第9話

次の日。



自動車学校にいる柿崎を見つけた。


ホントに通ってたんだな。



楓から預かった、この気持ち悪い私物。

袋二重になったまま渡してやるわ(笑)




「柿崎。」



「翼?久しぶりだな。」



「おー。これ。」



会話もろくにせずすぐ渡した。




「なんだよこれ。」



「お前が楓に持ってこいって言ったもんだろ。」



「は?翼に頼んだのか?

俺の大事なもんなんだから、自分で持ってこいよな。」



何言ってんだこいつ。




「そんな大事なもんだったらな、人に渡してんじゃねーよ。

二度と楓に話しかけんな。」




「、、、。」




それだけ伝えてすぐ楓のいる場所へと急いだ。



言いたいことはいっぱいあった。

むしろ殴ってやりたいくらいだ。

楓の一生消えない恐怖を、、

殴ったくらいじゃ楓の心の傷に比べたらなんてことない。



でもここで俺が下手なことして、また楓になにかされたらと思うと、ぐっと我慢して立ち去るしかなかった。




こんなやつに。こんなクソ男に。

俺がいたら守ってやれたんじゃないか、

出来ることがあったんじゃないか、

もう戻ることができないのに、そんなことをグルグルとずっと頭の中で考えてしまっていた。






「楓っ!」



急に声をかけられて、びくっとした楓が振り返った。



「翼っ!」



いつもの楓の笑顔だ。



「渡してきたよ。」



「ありがとう!ごめんねホントに。

変なことに巻き込んじゃって。」



「全然余裕だよ。

また話しかけられたりしたらホントに俺にすぐ言ってな?」



「うん、ありがとう。

翼はかっこいいねー!こりゃモテるわっ!(笑)」



「いや、モテねーから(笑)

てか他の人にはこんな優しくしてないから(笑)」



「えぇ!ホントー?(笑)

みーんなに優しそうなイメージだよー!(笑)」



よかった。いつもの楓だ。





「ねぇ、翼と、楓だよね?」



後ろから声が聞こえて2人で振り返った。



「え?なぎさ!?」



そこには中学まで同じだった、

竹内(たけうち) なぎさ がいた。



「きゃーーー!!久しぶりすぎるー!!

元気だった!?」



なぎさはめちゃくちゃテンションが高くて、

そして身長も高くて、すらっとしてて、

モデルさんみたいだ。




「で、どうしたんだよ?」



「わー、翼。冷静ー。」



冷ややかな目でこっちを見るなぎさ(笑)



「なんだよ(笑)

久しぶりだな。なぎさもここ通ってたんだな。」



「そう!私誕生日遅いから、最近やっと通えるようになって!」



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