3人のピーター君
花るんるん
第1話ピーター君1号
ハジの多い人生を送ってきました。
電車の長いイスのハジ、レストランのハジ、教室のハジ……。
そう、僕は勝者だ。
オセロだって、ハジを取った者が勝ちだし。
「電車の長いイスのハジ」を考えれば、分かるだろ? どれだけ人気か? 先ずはそこから埋まる。
センターなんて冗談じゃない。
一番の敗者だ。
「そういうセリフはセンターを一度でも取ってから言って」と君は言う。
君自身は一度もセンターを取ったことがないくせに、言う。
言うだけなら、タダだ。だから君は、自分では一度もセンターを取ったことがないくせに、そんなことを言う。ハジの心地よさ、ハジの大切さを知っているくせに。
「全てはハジからハジまり、ハジに帰る」というのに。
「いや、十分センターでしょ、あなたは」と君は翻して言う。これだから。「オセロで、わたしからハジを取れないんだから。いつも、センターをうろうろするばかり。交差点の真ん中をうろうろ」
少し、交通整理が必要なようだ。
「俺はハジ王になる!」と言って、幾歳月。今では、会社でもハジっコの席があてがわれて、夢爆進中だ。それなのに君は、僕がオセロに弱くセンターをうろうろしている程度のことで、僕を責めるのか。あまりに狭量じゃないか。
わたしは責めてなんかいない。せめて、信じて。
ハジではないあなたも、好きだから。
恋愛なんて人生の王道を僕は歩まない。
歩めない。
歩めないと思ってきた。
なのに、君ときたら。
どうしてなんだ?
「どうしても、こうしても、なくない?」
……それは、そう、だけど。
このはしを渡るべからず。ああ、一休さん、あなたは偉かった。漢字で「橋」と書かれていたら、オシマイだったけど。あなたは運がよかった。
トンチなんかきかせないで、端(ハジ)なんか踏みつけて壊しちまえばよかったのに。
真ん中を歩む一休さんは関心ないかな、そんなこと。
ああ、一休さん、あなたとオセロ打ちたかったよ。僕がハジを取ろうとしたら、言うんだろうな。「このハジ渡るべからず」って。で、君は言うんだろうな。「大丈夫、この人全然ハジ取れないから」って。「わたしも取れないし」って。責めるなよ。望んでなんかいないのに、責めるなよ。責めるなよ。責めるなよ。
「誰もあなたを責めてはいない。責めたりしない。だから」と君は言う。「しょせん、人生は旅。旅先のハジのかき捨て。一緒にハジかこう?」
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