あと四日ぐらいはいるよ」
大会は三日間である。明日の公式練習日を含めて四日間。次の日にはここを起って最終戦のスイスへ行かなければならない。
「どうした、俺が帰っちまうと何かあるのか?」
「なら、日曜もまだいる?」
一平は急に嬉しそうな顔に戻った。
「ああ、一応な」
日曜は大会の決勝である。
「じゃあ、一緒に滑ろ! わし日曜なら学校休みだし」 登の手を持って一平がせがんでくる。その大きな眼が登の視線を外さない。
「お前、今日学校?」
登は腕時計を見た。その様子を見て一平の顔色が変わった。
「兄ちゃん、今何時だ?」
一平は登の腕を掴んで時計を見ようとしたが、ローマ数字が読めなかった。
「八時半過ぎだけど」
「いかん、遅刻だに!」
だに? とは登も聞き慣れない方言だった。どこの方言だろう。
そう言うと一平は慌てて斜面に向き直った。
「おい、ちょっと」
登も急いでストックのバンドに手を通し、出発できる準備をした。
「こりゃ休みなしだ」
一平は恨めしそうに登の顔を見たが、登には恨まれる筋合いがなかったつもりだった。しかし元を糾せば登がストックを落としたのが原因である。
「おい、おれのせいかよ」
勘弁してくれという登だったが、一平の言うことは違った。
「違うに、せっかく山降ろしができる兄ちゃんにあったから、もっといっしょに滑りたかった」
一平はこの巡り合わせを十分に活かせなかったのを悔いているようだった。
「まあ、そう言うなよ。明日だってあるだろ」
「分からん。今日は宿題が昨日の夜までに終わったから来れただけだ」
登にも櫻田に課せられた宿題はたくさんある。そして早くもそれをすっぽかしてここにいる。思い出すと頭が痛い。
「とにかく下りよう、急ぐんだろ」
「そうだった!」
一平は登に言われて改めてその必要性を思い出した。
「兄ちゃん、ついてこい!」
一平が威勢のいい掛け声とともに雪を蹴った。
「抜かれんなよ!」
登もすぐにその後を追った。
再び急斜面に雪煙が舞う。今度は同時に二つ。縦に綺麗に並んで急速に下っていく。
一平は恐さ知らずだ。登も限界スピードぎりぎりである。こんな滑りは大会でも決勝の時ぐらいしかしない。しかしそれが登の心をさらに沸き立てた。
早くもリフト一本分を滑り下りた。一平に休む気配はない。山頂から麓までリフト三本。少なくとも三キロはあるはずだ。一気に滑り下りるには体力的にきつい。並みのスキーヤーならとっくに息が切れる。それに新雪を滑るには普通の倍以上の体力を必要とする。登は必然的に鍛えられていたが、一平がするとなると大変なことである。
斜面は上級者バーンを終え、二〇度程の中級者バーンに入ってきた。これぐらいだと普通に滑るにはさほど問題ない。一平はほとんど直線的にターンを小さくしていった。スピードは増す一方で、今度は雪煙というよりもミサイルが突き抜けるような雪飛沫が上がる。登は一平の後ろから雪を避けるべくスリップストリームの要領で横に並んだ。
「いいなあ、下手くそな邪魔な奴らがいないってのは」 登が隣を滑る一平に聞こえるよう大きな声で言った。
「朝はいつもわし一人だに、こんなの当たり前だ」
一平は新雪を切る気持ち良さよりも、今は学校に間に合うかどうかで頭がいっぱいだった。
「どうして早くから滑れるんだ?」
登は最初の疑問を聞いてみた。自分は強引に乗せてもらったのだが。
「リフトのおっちゃんが、おやじと知合いなんだ、に」 登は素直に納得した。地元の人間がスキー場で働くことは多い。よくリフト券のシーズンパスを地元のレーシングチームの子供達が持っているのを見かける。
「ようし、兄ちゃんこっから直かりだ!」
直かりとは、直滑降のことである。これは登も使う言葉だ。
すでにもう麓が見えてきている。初級者コースであるメインゲレンデは傾斜の緩い広大な一枚バーンだ。
「任せろ、これなら俺の方が早い。俺の後ろに付け」
体重の重い登の方がスピードは付く。一平に後ろに付かせて空気抵抗を和らげてやるのである。そうすればまた一平も加速する。
まさにスキー場のど真ん中を二個の弾丸が駆け下りていった。ストックを両脇に抱えてしゃがみこむ姿勢で、登は雪を掻き分けていった。
「行け、一平!」
加速したのを見計らって、登は後ろの一平に叫んだ。まもなく一平が登の横を追い越していく。そして最初のリフトの乗り場の方に向かっていった。
登は目を疑った。
「おい、また上る気か?」
声を上げたが、もう一平には届かない。登には一平の意図が読めなかった。
やがて一平は豪快に雪を巻き上げてリフト乗り場の前に止まった。すると急いで板を外し、それを小屋に立て掛けるとそのまま小屋に入っていった。
すぐに登も到着した。
登が小屋を覗き込むと、一平は中で長靴に履きかえていた。スキーブーツで学校に行くわけにはいかない。履き終わると、ストーブの横に置かれていたランドセルを取り出した。どうやら全て準備はできていたらしい。登が待ち受けるところに一平が小屋から出てきた。
「兄ちゃん、また滑ろ!」
一平は息をハアハアさせながら登に頼んだ。登も息は切れかかっている。
「ああ、俺あのホテルに泊まってるから、また明日の朝にでも滑ろう」
「約束だに」
一平は真面目な顔をして聞き返した。子供の約束は絶対である。
「約束だ」
登は時計を見た。まだ滑り始めて数分しか経っていない。
「ほら、急げ。遅れるぞ」
「ヤバ、じゃあ兄ちゃんまたな!」
「おう」
一平はランドセルを背負って、元気良く長靴で走っていった。その様子を見て、一平の疲れ知らずに登は呆れる。
眺めているうちに忘れていた自分の方の疲れがじわじわと湧いてきた。移動中もろくに寝ないままいきなりハードなスキーをした後である。ウェアの下は汗が流れていた。白い息が高く上がる。
しかしホテルに今戻ると櫻田に捕まって打ち合せとやらに付き合わされてしまう。登は考えた末に、とりあえず椅子に座ることを考えた。
「おじさん、よろしく」
「お、もう二本目かい。早いね」
登はリフトの座席を選んだ。上がる以上また滑らなければならないのだが、スキーの疲れなら大歓迎だった。 しかし体の方は疲れを隠せず、ゆっくりと動く座席の鉄柱に頭をもたれかけた。視線がゲレンデの方へ向く。 頂上の方を見上げると、登はため息をついた。疲れからではない。驚きのため息である。
「パウダー8だ」
そこには一平の描いたターン弧と登の描いたターン弧がちょうど対称に重なっていて、永遠に続く8の字が出来上がっていた。
新雪の上で技術を持った二人の人間が、しかも息が合っていないとできないこのシュプールを、尊敬の念を込めてスキーヤー達はパウダー8と呼ぶ。
図らずもできたそのパウダー8に、登は感動すら覚えた。
「スキーやってて良かった」
本当にそう思う。この時だけは自分の滑りにではなく、新雪を与えてくれた山に感謝した。
先程まで高まっていた興奮が落ち着いていく。
朝日に照らされた雪山は登に優しい印象を与えた。
(第2章「嫌悪」につづく)
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