短編(サイト時代)

木兎 みるく

下に行くほど新しいです。

森の神様

森の神様1

――私達にとって彼女達が神なら、彼女達にとって私達はなんなんだろう?――


「 」

 彼女は私を見て何かを言った。人の言葉とは違う、神様の言葉。

 それを聞いて、彼女はこの森の神の一人だとわかった。

「    」

 私はたった一つだけわかる神の言葉で挨拶した。“神よ、どうかお守りください。”と。

 それに対して、彼女は何も言わずにどこかに消えた。


 私達の村には、森の神々を崇める信仰がある。

 人々は毎日森の神々に祈りを捧げる。時々、森で神に出会う者もいる。

 森の神に出会った者は、その体験を自慢げに話す。

「神は言葉にできないほど神々しく、こちらをじっと見て下さった。」と。

 けれど私は違う感想を持った。神って言う割に、普通の女の子のようだった。と。


 次の日。私は森の中でまた神に出会った。今度の神は、男の子だった。

「神よ。今日も森をお守り下さい。」

 そう言ったのは、私ではない。神の一人であるはずの、男の子のほうだ。

 私は最初、神が私達の祈りの言葉を繰り返しているのかと思った。

 しかし、それは違った。男の子は私に、深々と礼をしたのだ。

 驚きで、声が出なかった。意味が全くわからなかった。


 村に帰ってそれを長老に話すと、長老は絶対に他言してはならないと念を押した 後、こんな話をしてくれた。

 昔々。この辺りは治安が悪く、人々の不安はつきなかった。

 人々には、何か心の支えが必要だった。それは、森に住む民族も同じで…

 そこで当時のこの村の村長と森に住む民族の村長が話し合い、決めた。

 お互いの交流を断ち、お互いを神として崇める習慣にすることを。

 その後、この辺りは平和になった。もちろん、神を作ったコトだけが原因ではないだろう。

 だが、その風習は今でも残っている。

 その話を聞いた後も、私は毎日のお祈りを続けている。

 なぜって、もう習慣になってしまっていたから。

          

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