異世界転生した魔王は転生先でも支配者になりたい(仮)

覇蓮弧踊

第0話 プロローグ(ケザキ)

あれは、嵐が吹き荒れる夜の事だった。

勇者が俺様の城に、一人で攻めてきたのであった。


しかし、こちらの手下は沢山居るので、ここまで来るのには相当時間がかかるだろう。

ゆっくり作戦を考えて、勇者を迎え撃つとしよう。

そうだ、どうせ勇者が来るまでに、相当時間かかるだろうし、紅茶でも飲んでリラックスでもしよう。


そう考えていたのもつかの間。

目の前の扉が突然ギギギと大きな音を立て開いたのだ。


「お前が魔王のナタスか!お前のせいで大水害が起きて村がめちゃくちゃなんだよ!何人もお前のせいで死んだんだ!お前もこの『転生の剣』でこの世から消してやるから覚悟しろ!」


俺様は、一体勇者が何を言っているのか、判らずにいた。


「貴様が何を言っているか、全く見当がつかぬ。一体何事だ、俺様の手下はどうした!どこにも見当たらないじゃないか!」


俺様は、勇者を睨みつけた。


「おまえの手下は、殺していないから安心しろ。

『転生の剣』で、転生させているだけだからな。

もしかしたら、お前も転生先で手下と出会うかもな!」


勇者は、高笑いをしながら、俺様にこう語りかけてきたのである。

俺様は、手下が転生した事実を聞いた安堵感と、手下を皆、転生させられた怒りが、限界を迎えようとしていた。


「俺様の手下をよくも転生させてくれたな!貴様には相応の罰を受けてもらうぞ。

せっかくのティータイムも邪魔されて、めちゃくちゃ機嫌悪いしな!」


俺様は、手下が転生させられた怒りを魔法に込めた。

ついでに、想像以上に勇者が早く着いたので、紅茶が飲めなくなった怒りも込めておいた。

俺様が持つ、鎌のような杖によって繰り出された魔法(空気圧縮スライスタウィンダル)は、勇者を確実に捉え、大きな爆発音とともに、辺り一面が煙に包まれたのだが、煙が落ち着くまでに、そう時間はかからなかった。


「やったのか?」


俺様は肩の力を抜こうとした、しかし、勇者は生きていたのであった、左腕が吹き飛び、肩からは血が大量にこぼれている。しかし、勇者の顔は真っ直ぐこちらを睨め付けてきていた。

そして、次の瞬間、勇者はこちらに向かって叫んだ。


「クソがあああああああああああああああああああああああ」


そう叫びながら、勇者は大声をあげながらこちらに向かって走ってくる。


俺様は体を動かそうとしたが、大量の血液を見たことによる吐き気で、体を動かすことができなかった。

そう、俺様の唯一の欠点、それは、赤色の血液が苦手であるのだ。

俺の手下が流す血液は、緑色をしているために、この欠点は、たいした欠点とはならない。それ故に、人間と戦う時は、一撃で仕留めるようにしていたのだが。

今回は、一撃で仕留め損なってしまったのである。


「あっちょっと待って、お願い、ゴメン、さっきの魔法嘘だから。

ちょ、許して、マジで、俺様まだ転生とかしたい年ごろじゃないし。」


そして、次の瞬間


『ドスッ』


鈍い音を立てて『転生の剣』が俺様の体を突き刺した。

痛い、そのような感覚はなかった。

意識が遠のいていく中で、勇者の顔を確認する事ができたのだが、

明らかにこちらを見て、笑っていた。


「これでおしまいだ」


俺が聞いた、勇者の最後の言葉だった。





真っ暗の世界に俺様は居た。香りは特に無い、何もない世界、そう感じた途端だった。

辺りが明るくなり、そいつは突然、姿を現した。そして突然、頭の中にメッセージが届いた


≪おぬしは勇者に『転生の剣』で切られ、こちらの世界に飛ばされたのだよ。どうだ、ここは居心地がいいだろう。それにしても可哀想だな、台風が原因で、魔王の城丸ごと、勇者の『転生の剣』によって、無理やり転生させられちゃうんだから。≫


立派な髭を生やしたおじいさんが、口を開かずにこちらへ、語りかけてきた。


(この人は一体何なんだ)


疑問に思っていると、おじいさんは、にこりとこちらに笑いかけ。


≪わしは、転生の神だよ、『転生の剣』数々の転生者を捌いているんだ。『転生の剣』で切られた者以外は、こことは別の神の世界に、飛んでくんだよ。≫


俺様が考えていることが全て神にはお見通しって事なのか。正直気味が悪く感じるし、俺様には、神が考えていることが解るわけでもない。


(俺様が考えていることが、全部お見通しって事は神に向かって、なにかを企んだとしても、意味がないんだな。)


≪ピンポーン!正解!全部わしには、お見通しなんだよぉ~

おぬしが考えている事は何でもわかる。さっき何匹も魔物がきて、捌くのが疲れたから、適当なとこに捌くとしようかな。

安心しろ、次は魔王になるわけではないからな、そうだ!『転生の剣』で切られた者以外は、基本的に記憶を無くしておるのだが、『転生の剣』で切られた者については、なぜか、記憶があるんだ。

もしかしたら、転生後の世界で、おぬしが手下に、出会う可能性もあるかもな~≫



いきなり、喋りが砕けた感じになったと思ったら、意識がだんだん遠のいていったのであった。

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