第5話 女王降臨

 あのあと特に会話することなく2人で帰ったのだが、この上なく気まずく感じた。

 別に浮気した訳ではないのだが、何故かやましいことしてしまったかのように思ってしまう。

 そうしているうちに家についた。麻衣は自分の家に帰ることはなくそのまま私の家へと入っていった。


「あら?おかえりなさい」


「お邪魔しますお母様」


 いつもの様に綺麗に作った人工物の笑顔を私の母に見せた彼女である。

 母にとってもはや麻衣がいつもいることに違和感など持っていないようだ。

 私も母にただいまと言うと、麻衣に引っ張られて私の部屋へと連れていかれた。


「ふふ。大学生っていいわねー」


 強引な麻衣をみて面白がりつつ、母はリビングのちゃぶ台で暖かいお茶を飲みつつドラマを見ていたのだった。


「お、おい!麻衣!」


「黙りなさい」


 階段をドタドタと音を立てて上がっていく。その音一つ一つに怒気のようなものが感じられた。

 これは余程トサカにきてるかもしれない。でも私は神に誓ってやましい気持ちなど抱いていない。

 そもそも、なぜ違う女性と話しただけで怒るのかと疑問を持っていた。

 私の部屋につくなり、私をベッドの方へと放り投げた。

 ベッドに仰向けになりそこをマウントを取るように麻衣は馬乗りしてきた。


「痛ってぇ…麻衣!なんなんだよ!?」


「なんなんだよじゃないわよ。どうしてこうなったか分かってるわよね?」


 見るからに怒っている。必死にもがくが全くビクともしない。


「可愛かったわねあの娘…。あぁいう娘がタイプなのかしら?」


 ユッキーは麻衣とは違い癒し系の女性である。自分とタイプの違うところに何かを感じたのだろう。

 私の服をはだけさせて右の人差し指でつーっと私の肌をなじっていった。


「ユッキーはただの友達だよ!」


「ユッキー?えらく親しげな呼び方じゃない?」


 しまった。つい口が滑ってあだ名の方で呼んでしまった。先程は警戒していたのだが、ちょっと気を抜いてしまい出してしまった。

 これによって麻衣の顔がまたひとつ怖い触れたら爆発しそうな怪しげな笑顔へと変わっていった。

 麻衣は私の肌をつねりはじめた。最初は痛みを感じないものから、徐々に強めていった。


「痛たたた!!やめて麻衣!!」


「何私に命令してるの?あなたは命令なんてできない立場よ?お分かり?」


 肌がパンのようにちぎれるかと思うほどの痛みであった。私の苦痛に歪む顔をみて彼女は何か満たされたような顔をし始めていた。

 が入り始めていた。彼女のドSとしての性癖が解放されようとしていた。


「違う女に目移りした罰よ」


 そう言った瞬間彼女の行動は早かった。突然どこからともなく手錠を2つ取り出し私の腕につけてベッドの柱へとつけたのだった。

 そして私服のシャツのボタンを外していき、肌着を引きちぎったのである。


「ちょ、ちょっと麻衣!やめろって!?」


 私は抵抗しようとした。しかし腕はまともに動かない。脚では細かな動きはできないし、マウントのせいで動けない。

 そんな中で麻衣は私の顎を人差し指と親指の間で掴み強引に唇を塞いだのだった。


「むっ!!やめっ!麻衣…!!」


「はむっ…ちゅっじゅる……ちゅ…女狐を呼び寄せるのはこの口かしら?ん?」


 麻衣は悪戯な笑みを浮かべている。恐らく楽しんでいる。もうスイッチの入った彼女を止めることなどできない。

 あとは満足するまで耐え忍ぶしか今の私は選択肢がなかった。


「あら?どうしたの?こんなに硬くなってるけど…?」


 麻衣は私の下腹部あたりを触るとナニを触りだしたのだった。ズボン越しからいやらしく、ねっとりとこねほぐしてきた。

 別に硬くなっていたわけではなかったが、この行動によってどのみち私のナニは張り始めてきたのである。


「や、やめっ!?そこはっ!うっ!!」


「何私に指図してるの?あなた主人は私よ?ご主人様の命令を素直に聞きなさい駄犬が」


 服の上から私のものをいやらしく触っている。しかし、その触り方は非常に意地悪でフルまでいこうとすれば触るのやめて、少し元気がなくなり始めるとまた触るといったものであった。


「何その目?もしかして…しごいて欲しいの?ふふ…。ダメよ?」


 さらにチャックを開き私の棒を取り出す。触られた興奮のせいか赤く染まり情けなくもいきり立っていた。

 それをさらに触り、息を吹きかけて来るのである。

 だが最後まではしてもらえず寸止めの状態である。


「くっ!あぁ!!頼むからやめてくれ!」


「やめていいの?言っとくけど後で抜こうなんて甘い考えは持たないことね?」


 そう言うと、麻衣はどこからともなく銀色に光る明らかに男性のソレの形をしたベルトを取り出してきたのだった。

 そしてご丁寧に鍵まで。そうそれは貞操帯であった。


「お、おい!?それはなんだよ?まさか!?」


「ふふ。そのまさかよ」


 そう言うと麻衣はズボンをずらして私に貞操帯をつけたのである。そして最後に鍵をカチャリと締めて自慰行為を出来ないように封じられたのだった。


「早く外してくれよ!あたって痛い!!」


 今は立っている状態である。そのため貞操帯の中はきつくて辛かったのである。

 だがそんな苦悶の表情を浮かべる私をみて満足げに彼女は笑っていた。


「あぁ…いいわ…その表情。その声…。今どんな気持ち?彼女に貞操帯つけられて、オ〇二ーができなくてどんな気持ち?」


 彼女は私に顔を近づけて質問責めをしてくる。あいにく両手が塞がっている私には今のこの状況は地獄でしかない。それに彼女の柔らかい感触などもあってか要らぬ想像をしてしまい、さらにいきり立っていた。


「頼む…。もうきつくて死にそうだ…。外して…」


 泣きの一言を言うものの、彼女はドS。むしろ余計に喜んでしまう。

 こんなところ家族に見られるのだけはごめんである。恐らく色んなものを一気に失う気がした。


「麻衣様どうか愚かな私の願いを聞いてください。は?」


 恍惚とした顔で私にそう言うように迫った。悔しいというか切なくなってくる。しかし、もうこの忌々しい帯を外すためには言った通りにするしかないと考えた。


「ま、麻衣…様。どうか愚かな私の…願いしを聞いてください…」


「声が小さい」


「麻衣様!どうか愚かな私の願いを聞いてください!」


 もう言いきった。プライドなんてものはいい。今はこの苦しさから一刻も早く逃れたい。そう言う男の意地を捨てた言葉に麻衣が出した答えは…。


「嫌よ?どうしてあなたの願いなんて、聞かないといけないの?」


 無残にも私の願いというのは打ち砕かれるのだった。すべて計算されたものである。

 このように仕向けるために彼女は一連の流れを作ったのだ。

 我が彼女ながらそのドSっぷりには恐ろしさすら感じてしまう。

 私はドMではない。ましてやMでも無い。彼女の性癖には困っている。彼女と付き合っていくということはこのドSの性癖も含めて付き合っていかなければならない。

 私がドMになれば楽なのだろうか。そう考えことがたまにある。

 とそんなこと考えていると突然ドアが開いた。


「うるさいんだけど…一体何を…して…」


 ドアを開けたのはすぐ下の妹の深月であった。深月はこのあまりにも異様で言葉が出ないような光景に固まっていた。

 そして、理解したのか顔を赤く染めていた。


「何してるのよ!!!!!?」


 終わった。私の人生は終わった。まさか妹にこんな姿を見られるなんて…。死にたくなってきた。

 だがこのような状況でも麻衣は何故か楽しそうに笑っていたのだった。




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