伝説のバンド、Multiplication Table
橙田千尋
伝説のバンド、Multiplication Table
ある程度音楽を聴いてきた人なら、好きなアーティスト、もしくはバンドが必ず一つくらいは存在するだろう。同じアーティストやバンドが好きな人どうしが会話をすれば、どの曲やアルバムが良いとか、どのライブが凄かったなど、様々な話の広がりを見せるだろう。しかし、結論としては、そのアーティスト、バンドが好きであるという一つの結論へと落ち着くはずだ。
時々、好きなアーティスト・バンドのここが凄いという部分を他の人に言いたくなる時がある。その熱意が相手に百パーセント届くことは少ない。同じ気持ちを共有することは、想像以上に難しい。それでも、好きなアーティスト・バンドの凄さを知ってほしくて、話したくなる。
今回、私はこの場を借りて、好きなバンドについて書いていきたいと思う。このバンドは既に解散してしまっている。そのため、私の周りではなかなかこのバンドを知っている人が少なく、また、話す機会もほとんどない。だから、ここでありったけの想いを書いてみたい。まだ何も知らない人が、このバンドに興味を持ってくれるように、できるだけ詳しく書いていければと考えている。
私の愛してやまないバンド、それは『Multiplication Table』である。日本ではマルチプと略されていることも多い。そこで、ここではマルチプという呼称を使用していくことにする。ちなみに、バンド名を日本語に訳すと、『かけ算九九』である。
一九八八年にイギリスのブリストルで結成されて以降、二〇〇五年の解散までに、九枚のアルバムをリリースした。
私がこのバンドを知ったのは、二〇一〇年頃だったため、リアルタイムで追うことはできなかった。しかし、YouTubeで初めて視聴した瞬間、月並みな表現ではあるが、度肝を抜かれた。一発でこのバンドの虜になってしまい、すぐさまTSUTAYAに駆け込んだが、レンタルされているアルバムは一、二枚だった。あきらめきれず、Amazonや中古CDショップでアルバムを購入した。それほどに、当時はこのバンドの音楽に突き動かされていた。
衝撃を受けたのは私だけではない。イギリスでは、当時の若者にかなりの影響を与え、解散後にマルチプの影響を受けたバンドも多数登場したらしい。
各方面に衝撃を与えたこのバンドの音楽性を説明しておくと、初めはギターを中心とした、静と動の緩急をつけた曲が多かったが、アルバムを重ねるごとに、ロックだけでなく、ヒップホップ、エレクトロニカなどを吸収し、自らの血肉としていった。同じブリストル出身のヒップホップを核としたアーティストとして、Massive Attack(マッシヴ・アタック)やPortishead(ポーティスヘッド)が一九九〇年代に名アルバムを生み出しており、影響を受けている可能性は高いと思われる。
次に、このバンドがどういったメンバーで構成されていたのかを紹介していきたい。
【バンドメンバー】
ジョン・スウィングラー(ボーカル、ギター、ピアノ、シンセサイザー)
バンドのボーカルで、全ての曲の作詞・作曲を手掛けた。ハイトーンを多用したボーカルは、しばしば「弱々しい」と批判を受けながらも、このバンドの核となるものであった。ストレートなバンドサウンドからヒップホップやエレクトロニカまで、バラエティに富んだ曲を生み出し、独自の美意識とシニカルな視点から作られた歌詞は、しばしばファンや評論家の間で「難解」「哲学的」とも評された。
唯一無二の世界観は多くのファンを生み出したが、二〇〇五年一〇月二一日にドラッグの過剰摂取で死亡した。
ケヴィン・サンダーソン(ギターなど)
バンドでは主にギターを担当していた。後期はギターだけでなく、様々な楽器を担当した。緩急自在なギターサウンドは、しばしば「芽吹いたギター」と評された。ライブ中はしばしばシャツを脱ぎ、ズボンの上から履くパフォーマンスを行った。バンドの解散後はソロミュージシャンとして活動し、現在までにアルバムを三枚リリースしている。
ジョール・ホーリー(ベース)
ジョンとケヴィンの陰に隠れがちではあるが、ミスタッチの無い演奏と、ここぞという場面で繰り出される印象的なベースラインは、このバンドに欠かせないものであった。ライブ中ほとんど動かないことで有名で、リズムを取ることもほとんどない。そのため海外の掲示板にて、ライブでの走行距離をネタにされたことがある。
カズタカ・セキ(ドラム)
バンド唯一の日本人。「こいつがいなくなったら俺はこのバンドを解散させる」とジョンに言わしめたほどの技術をもったドラマー。派手なスタイルではないが、リズムキープに優れ、ミュージシャン内の評価も高かった。バンド解散後はドラムを引退し、現在は画家として活動を行っている。
作曲はボーカルのジョンがアイデアやデモを持ってきて、それを基にして全員で完成させていく形をとっているが、作詞は全てジョンが担当している。
メンバー紹介が終わったところで、いよいよリリースされた九枚のアルバムについて紹介していこうと思う。主観で紹介を行うため、好きなアルバムとハマりきれなかったアルバムでは文章の熱量に差が出てしまうかもしれないが、ご了承願いたい。
『1 Times Table』 一九九〇年一〇月二二日リリース
【収録曲】
①1 × 1 = 1
②1 × 2 = 2
③1 × 3 = 3
④1 × 4 = 4
⑤1 × 5 = 5
⑥1 × 6 = 6
⑦1 × 7 = 7
⑧1 × 8 = 8
⑨1 × 9 = 9
マルチプの記念すべきファーストアルバムである。先行シングル『1 × 2 = 2』は一部で人気を博した。しかし、アルバム全体の評価は低く、セールス的にも全く振るわなかった。バンド内でもこのアルバムについて否定的な発言が多い。
バラード調の『1 × 2 = 2』以外は、ギターを基調とした曲が多いが、初期の特徴である歪んだギターはまだ前面に押し出されていない。また、ジョンの哲学的な歌詞もまだ影を潜めている。
このアルバムは粗削りな所が多いと思うが、静かな始まりから一転、最後に轟音でギターを掻き鳴らす『1 × 8 = 8』は、次作で中心となるシューゲイザーに影響を受けた、静と動のはっきりとした曲調に仕上がっている。
『2 Times Table』一九九一年十二月十六日リリース
【収録曲】
①2 × 1 = 2
②2 × 2 = 4
③2 × 3 = 6
④2 × 4 = 8
⑤2 × 5 = 10
⑥2 × 6 = 12
⑦2 × 7 = 14
⑧2 × 8 = 16
⑨2 × 9 = 18
セカンドアルバムでは、静かな曲を織り交ぜることで、轟音で響く歪んだギターを際立たせたアルバムの構成と、ジョンの沈鬱で哲学的な歌詞という、初期マルチプのスタイルを早くも確立させ、各音楽誌で賞賛を得る。リリース当初こそセールスに苦しんだが、後に「過酷という言葉が、いかに生ぬるい言葉かを思い知らされたよ」とジョンが語るほどの、壮絶なスケジュールとなったツアーの効果もあってか、驚異的なロングセールスを記録した。
このアルバムは、やはり『2 × 4 = 8』が会心の出来だと思う。物悲し気なイントロで始まり、轟音、静寂、轟音、静寂、そして轟音と変わっていくこの曲は、いつ聴いても構成のすばらしさにうっとりしてしまう。『2 × 9 = 18』のアウトロで流れるギターのアルペジオも、惚れ惚れするほど美しく、ベースのジョールも、アルバムリリース後のインタビューで、「最初このアルペジオを聞いた時、口がだらしなく開いてしまったよ。それほど素晴らしかった」と話している。
『3 Times Table』一九九三年九月二十七日リリース
【収録曲】
①3 × 1 = 3
②3 × 2 = 6
③3 × 3 = 9
④3 × 4 = 12
⑤3 × 5 = 15
⑥3 × 6 = 18
⑦3 × 7 = 21
⑧3 × 8 = 24
⑨3 × 9 = 27
サードアルバムでは、ギターのダイナミズムを押し出したセカンドアルバムから一転し、陰鬱な雰囲気を帯びた静かな曲が大半を占めた。インタビューにてジョンが「セカンドアルバムが時間の経過によって、必要以上に崇拝される前に自分たちで殺したんだ」と語るように、前作と対照的な作品に、前作を好んだファンは離れたが、一方で新たなファンを獲得することに成功した。ファンの間では、このアルバムを一番好むという人も多い。
粘りつくようなベースラインと、休符を生かしたギターが特徴の『3 × 1 = 3』と、静かに降り積もるようなギターが曲全体を覆う『3 × 2 = 6』が流れた瞬間、前作を期待したファンは肩透かしを食らっただろう。しかし、静かな音の中でもしっかりと緩急が効いていて、途中で飽きることもない。また、ドラムのパターンはそのままに、メロディとベースラインを変えていく、『3 × 7 = 21』、『3 × 8 = 24』は最大の聴き所だろう。
『4 Times Table』一九九四年三月一四日リリース
【収録曲】
①4 × 1 = 4
②4 × 2 = 8
③4 × 3 = 12
④4 × 4 = 16
⑤4 × 5 = 20
⑥4 × 6 = 24
⑦4 × 7 = 28
⑧4 × 8 = 32
⑨4 × 9 = 36
前作からわずか六カ月ほどで発売されたこのアルバムは、前作の陰鬱なサウンドをさらに押し進める形となった。しかし、音楽誌では「前作の焼き直し」と批判的な意見が多かった。批判に対してまいってしまったのか、バンドは次のアルバムで再び大幅な方向転換をすることになる。
このアルバムは体調の良い時にしか聴きたくない。闇へと引きずり込まれるような気がするからだ。ギターやベースが輪郭を失い、ドロドロに溶けていくような音になっているのも要因の一つだと思う。ドローン (単音で変化の無い長い音)が所々挿入されるのも、陰鬱な雰囲気に拍車をかけている。
歌詞に目を向けると、暗黒のサウンドとかなりの親和性があったと思う。愛とカニバリズムについて歌った『4 × 4 = 16』、日常生活で行われる行為を淡々と挙げつらねた歌詞にドローンが重なることで、生活のやるせなさが滲み出してくる『4 × 6 = 24』など、歌詞だけが独り歩きしない曲を作ることに成功している。
『5 Times Table』一九九五年十月十六日リリース
【収録曲】
①5 × 1 = 5
②5 × 2 = 10
③5 × 3 = 15
④5 × 4 = 20
⑤5 × 5 = 25
⑥5 × 6 = 30
⑦5 × 7 = 35
⑧5 × 8 = 40
⑨5 × 9 = 45
前作での批判を受け、ジョンはインタビューで「評論家の意見にはまいったよ。あのアルバムを作った後、自分の作り出した曲や歌詞に自分自身が飲まれていくような気分になったんだ。しばらくああいった曲や歌詞は作りたくないと思って、作ったのが今回のアルバムだよ」と語った。
そして、このアルバムでは、やや皮肉めいた歌詞に四つ打ちを基調としたポップでダンサブルを押し出したアルバムとなった。時期的にもブリットポップ(一九九〇年代にロンドンやマンチェスターを中心に発生したイギリスの音楽ムーブメント)が盛り上がっていたため、影響を受けている可能性は高い。セールス的にも成功し、マルチプを今まで知らなかった人々にバンドの存在を知らしめた。しかし、前作までの路線を求めていたファンからは「俺らが好きだったバンドはもういない」「大衆に迎合した」と否定的な意見が多く飛び出し、現在に至るまで賛否両論のアルバムとなっている。
このアルバムでは、最初から最後までポップなサウンドで占められている。歌詞も沈鬱で哲学的なモチーフを用いていた前作に比べ、皮肉めいた言い回しはあるものの、明るいテーマが多い。晴れた休日の食事について歌った『5 × 3 = 15』など、前作までだったら絶対に歌われなかっただろう。全アルバムの中でも、異色のアルバムとも言える。
『6 Times Table』一九九六年十一月二十五日リリース
【収録曲】
①6 × 1 = 6
②6 × 2 = 12
③6 × 3 = 18
④6 × 4 = 24
⑤6 × 5 = 30
⑥6 × 6 = 36
⑦6 × 7 = 42
⑧6 × 8 = 48
⑨6 × 9 = 54
このアルバムは基本的に前作のスタイルを踏襲しているが、前作のような明るさは控えめになり、前作ではほぼ全曲で用いていた四つ打ちも使用していない。歌詞もより皮肉が直接的になり、テーマも明るく成り切れない自身を題材にしたようなものが多くなった。
各音楽誌やメディアからは、「中途半端」「マルチプはもはや風前の灯火」と辛辣な意見が多く寄せられた。セールス的にも失敗し、ファンからの評価も低かった(時々ネットの記事や書き込みなどで、マルチプのアルバムランキングがつくられることがあるが、このアルバムが上位に入っているものは、今のところ見たことが無い)。また、この時期からジョンはドラッグにのめりこんでいった。
私も他のアルバムに比べてこのアルバムを聴いた回数は少ない。しかし、改めて聴いてみると、この頃のマルチプの苦悩を上手く音楽に昇華した作品もあり、もう少し評価されてもいいのではないかとも思う。『6 × 7 = 42』は明るいサウンドだが、ギターが盛り上がりを見せるアウトロの最中、いきなり曲が終了するため、放り出されるような不安感を覚える曲となっている。
『7 Times Table』二○○○年五月八日リリース
【収録曲】
①7 × 1 = 7
②7 × 2 = 14
③7 × 3 = 21
④7 × 4 = 28
⑤7 × 5 = 35
⑥7 × 6 = 42
⑦7 × 7 = 49
⑧7 × 8 = 56
⑨7 × 9 = 63
前作から三年以上の沈黙を経てリリースされた七枚目のアルバムは、今までとは全く違う、エレクトロニカ(ざっくり言うと、電子音楽を用いた音楽を指す。音楽性が幅広いジャンルのため、定義が難しい)とアブストラクト・ヒップホップ(ざっくり言うと、ヒップホップを核とした、ダウナーなサウンドが特徴の音楽ジャンル)を主としたサウンドとなっている。
発売当時のインタビューでジョンは、「六枚目を発売した直後からこういったサウンドは頭の中にあった。でもレーベルから『狂ったのか』と言われてね。とにかく売れてくれることを祈っていたよ。もし売れなかったら、売れ残ったアルバムと一緒に火の中に飛び込もうかと思っていたほどだった。結果として売れてくれてよかった。レーベルが思うほど大衆の耳は馬鹿じゃないんだってことを証明できて嬉しかったよ」と語っている。結果として音楽誌から絶賛の声が相次ぎ、セールス的にも今までのアルバムの中で一番であった。
私の一番好きなアルバムである。このアルバムからピアノやシンセサイザーを積極的に用いるようになった。また、ドラムもループ感が強くなっている。それに対して、ジョンの歌詞は以前のようなシニカルなものへと戻った。例えば『7 × 1 = 7』では、ジョージ・オーウェルのディストピア小説である『一九八四年』から『二重思考』という言葉を用いて、自分への愛憎を歌っている。
このアルバムで一番好きな曲として、私は『7 × 3 = 21』を挙げたい。ループするベースラインと、人力のブレイクビーツ(ドラムなどをサンプリングして素材を組み直し、ループさせてリズムを構築させる手法)が少しずつ盛り上がっていく曲である。
『8 Times Table』二○○一年八月六日リリース
【収録曲】
①8 × 1 = 8
②8 × 2 = 16
③8 × 3 = 24
④8 × 4 = 32
⑤8 × 5 = 40
⑥8 × 6 = 48
⑦8 × 7 = 56
⑧8 × 8 = 64
⑨8 × 9 = 72
八枚目のアルバムでは、前作のエレクトロニカ路線をさらに深化させた形となり、ジョンが歌う場面が少なくなり、バンドとしては初めてインスト曲を収録したアルバムとなった。また、ギターを全く用いない曲も初めて制作された。インダストリアル・ヒップホップからの影響は薄くなり、代わりにアンビエント(大雑把に言うと、聴くことを強制せず、その場に漂うような音楽)からの影響が、特にインスト曲に見受けられた。歌詞に関しても、今までのアルバムに比べてかなり短くなっていて、音を聴かせるアルバムに仕上がっている。
各音楽誌の評価は、「今後数十年は語り継がれるべきアルバム」「新しいジャンルの開拓をやり遂げてしまった」「単なる実験的なバンドに成り下がった」「自らの積み上げてきたキャリアに対して自傷行為を行っている」と賛否両論だった。
当時こそ賛否両論だったが、かなり革新的なアルバムであったと思う。ただ、少し時代を先取りしすぎたのかもしれない。『8 × 4 = 32』、『8 × 6 = 48』、『8 × 8 = 64』とインスト曲が三つほど収録されている点は、バンドとしては画期的だが、マルチプの特徴である、ジョンのボーカルと歌詞を無くしてまで必要だったかと言われると疑問符が付くような気がする。
『9 Times Table』二〇〇五年十二月十二日リリース
【収録曲】
①9 × 1 = 9
②9 × 2 = 18
③9 × 3 = 27
④9 × 4 = 36
⑤9 × 5 = 45
⑥9 × 6 = 54
⑦9 × 7 = 63
⑧9 × 8 = 72
⑨9 × 9 = 81
マルチプが最後にリリースしたこのアルバムは、前作から四年以上の月日を経て発売された。この頃にはジョンの麻薬中毒は大分深刻なものとなっていた。それでもジョンは、「今までの集大成的なアルバムを作る」と意気込み、何日もスタジオにこもった。
そして発売されたこのアルバムは、今までのアルバムで挑んできた様々な方向性のサウンドを詰め込んだものとなった。各音楽誌から「今までで一番のアルバム」「自ら取り組んできたサウンドの総決算的内容で、今までのどのアルバムよりも優れている」と絶賛を受け。販売枚数も『7 Times Table』を僅かに上回り、商業的にも成功をおさめた。ジョンは、自らの言葉を実行し、そして成功させた。しかし、アルバムが発売された1週間後の十二月十九日に、ジョンはドラッグの過剰摂取で死亡し、バンドは同年十二月三十一日をもって解散となった。
先述の通り、今までマルチプが挑んできたサウンドをすべて詰め込んだアルバムである。ジョンがバンド結成後駆け抜けてきた道筋をたどっているようだ。
ノイジーなギターが耳を突き抜ける、初期を思い出させるような『9 × 1 = 9』から始まり、ドロドロとした音楽を五分以上演奏した後、最後にギターを爆発させたような音を聴くものに浴びせる『9 × 3 = 27』、雨の音をサンプリングした、打ち込み主体の『9 × 7 = 63』と名曲が続く。そして、最後の『9 × 9 = 81』はとにかく最高の一言である。今までの音楽性を全て詰め込み、長い曲ではあるが飽きさせない。「全ては俺を終わらせるために存在する。流れる川のように、ゆるやかに終わっていく」という歌詞は、崩壊気味のギターの音と合わさって、いつ聴いても感動させられる。
ここまで九枚のアルバムを紹介した。マルチプに興味を抱いてくれた人は、まず『9 Times Table』から聴いてみて、気に入った曲と似たテイストのアルバムを、今まで書いてきたアルバム紹介を参考にして、聴いてみていただければと思う。
解散して十三年ほど経った今でも、音楽は色褪せることなく、私の心に残っている。リアルタイムにバンドを追うことができなくても、曲が残っていれば、発売直後に聴いていた人とほぼ変わらない衝撃を味わうことができる。人は死んでも音楽は生き続け、誰かの心を揺さぶっていく。誰かが曲を掘り出し続けてくれる限り、音楽は生き続けるのだ。
この文章が、マルチプの新たなファンを生み出すことを願いながら、文章を締めたいと思う。
伝説のバンド、Multiplication Table 橙田千尋 @komekokakari
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