あの日の指きり

勝利だギューちゃん

第1話

「ねえ、ゆうくん、わたしのことすき?」

「もちろんだよ。かこちゃん」

「じゃあ、おおきくなったら、およめさんにしてくれる?」

「もちろんだよ!」

「やくそくね。ゆびきりしよ!」

♪ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのまーす


当時通っていた幼稚園の、桜の木の下で指切りをした。

何も考えていなかった。

ただ、純粋に好きだったと思う。


幼稚園くらいの子だと、結婚というものを、よく理解できない。

そのくらいの年頃だと、両親も若く仲がいい。

なので、子供はそれを見て、「パパとママみたいになりたい」と、

結婚に憧れるのだろう。


しかし、両親の仲もだんだんと冷めてくる。

だいたい1人の人を一途に愛せるなんて、もって3年。

後は、愛着とか人情とかで持っている。


・・・と、俺は親に聞かされた。


幼稚園の頃の記憶なんて、時が経てば薄れてしまう。

アルバムでもない限り、細かく書いていないと、覚えてられないだろう。


俺も例外ではなかった。


幼稚園を卒園してすぐに、俺達一家は引っ越しをした。

別れの挨拶に大勢来てくれたらしいが、騒がしいという印象しかなかった。


寂しくはなかった。

また会えると信じていた。


でも、記憶は薄れていった・・・

あの子の事も・・・


高校を卒業後、俺は引っ越すことになった。

大学が実家からだと遠いので、アパートで独り暮らしをする。

その場所が、俺が通っていた幼稚園の近くになる。


なので、懐かしくなり、幼稚園の卒園アルバムをひっぱりだしてきた。

もう、すっかり褪せてしまっている。


そして、殆どの子が記憶にない。

ただ、みんなが元気かどうかは、気になった。


アルバムの中に、一枚の画用紙を見つけれた。

もう、完全に黄ばんでいるが、何がかいてあるのかはわかった。


そこには、子供らしい無垢な絵が、描かれていた。

男の子と女の子。

そして、いかにも子供の字で、こう書かれていた。


「ゆうくんへ、18さいのわたしのたんじょうびにようちえんであいましょう。かこ」


かこちゃんか・・・懐かしいな・・・

おぼろげだがかすかに記憶にあった。


当たり前だが同級生なので、彼女も順調なら高校を卒業している。

かこちゃんの誕生日は・・・3月30日か・・・


引っ越し完了の、翌日だな・・・

試しに行ってみよう。


いないと思うけど・・・


そして、当日の3月30日、俺は懐かしい幼稚園に訪れた。

写真とは違っていた。

かなり、近代化されていた。


幼稚園の前にくると、校門が開いていた。

俺は、中に入った。


まあ、関係者だろう・・・


そして、1本の桜の木の下にきた。

「ここだったな・・・」

(覚えているか?俺の事)


「ゆうくん・・・もしかして、ゆうくん」

振り返ると、女の子がそこにいた。

「あっ、やっぱりそうだ、ゆうくんだ」

とても喜んでいる・・・


「もしかして・・・かこちゃん・・・」

「そう、かこだよ。約束覚えていてくれたんだね。ありがとう」

抱きついてくる。


「いや、アルバムにはさんであった画用紙みて、思い出したんだけどね」

「それでも、うれしいよ。ありがとう」

かこちゃんは、すっかり大人の女性になっていた。


「ねえ、ゆうくん、あの約束は有効?」

「かこちゃんをお嫁にもらうという?」

「うんそれ、有効?」

かこちゃんはどうかわからい。

だが、俺の中では・・・


「俺のはまだ、切れてないよ」

「私もまだ、切れていない。じゃあ、もらってくれる?」

「でも、あれは子供の頃だし・・・」

そう、子供は深く考えない。

でも・・・今なら・・・


「なら、改めてしようよ、指切り」

「指切り?結婚の?」

「うん」

そう言うと、かこちゃんは小指を差し出してきた。

俺は小指を差し出す。


運命の人は、生まれた時から小指と小指が、赤い糸で結ばれている。

本当かもしれないな・・・


「指切りげんまん、ウソ付いたら、はりせんぼん、のーます」

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あの日の指きり 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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