忘れものサンタ
和田蘆薈
忘れものサンタ
12月26日。
クリスマスを終えた街は幸福に包まれ、同時に新年への希望に満ち溢れていた。
サンタクロースはロヴァニエミでトナカイや小人たちと暖炉の暖かい光に包まれながら疲れを癒しているだろう。
— そんな中でクリスマスのあとも働くサンタがいる —
「忘れものサンタ」
人々はそう呼ぶ。 忘れものと言っても何か「物」を忘れたわけではない。
人々の叶わなかった願い。 それが彼にとっての忘れものだ。
クリスマスが終わると彼は街に出て鈴を鳴らしながら
「忘れもの~、忘れものはありませんか~?
クリスマスに叶わなかった願いや思い、そんな忘れものはございませんか~?」
そう呼びかける。
すると路地裏から子猫が飛び出してきてサンタを呼び止める。
「忘れものサンタさん、ぼくの願いもかなえてくれる?」
忘れものサンタはにっこりとほほ笑んで
「もちろん。君の願いごとも叶えてあげるよ。じゃあ願いを教えておくれ。」
「ぼく、家族に会いたいの。」
「家族かい?どうして会いたいんだい?」
サンタはしゃがみこみ、子猫を見つめそう訪ねる。
すると子猫は
「お父さんとお母さんはぼくが生まれてすぐにどこかに行ってしまったんだ。ぼくなりに探して見たんだけど見つからなくて...
もう、独りぼっちは嫌だ!...だから、願いを叶えて欲しいの」
忘れものサンタはふぅむと真剣な表情になり、その後笑顔で
「任せておくれ、子猫くん。君の願いはきっと叶えて見せるよ!」
子猫と忘れものサンタは探しました。路地裏の野良猫たちや人間の家族と暮らす猫たちに聞いてまわりました。しかし、子猫の家族の手がかりはなかなか見つかりません。
気づけば時計の針は4時を回っていました。
子猫は諦めたように泣き、
「やっぱり見つからないのかな...会いたいな、会いたいな...」
サンタは子猫を抱きしめ、
「まだ諦めてはいけないよ。クリスマスの魔法は想いを諦めず、信じるものにかかるのだから。」
そう励まして、再び探しました。
しばらくすると親子3匹の野良猫の家族がいました。
子猫の家族のことを尋ねると
「うーん...ちょっと心当たりがないね。
野良猫だからどこにいっているかは見当がつかないよ。」
お父さん猫はそう答えました。二人はお礼を言ってまた探しに行こうとしました。
すると
「ちょっと待って!あなた、私たちと一緒に暮らしましょう。」
お母さん猫は言いました。子猫は驚いた表情をしていました。そしてためらう様子を見せました。
「私たちもあなたの両親と同じように野良猫なの。もしかしたらどこかで会えるかもしれないわ。それに私たちにとっても家族は多い方が楽しいもの。 一緒に暮らしながら探しましょう!」
子猫がサンタの方を見ると、
「ホッホッホー、きっとこれが君へのクリスマスプレゼントさ! お行きなさい。」
忘れものサンタはそう優しい笑顔で言いました。子猫は驚きと喜びが入り交じったような笑顔を浮かべていました。
「忘れものサンタさん、ありがとう!ぼくの願いを叶えてくれて!」
忘れものサンタは幸せな表情で子猫とその新たな家族から見守られて、サンタクロースのもとへ帰っていきました。
耳を澄ますと聞こえて来るでしょう。
ホッホッホー、Merry Christmas!
完
忘れものサンタ 和田蘆薈 @aloe-yu
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