第4話 新入生の入部試験
「えー大丈夫だって、嵯峨さん。この子達本当に優秀だと思うよ私は。私達よりも優秀かもしれない」
奏はそう口を挟みつつ、手には何故かチョコパイの袋がある。それを見て嵯峨が言った。
「ああ、俺達よりも優秀かもしれないな。後輩の前で普通に菓子を出すなっ!!」
「はい、すみませんでした嵯峨様」
「みんなに聞いてほしい事があるの」
栞がそう口を開くと、全員黙って栞の方を向いた。
「部活において、先輩後輩の上下関係は本当に大事だと思うの。敬語であるとか、準備であるとかね。でも新聞部はね、例えば誤字脱字があったり、先輩もミスをする。それに気付いた時はちゃんと後輩も指摘をしてあげること。文章がおかしかったらちゃんと教えてあげること。後、皆で編集会議をこれからする事になると思うけど、その時も遠慮せずに後輩も意見を出して欲しいし、変だと思ったらいくらだって反論して大丈夫。それが新聞部よ」
「はいっ」
何だかよく分からないけど楽しそう。とりあえず栞先輩は尊敬だ。そんなことを考えていたせいで、すっかり入部試験について忘れていた。
「それらを踏まえて……だ。入部試験をする。内容はそんなに難しくは無い。諸君もまだ入学したばかりで分からないことが多いだろうし、想像以上に体は疲れる。今年度の入部試験内容を発表する」
「……毎年同じじゃんか」
「うっ、発表するぞ!三日後までにスクープを取ってこい!」
「……皆には先輩達が使っていたカメラを渡すわ。これは約二年間、貴方達の相棒となるものよ」
スクープを取る?スクープ?まだ入学して今日で四日目。脳内は軽いパニックを起こしているが、栞先輩からカメラを受け取り新聞部に入るのだという自覚を鈴もとうとう持った。
新聞部、私入っちゃうんだ。でも、本当に大丈夫なの?ここの部活で私はやって行ける?いいや、今は頑張ろう、できる限り!
その日の帰り道は途中まで香と一緒に帰った。お互い頑張ろうね、とだけ言って二人は別れた。同級生の女性は彼女しかいないだろう。上手くやっていけるだろうか。試験に合格もしていないうちからそんなことを考えていても、取らぬ狸の皮算用だ。
「スクープって、何だよお……」
三十分かけて家に帰宅をして、自分の机の椅子に腰掛ける。制服を脱ぐことも忘れカメラを見つめる。あの嵯峨っていう先輩も、去年同じ試験を受けて残った部員の一人なんだ。市来先輩も、奏先輩も。
「皆さん優秀じゃないですかー」
「おかえり、鈴。随分独り言多いのね……ってそれ一眼レフじゃない!そんなのどこで……」
「ただいま……私、新聞部入ることにしたの」
「新聞部?……新聞部ってどんな部活なの?」
「ねえお母さんはさ、スクープって言われたらどんなものだと思う?」
えー、と母は唸りながら考えこんだ。そして口を開く。別にそこまで答えに期待はしていない。
「大ニュースとか?ほら、よく週刊誌に載ってる、芸能人のスキャンダルとかさ。ああいうのスクープって言うんじゃないの?」
「そんな週刊誌に載ってるようなこと校内新聞に載せたって全然需要無いって」
「何よ、あんたもう新聞の記事の担当頼まれたの?随分試されてるのね」
「新聞の記事を頼まれた訳じゃないよ、ただの入部試験……あ、そうか。ただの試験だから、別に新聞に載る訳じゃないから校内に需要無くても良いのか」
私が大ニュースだと、スクープだって思ったことを書けばいいんだ。それなら簡単じゃないか!感謝するぜ、マミー。
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